あら?こんなはずでは。
出鼻を挫くと表現するには、シャーロットにとってはあまりにも鮮やか。
バーンズの2ランまでで終わることなく、4番バッターのフォアボールを起点にさらに得点を重ねて打者1巡の猛攻で6得点。相手エースを1ラウンドでKOした。
代わったピッチャーは、独特な投球フォームでカットボールを繰り出す技巧派。尚も得点チャンスだったが、平柳君、俺共に打たされたセカンドゴロに倒れて長い攻撃が終了。
うちの先発であるウェブがようやくマウンドに上がっていった。
初回に予想外過ぎる大量援護ですから、ただてさえ緊張感のある開幕戦のマウンド。
逆に難しさが出てきてもおかしくはないが、97マイルのフォーシームを軸に、シンカーとナックルカーブの上手な組み合わせ。
詰まらせて、引っ掛けさせて、打ち上げさせてと、テンポよく3つのアウトを奪い、上々な立ち上がりとなった。
その後しばらくお互いに得点が入らない展開だったが、シャーロットがショートスタメンてあるザムのミスから、ちょっともったいない失点。
そしてミルウォーキーの9番バッターにレフトポール際へソロホームランを浴び、ちょっと嫌な流れにはなった。
しかし5回表。シャーロットの攻撃。バッターは9番ザム。
カンッ!!
ポーンッ!!
「高いバウンド!ショートの前!!捕って、1塁は際どいぞ!!………セーフ!セーフです!!ザムの……記録は内野安打です。ザムは今日2本目の内野安打になりました!」
カンッ!!
平柳君もいい当たり。低めのボールを上手くバットに乗せて、ジャンプするセカンドの頭上を超えるヒットで1、2塁でチャンス拡大。
カキッ!!
「ピッチャー返し!!捕れない!弾いた!!セカンドの前、チャージしますが……何処にも投げられません!!またヒット。あっという間に満塁です!アライも2安打目だ!」
外のカット系のボールに上手く反応出来た。ピッチャーの足元でバウンドした打球を向こうの3番手ピッチャーは押さえきれず。
2塁ベースに入ろうとしたセカンドの逆を突く格好になり楽々内野安打になった。
おまんるい。
バッターは1打席目で左中間に特大ホームランを放っているバーンズ。
バッテリーに逃げ場なし。後はバーンズがどのボールを打っていくかというところ。
初球、誘い球のスライダー。アウトコース低めのボールゾーンに逃げていく球にバットを止めて1ボールとしたところで、相当有利になった。
彼の目付けは低めにあったようで、90マイルのカットボールを迷いなく踏み込んでいって、右中間に力強く弾き返した。
右中間に落ちるかな?と、思った打球が魔法のようにグングン伸びていく。観客の注目も最高潮になる中、ライトの選手がこの打球にダイビング。
空中で真っ直ぐ伸びた体と腕。
これ以上ないタイミングでグラブがボールを掴まえ、その勢いのままに芝生の上を滑っていった。
「これはナイスプレー!バーンズの痛烈な当たりを見事なダイビングで押さえましたが……犠牲フライには十分です。ザムがゆっくりとホームイン。シャーロットがリードを広げました。ヒラヤナギも3塁へ向かっていきます」
惜しい。抜けていれば走者一掃。試合が決まった打球になったが、ここはライトが意地のダイビング。
1塁側のファウルゾーンをバーンズが頭を抱えながら走り去っていった。
「アライサン、ノースチール、ノースチール」
「オーケー、オーケー!」
背後から両肩を掴まれるようにして、1塁のコーチおじさんが俺に言い聞かせる。
ことすら必要のない打球。
4番クリスタンテ。ドミニカからやってきたハイパーなプルヒッター。
高めのボールをバキッと叩くと、ボールがレフトポール際へギューン!!そのままスタンドの奥深くへ消えていったのだった。
ミルウォーキーでの開幕戦。チームの主砲2人にツーマンセル弾が飛び出し、先発ウェブも6回2失点とゲームを作り大勝を収めた。
2戦目。
試合中盤。
カンッ!
「ショートだ。……ああっと、弾いてしまった!打球は左中間。3塁ランナーに続いて2塁ランナーもホームへ。アライのバックホームも及びません!ミルウォーキー、リードを広げます!ショートザムが今日2個目のエラーとなってしまいました!」
「昨日も入れたら3個目ですか。ミルウォーキーにとって、ショートはフリーゾーンですね。シャーロットは頭が痛いでしょう」
1アウト満塁。同点に追い付いた直後でしたので、しっかり抑えていきたいところだったが、ショートのザムがバウンドを合わせられずに後逸。
再びリードを奪われ、2アウトからライト線にタイムリーを浴びて、優秀なリリーバーを要するミルウォーキーに致命的な失点を重ねてしまった。
3戦目。
2戦で3エラーのザムがスタメンを外れ、ここはベテランのチーム最古参でもあるミスケリがショートのポジションに入った。
初回、痛烈なライナーをジャンピングキャッチで好捕するなどあったが、試合中盤に、2アウト満塁からの難しい体勢からの1塁送球をカメラマン席に大暴投。
打つ方でも、消極的な三振とダブルプレー2つといいとこなしというベテランらしからぬ結果になってしまった。
試合も2試合続けて中盤のミスで相手に主導権を握られ、しっかりと逃げ切られてしまい、結果開幕カードは負け越しという形になってしまった。
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