第4話次なる生命
「さて落ち着いたところでお風呂入りに行こうか」
私がそう言った途端に店からでて行こうとする。
「逃さないよ!」
なんとか私は猫の俊敏な動きを先回りし、2匹同時に捕まえることができた。
腕の中で同時に暴れ逃して欲しそうではあったが私は一切気にせずお風呂場へ向かう。
「大丈夫大丈夫何も怖いことも痛いこともないから」
なだめる口調で言う。
とりあえずお店の奥の方に行ってお風呂場を探す。
「本当にお風呂あった!」
お風呂のドアを開け中に入る。
「怖いことは何もしないから大丈夫だから少し大人しくしててね」
言いながらシャワーヘッドを持って水を出すとそれに驚いたのか2匹の猫が一気に暴れる。
「大丈夫だよ何も怖いことないから」
そう言うと2匹の猫は私を威嚇するように静かな怒りの声を上げ毛を逆立て威嚇してくる。
黒猫が飛びついてきて指を勢いよく噛む。
そんなことは一切気にせず落ち着かせるように静かに頭をなでる。
「どうせだから私も一緒にお風呂に入るか」
「ちょっと私準備してくるからおとなしくここで待っててね」
言いつつ風呂から一旦出てすぐに出て行かないように扉を閉める。
服を全部脱いで横に置かれていたバスタオルを体に巻いてもう一度お風呂の中に入る。
「大人しくできてたみたいだねえらいえらい」
黒猫の頭を撫でると敵だと思われているのかさっきと同じように威嚇されてしまう。
「ありぁこれはだいぶ嫌われてるなぁ…」
もう一度シャワーを手に取り猫の方に向ける。
「ヒヒヒお前たちを水浸しにして綺麗にしてやる!」
怖がられるのは承知の上であえて悪役っぽい喋り方をしてみる。
喋り方は悪役っぽくしているが言ってることは至極まっとうなことなので何の問題もない。
今度は2匹ともやばいと思ったのか毛を逆立て同時に噛み付いてくる。
「元気だね♪︎」
やさしく言いながら猫の頭を撫でると、安心してくれたのか私の指を噛んでいる力が弱まっている。
よし今のうちにシャワーをかけてあげよう。
私の指から離れたところで再びシャワーを持ち猫を何とか壁まで追い込んで逃げられないようにする。
怯えてはいたものの最終的にシャワーを浴びてくれた。
「ある程度汚れは取れたみたいだけどやっぱりお風呂に入れてあげたいな」
風呂にお湯がたまるのを待つ。
「そろそろ大丈夫かな?」
どのぐらいお湯が溜まったのか確認する。
「よし大丈夫」
「一緒にお風呂に入るか♪︎」
言いながら2匹の猫を抱きかかえ一緒に入ろうとしたその時!
顔を引っかかれてしまう。
「痛い痛い痛い痛い!」
「大丈夫ですか鼎さん!」
思わず叫び声をあげてしまいその叫び声を聞きつけた島崎が風呂場に入ってくる。
私の方に目を向けた瞬間急いで目をそらす。
その反応を見て私は今バスタオル1枚の姿だったことを思い出す。
「すいません何も考えず入ってきてしまって!」
「いえ…気にしてないので大丈夫です」
それからなんとか猫を落ち着かせて一緒に風呂の中に入ることができた。
「びっくりした あんまり暴れないでよ」
冗談ぽい口調で言うと無理やりお風呂に入れようとするお前が悪いと言わんばかりに睨みつけてくる。
「はいはいそうですね、私が悪かったです」
2匹同時に小さなあくびを漏らす。
「君たちは仲がいいんだね」
「そういえば私勝手に2匹とも男の子だと思ってたけど実際はどっちなんだろう?」
確認するようなことはせず体を一通り拭いてあげてお風呂から出る。
お風呂の扉を開けて外に出た瞬間に牢獄から解放されたと言わんばかりに抱きかかえていた私の腕から飛び出す。
「ちょっと待って待って!」
「よし捕まえた」
島崎が抱きかかえるようにして捕まえる。
「島崎さんそのままその子を捕まえておいてください」
私はついこの前購入したばかりのドライヤーをコンセントをつないでボタンを押す。
ドライヤーの機械音にびっくりしたらしく横でそれを見ていた白猫の方は隣の部屋へと急いで逃げていく。
