これこそ、わたくしがやって来たチームみたいですわ!
俺は痺れる手の痛みを抜くように、3塁ベンチに向かって小さくガッツポーズをしながらリードを取り、左中間に高々と上がった会心の打球を見上げた。
「レフトに上がってしまった!!バーンズの打球!!………落ちて来ません!!レフトセンターは追っていない!3階席です!初球を叩いた打球は左中間スタンドまで届きました!!!バーンズの2ランホームランです」
「このボールはいけません。タイミングを外す緩いボールでしたが、真ん中高めにいってしまいました。バーンズはこのボールを見逃してはくれません」
お先にホームイン。
彼の真っ黒なバットを拾い、いい子いい子とばかりに、ほっぺでスリスリしてあげると、バーンズはデカイ顔いっぱいにニンマリとしながらホームイン。
ホームベースの横で、俺と腕をバシッと合わせると、知っていたかのようにおケツをぺしーんと叩いて、ネクストのクリスタンテともハイタッチを交わした。
俺もその大きな背中を追いかけながら、彼の定位置にバットを返した。
ベンチ1番後ろの真ん中、2人でハァハァしながら腰を下ろす。
「すごいよ、バーンズ君!あそこまで飛んだよ!あの高いスタンドまで!」
「おお。ヒラとトキがいい流れを作ってくれたおかげさ。今度はトキがあそこまで飛ばしてくれよ!!」
「じゃあ、そのゴツい体を貸してくれよ!」
「「ハハハハハ!!」」
平柳君が初球をライト線にツーベース。俺がストレートに詰まらせながらもポテンヒットでタイムリー。そしてバーンズが変化球を完璧に捉えて、推定440フィート(約134メートル)超えの特大アーチ。
開幕初打席の初球をぶっ叩きましたから、スタンドのシャーロットファンからは、早くもバーンズコールの大合唱。
そして4番のクリスタンテはしっかりボールを見極めてフォアボールを選んだ。
続くブラッドリーは、3球目を引っ張って三遊間を破るヒット。
さらに6番アンドリュース。
ストレートに詰まらされながらも、ライト前に落とすタイムリー。クリスタンテがホームに滑り込んで4点目を挙げた。
7番ヒックス。
カァンッ!!
「これもライトだ!!大きな当たりになってしまっている!!向こう向きだ!!ジャンプ!!……捕りました、捕りました!ファインプレーですが………犠牲フライになります。シャーロットが5点目のホームインです。また得点を積み上げましたが、ようやく1アウトはミルウォーキーです!」
「今のも、飛距離を出すには文句ないコースになってしまいました。エースの大失態にミルウォーキーのボスはガックリです。
初回からブルペンが慌ただしくなるなんて思いもよらなかったことでしょう。………今度はフォアボールですね。さすがに温厚で知られるミルウォーキーファンも怒りを隠せません」
「バッティ、ナイン。ナンバーテン!!ショートストップ。ザムー!」
「「イヤァァーー!!」」
メジャーリーグの中でも、珍しい5フィート6インチに満たない小柄な選手。チームでも唯一171センチの俺より背の小さな存在。
しかし、シャーロット生まれシャーロット育ち、アウトドア好きはだいたいトモダチという彼にかかるファンの期待はものすごいものがあった。
初回から9番の彼に打順が回ってきてさらにチャンス。
1ボール1ストライク。3球目のインコースを引っ張ると、打球はファーストにとって難しいバウンドになり、白球がそのグラブを弾いた。
すぐに体勢を立て直して、ピッチャーとの連携でアウトを取りに行くが、速い。小さな体が地面を蹴り上げグングンと加速し、あっという間に1塁キャンバスを駆け抜けた。
「ついに我慢の限界です。ミルウォーキー、クラーク監督。アンパイアにピッチャーの交代を告げます。ファンのブーイングが鳴り止みません。スタンリー、大波乱の開幕登板となってしまいました」
「打者9人と対戦して、犠牲フライの1アウトしか取れませんでした。しかも、フェンス近くのファインプレーです。彼に何があったのでしょうか。シャーロットの勢いに屈してしまいましたね。この結果は予想していませんでした」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます