第2話 しばしの別れ

一緒に赤信号を手を繋いで走ったり人目もはばからずキスをしたりと、とにかくはしゃいだ。


せめて一緒にいる時は楽しもうと心に決めた。


あっという間に二日が過ぎ、別れの時が来る。

「寂しいね。離れたくないなぁ」幹人は手を強く握った。

「…うん…浮気せんでね」

「するわけないよ!毎日連絡する!」亜紗は思わず泣きだしてしまったが、幹人は優しく抱きしめる。離れたくない。


まるで淡い初恋のようだ。


時間ギリギリまで寄り添い、搭乗ゲートに飛行機が到着し案内が始まる。

一分前まで入らずにスタッフから「電車じゃないんですよ!」と怒られた。


別れ際に走りながら幹人はキスをしてきた。


搭乗し、景色を眺めながら新潟の牛乳を飲む。

飛行機に慣れていないため、離陸時には恐怖で隣に座る中年の女性と手を繋いで小さく叫んだ。


離陸した後には何故か気まずくなりお互い顔をそむけた。



福岡に到着し、何だか心に穴が開いたような気分になる。

新潟よりも気温は高く、夏特有のコンクリートの照り返しと蜃気楼のように揺れる地面。軽く眩暈を覚えながらスマートフォンを確認すると幹人から「大好きだよー」とラインが来ていた。

「亜紗も大好きー」と返事をした。

心が温まる。


この恋の行方はどうなるんだろう。


福岡に帰ってからは幹人に逢うために、今まで以上に仕事に精を出した。

友達営業から色恋営業に切り替えた。

ナンバーワンになり、客のほとんどが亜紗と結婚すると思い込んでいる。

精神的にきつかったが、幹人のためと思えば頑張れた。


そんな中、捨て猫だった飼っている猫が拘束型心筋症という心臓の病気になり余命宣告がされ、心の余裕が無くなる。

猫を飼うのはその猫が初めてであり、そんな事になるとは思いもせずにペット保険に入ってなかった。二日に一回発作が起き入院し、大金はかかるし仕事に行っている間に発作が起きるかもしれない。

何も手につかない抜け殻のような状態が続いた。

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