皆様のおかげで、第8部も100話まで来ることができましたわ!本当にありがとうございますですの。

「我がシャーロットの今日は同じく好調、シアトルをホームに迎えての3連戦となります。解説はシャーロットでもプレーされました、名センターとして名を馳せましたクックさんです!」



「どうも今シーズンからお世話になります。もっと呼んでもらって構いませんよ」



「ハッハッハッ!それは今日の解説の出来次第ですかね。私もシャーロットの放送局で15年アナウンサーをしておりますが、たった1回の解説でお目見えしなくなったスターがどれだけいるか………」



「おっとこれは手厳しい。まずはシャーロットの街を褒めるところから始めた方がよろしいみたいですね」



「クックさん。今日は注目の日本人コンビの1、2番という形に戻してきました」



「ヒラヤナギとアライですね。彼らとは、かつて世界大会で戦ったことがありましたから、感慨深いですね。ヒラヤナギの調子、働きがこれからのシャーロットの道筋を作っていくことにのは間違いないでしょう」



「1回表、シアトルの攻撃が始まります。ピッチャーは2勝目を狙うピーターソン。定刻通り、19時2分のプレーボールです」






前回は初回から集中打を浴びてしまったピーターソン。その反省を生かし、テンポのいいピッチングを心がけながら、ボールを低めに集めた。



セカンドゴロ、サードゴロ、ショートゴロ。



華麗なワンツースリー。最後の打球をランニングスローで捌いた平柳君の足取りも軽やか。後ろにいる俺など微塵も待つ様子もなく、すぐさまダックアウトに引き上げていった。



その平柳君が1回裏の先頭バッターである。



相手先発は、ドミニカ出身のパワータイプ。ファストボールの威力とスプリットのキレには定評があるが、安定感というのはどうしても欠いてしまうタイプ。



調子づく前に、なんとか先制点を奪って試合を優位に進めたい。



ミーティングでもそんな話をヘッドコーチがしていたが、うちのユータが1発回答である。




「クックさん、まずは1番のヒラヤナギが左バッターボックスに入りましたよ」



「ヒラヤナギですか。シャーロットのファンは彼の特長を、スマートな顔とバッティング、そして守備と思っているかもしれませんが、彼の1番の特長はプルヒッティングなんです。


現役の日本人選手の中でナンバーワンといっていい引っ張り方向のバッティングのクオリティが発揮されるようになると、メジャーでも20本のホームランを打てる可能性がありますよ」



「なるほど。まだヒラヤナギはメジャーのピッチャーにアジャストしきれていないでしょうから、期待したいですね」






ビシュッ!!



グルンッ!!



ビシャッ!!




初球の96マイル。インコース寄りの速いボールを刀で真っ二つにしたかのような鋭いスイングで捉えた。



打った瞬間、投げ出されたバットが美しく宙を舞う。



白球が薄暮の中をグイーンと伸びていく。




「ライナー、ライトフィールド!ディープエリア!!……そのままいきましたっ!!電光石火のヒラヤナギ!!初球をライトスタンドに運んでいきましたっ!!」



「すごい!なんて鮮やかなスイングなんでしょうか!!彼にはやっぱりこれがあるんです!」



「クックさんの言った通りの素晴らしいプルヒッティングですね!今年のシャーロット放送局のメジャー解説は安泰かもしれません!」



ドライナーがこのスタジアムで唯一低くなっているフェンスを超えて、ボールがブルペンエリアへと飛び込んでいった。



まだリリーバー達がいないその場所で、トンボを持って整備していたグラウンドキーパーチームの主任、スコットさんがボールを拾って嬉しそうにピョンピョン飛び跳ねている様子がバックスクリーンにも写し出されていた。



そして打った本人は、あまりスピードを緩めることなく、シャーロットファンの大歓声を浴びながらも、あっという間にダイヤモンドを1周。





脇をワキワキとさせて喜ぶ俺と目線を合わせながら、軽くジャンプした後に、膝下の高さでロータッチ。



後ろに控えていたバーンズとも、低い位置でバチンと開いた手を合わせたのだった。



飛び込むようにしてベンチに戻った平柳君。やっと打ってくれたかと、チームメイト達は取り囲むようにして祝福する。



そんな最中で……。



カンッ!!



「アライも初球だ!右方向!1塁線をゴロで上手く抜きました!!ヒットになります!!」



「狙った魚だけを釣り上げるような名人技ですね!ピッチャーに落ち着く暇を与えません!狙い澄ましたラインギリギリへのバッティング。真似出来ない技術です」



「低めの変化球でした。タイミングをずらされたように見えたのですが……」



「足を踏み込んでからタメを作れるバッターなんですよね。左肩と腰のところにぐっと壁が出来た状態をキープしてボールを待てますので、今のように速いボールのタイミングでいって、緩いボールを投げられても踏ん張りが効くんですよ。


ですから、タイミングが外されたように見えても、バットがしっかり後ろに残っていますから、ボールを叩けるんですよね」




「それが出来るからアライは、高い打率を残せるわけですね」



「その通りです。空振りする確率が減って、手元までボールを引き付けられますから、選球眼も向上します。リトルリーガー達には真似してもらいたいですね」









8部はここで終了となります。続きは第9部の新井さんからよろしくお願いします。

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実況!4割打者の新井さん8 ぎん @gin5401

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