そら、あの店よ。

特にビクトリーズなんてチームに居たら、今年どうなるか分からない切迫した選手が多かったですから。



移動日の室内練習場なんてパンパンのパンになってたりするんですよ。



打てなくなってから、やばい!練習しなきゃ!じゃなくて、事前にやっておかないと。



シーズンに入ったらあくまで自分のパフォーマンスをいかに発揮するかというところを考えていかないと。



上手くいってもいかなくても、毎日がいっぱいいっぱいになってしまいますからね。



そういう考えでやっていますので、シーズン中に入ってから、バットの構え方がどうとか、グリップの位置がどうとか、足の上げ方がどうとか。スイングがどうとかは考えません。



それをいちいち変えたり、しっくり来るものを求める旅に出たりしたら、帰って来られるか分かりませんですしね。



シーズンが始まる前に、これだ!と、決めたものは基本変えない。



爆乳図書委員ちゃんでいくと決めたら1年は変えない。



急にミステリアスなお嬢様が接近してきたり、ボーイッシュなやんちゃ系が急に女の子な表情をしてきたり、なんだか目隠れちゃんに興味が出てきたりだとか。



他の属性にいちいちドキドキしていたら、キリがありませんもの。




ただ1つだけ変えるとしたら、タイミングの取り方。



そのアプローチの部分だけですわね。





室内練習場にいた時間は1時間半くらいだったと思うんですけど、最後の15分。平柳君が大鏡の前で素振りを始めた時は、俺もゲーム機をスリープモードにして近くで見てましたね。



「そうそう。この前の左ピッチャーの時は特に、しっかりボールを見なきゃっていう気持ちが大き過ぎたからね。……もうボール1個分は前にポイントを置いておかないと、可能性がなくなるし、差し込まれたフライアウトが多いからその分………」



ベンチからコーチが見ているのと、8年前ならの付き合いでネクストから見ている人間とではまた違って来ますからね。



それなりに口出し出来ることはありますよ。



「イメージではセンター方向にコンパクトにやってるつもりなんですけどね。どうしてもジャストのタイミングからずらされる感覚で……」



「そうよね。特に先発ローテーションを張っているピッチャーなんかさ、微妙にタイミングずらすのが上手いからね。こっちが合わせようとすればするほど逆手に取られるなんてパターンがあるから。もう、平柳君は日本でやってた通りのバッティングをやっていけばいいと思うよ」



「新井さんはすごいっすよ。今も打率は4割近いし、どんなタイプのピッチャーが出てきても対応してるんですから」





「俺は出来ることがたった1つしかないからね。どんなピッチャーが出てきても基本やることは変わらないというそれだけのことさ」



「分かりました。明日はまたスタメンになるか微妙ですけど、もっと自分らしくやっていきますよ!」



「おお、その意気だぜ」



「じゃあ、とりあえずお尻いいっすか?」



「なんでだよ」




俺はもみじちゃんと競ってやっているゲームの進み具合もキリが良かったので、平柳君よりも早く練習場を出て、車を呼んだ。



そしてその足でみのりんが向かった美容室に突入する。



ちょうど終わったところのようで、日本を経ってから伸ばしていた髪の毛を短く切り、少しウェーブのかかったアクティブおしゃれな髪型に俺は胸キュンするのであった。



昼間でシャーロットで1番デカイ公園で、かずちゃんのベビーカーを押しながらお散歩。



緑豊か、風が心地よいそんな公園近くに出店していた日本でも有名なトンコツラーメンチェーンのお店で2人で7回替え玉をかます。



そして最近は行き慣れたスーパーでしこたま買い込んで、双子ちゃんの迎えに行き、家に帰ってゆっくりと過ごしたいいリフレッシュ。




翌日のグリーンオブシャーロットでの試合。




1番ショートには平柳君の名前が戻っていた。


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