私が優しくなだめながらドライヤーをゆっくりと近づけていくと、まるでこれから拷問をされるんじゃないかと言わんばかりの蒼ざめた表情を浮かべる。
お風呂の中の時よりも少し過激に鋭い歯を見せて威嚇してくる。
私に容赦なく噛みつこうとしてくるがもう慣れたもので余裕の表情でその攻撃を避ける。
「はいはいはい怖がらなくて大丈夫だから綺麗になるからね」
ここまで来るともう飲食店じゃなくて動物病院のような感じだ。
なんとか2匹ともドライヤーで乾かし綺麗になった。
「はぁこれでようやくひと段落ついた」
私との熾烈な戦いで暴れお腹が空いたのかお腹を鳴らす。
さっき一度見るだけで顔を背けたご飯を目の前に置いてみると、さっきとは違い目にするなり飛びつくように2匹とも食べる。
しばらくしてお皿が2つともからになり下げようとしたその時、お店のドアを開け出て行った。
「ちょっと待って!」
「急にどうしたんでしょうか!」
「分かりませんけどとりあえず追いかけましょう!」
走って猫の後ろを追いかける。
しばらく走っていると今までに全く来たことがない場所へ出る。
「ここは一体どこなんですかね!」
島崎が言いながら辺りを見回す。
「そんなことよりあの2匹の猫は一体どこに!」
辺りをくまなく探してみると少し遠くの方にその姿を見つけた。
「あ!いた待ちなさい」
今度は見失わないようにしっかりと目で捉え追いかける。
ここまで追いかけられてくることは想定外だったらしく後ろに顔を向け私たちの姿を捉えると、驚きスピードを早める。
私も負けじと歩くスピードを早め追いかける。
あのねこ2匹とも一体どこに向かってるの?
傷を負わされた猫にリベンジしようっていう雰囲気でもなさそうだけど。
そんなことを考えながらひたすら追いかけていると、また別の場所へとたどりついた。
「ここは…」
私が足を止めたと同時に猫も同じように足を止める。
足を止めた場所に広がっていたのは公園だった。
「ここは公園何でこんなところに!?」
島崎が驚きと疑問が混じった言葉を口にする。
2匹の猫は公園の中に入り何かを探すように辺りを見回している。
「何か探してるみたいですけど何を探してるんですかね?」
言いながら行動を伺う。
しばらくすると探していたものを見つけたように周りを見渡すのをやめ、少し遠くの方にある木に向かってかけていく。
すると白猫と黒猫が同じ地面の下を掘る。
地面の砂の中から出てきたのは小さなペットが遊ぶ用のボール。
黒猫が小さなボールを口に加え、私の足にすり寄ってくる。
「このボールで遊んで欲しいの?」
尋ねると今度は白い猫も同じように足にすり寄ってくる。
「よしよしわかったわかった順番に私が遊んであげるから」
私と島崎で交代交代でボールを投げ一緒に遊んだ。
するとまた公園を出てどこかに向かってかけていく。
「ちょっと待って今度はどこに行くつもりなの!」
驚きの声を上げながらも私は後ろを急いで追いかける。
「はぁはぁ…」
「ここはどこ?」
「どうやらここは駅のホームみたいですね」
なんとなくあたりを見回してみると黄色い線のところに 駅員さんの格好をした大家さんがそこに立っていた。
「大家さん!」
「鼎さんなんでこんなところに?」
「島崎さんも!」
「私たちは猫を追いかけてここまで」
「ところでこんなところで何をしてるんですか?」
私は素朴な疑問を口にする。
「時々こうやって輪廻のはをくぐって転生する人たちが乗る電車に異常がないかみはる仕事をしてるんだ」
なんとなく電車の中の方に目を向けてみるとあの2匹の猫と目があった。
「あの2匹の猫も生まれ変わっていい人生を送るといいですね」
「ええ…そうですね」
私は小さくうなずき電車に手を振る。
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