最終話「希望的空想」

と、まあ俺は創作のための日常を生きることに決めたのだが——。


俺はある思い違いをしていたようだ。


そう、そんな生き方をすれば、何が現実で何が空想の世界かの境界線が曖昧になり、のちにはそのどちらかが区別できなくなるのではないか。


そんな危機感はあの時少しはあったハズだ。だが、その時の俺はあまり深く考えず、創作のための日常にシフトチェンジしてしまっていたのだ。


そう、現実リアルで体験したことを創作に反映させているうちに、俺の創作の方が現実リアルに侵食する、という逆転現象が起きていたのだ。


創作で嘘をつくと、リアルで突然あり得ないような出来事が起きるといった仕様だ。


そして、その頃には、すでに俺にリアル・空想の区別はなく、全てが“真”に生きている世界だった。


俺は創作(小説執筆)から足を洗うことにした。


創作=創造がいかに危険なことであるかを感じ取ったからである。


俺が最後にこの小説に書き残しておきたい希望的空想を一言書いて終わろう。


俺は“真人間”になりたい。


俺の希望的空想は大きな亀裂フォッサマグナの中に、谷底に、真っしぐらに落ちていった。


END

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フォッサマグナ ウッチー @UttiE

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