クラッカーが割れんばかりの歓声でしたわね!

2ナッシングとされていたが、アウトコース低めのシンカーはストライクゾーン内。むしろ、必死に打ちにいって、ちょうど捉えられる際どさのボールになっていた。



手応え十分。



確信歩きをしたいくらい。



ファーストの選手がジャンプしたそのギリギリ上を越えた打球が、自慢の芝生に落ちる。



1塁審判おじさんがスマートにフェアグラウンドを指差す。



前の回に続いての先頭バッターの出塁とはれば、ぶっといソーセージが焼き上がったくらいの喜びである。



バーンズも続いていくのだから。



彼も右方向。まるで俺を狙ったかのようなピンポイント打撃。俺は走り出した足を緩めて、しっかり過ぎるのを待つ。ワンバウンドしたボールが1、2塁間を破った。



さらにクリスタンテも。



彼はもうアレですから。逆に1打席でやられたボールをやり返す所存ですから。



チェンジアップやカーブ、シンカーになんて目もくれず、1ボール2ストライクからのインコースのカットボールを狙っていった。



結果は詰まってバットは粉砕。



しかし、意地で飛ばした打球はレフトの前に落ちた。



そして2塁ランナーのわたくしは、チームで18番目くらいの俊足ですから。深めの外野にポテンヒット。迷わず本塁突入。



2点目のホームを駆け抜けた。




ヨッシャー!っとガッツポーズしながらホームイン。そしてそこにいたのはクラッカーマンである。



俺は身振り手振りでつたない英語を披露する。



「さっきはツーベースだったから、次は看板直撃のホームランを頼むぜ!」



という感じのことを言ったのだが、ブラッドリーは………。



「あ、ああ。……イエッ!」



と返してバッターボックスに向かっていった。



やってしまった。これから打席に向かう選手に、愛想笑いをさせてしまったと俺は後悔したのだが………。




カッシイィッ!!



どが2個くらいつくような真ん中のボールだった。



それを見逃さず、鋭く且つ力みのないスイングで文字通り、かっ飛ばしたようなバッティングになった。




「打ちました、左中間だー!!確信しました、ブラッドリー!!入りましたぁー!!リードを一気に広げる3ランホームランになりましたー!!」



左中間に高々と上がった打球に、向こうのセンター、レフトは1歩も動かず。スタジアムにいる全員が見送った打球は、1階席と2階席の間にある液晶バナーに直撃。




しかも、SHARGEN Crackerと書かれたなんだか見覚えのある真っ赤な看板。



バックスクリーンには、金色のコインが降り注いでザックザクの画面が出てきて、高らかなファンファーレと、Congratulation!Two million dollar!!という文字も現れた。



左中間の飛行機も、もちろんグイングインと動いている。




440フィート越えの見事な一撃にシャーロット側の人間は全員でバンザイ。



移籍後初勝利を狙う前村君に強力な援護点。




てか、本当に看板直撃のホームランになってしまった。








シャーロット7ー3アトランタ



ブラッドリーが3安打1本塁打5打点の活躍。前村も7回途中2失点の好投で移籍後初勝利。




勝利したシャーロットロレンス監督。



「言うことない試合展開だったんじゃないかな。マエムラはクレバーなピッチングで試合を作ってくれたし、ブラッドリーが得意なピッチャーをしっかり攻略してくれた。こういう試合を続けていきたいよね」



勝利投手の前村。



「調子は良かったですよ。ロンギーがいいリードをしてくれて、序盤3回は本当に思い通りです。しかし、5回に粘られてフォアボールを出してしまい、そこから連打されたのはもったいなかった。勝てた上で課題もあったので、次の登板までにはなんとかします」



ゲームオンヒーローに選ばれたブラッドリー



「今日は最高の夜だったよ。1打席目の感触が良かったから自信になったね。実はホームランを打つ前に、アライサンから看板を狙っていけと言われていたのさ。


まさにその通りのバッティングになって、2人で大笑いしたよ。しかも、俺がいつも食べている大好物のクラッカーの看板だから余計にね。CMとかの相談はいつでもオッケーだって伝えておいてくれるかな?」



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