ついに始まっちまいましたわ!

「オッケー、任せろ!」



すぐに声を掛けてもらって嬉しさが込み上げてくる中、平柳君と黒崎さんも引き連れて、リクライニングスペースに移動。



そこには40インチを軽く超えるようなモニターとゲーム機。そしてたくさんのコントローラーが置かれていた。



「おっ、来たか。日本人コンビ。クロを入れてトリオか。早くコントローラーを選びな!」



そう言ったのはたくましいお髭を生やしたキャッチャーのロンギーだった。ドーナツ型のクッションの上に座り、ブルーのコントローラーを手にしている。



俺達も、ベーシックな白や黒。赤や緑など適当な色の物を手にし、その場に座る。他にも何人かの選手がぞろぞろと集まり、始まったのはアイスホッケーのゲーム。



選手のアニメーションがやたらリアルな本物志向。どうやらこのゲームがチーム内で流行っているようだ。俺も平柳君も大してルールなど知らずに初めてプレーしたのだが……。




「このっ、このっ!新井さん、パス!」



「はいよっ!ぐえーっ、ロンギーのタックル食らった!」



「任せろ!!トキ、持ってけ!」



「ナイス!!ゴール前に運んでシュートッ!!」




「「ナイッシュー!!」」



「イエーイ!いいぞ、トキ!」



「バーンズもナイスインターセプトだ!」



俺と平柳君とバーンズチーム。コンビネーションを発揮して、ロンギーチームから得点を奪いハイタッチ。



一方、向こうのチームはカウンターのチャンスを失い頭を抱える。



「ロンギー、なぜあそこで奪われる!クロがいいポジションで待っていたのに!」



「バーンズの野郎がブロックしてきやがったんだ!抜け目のねえ奴だぜ!」



「ハハハ!してやられたな!」



「奪い返すぞ!」



そんな感じでゲームは白熱し、試合前だってことを忘れるなよと、コーチに注意されながら大盛り上がり。



なんとなく、チームメイト達と仲良くなれた気がした。









シャーロットウイングス2026 1STgame



スターティングラインナップ (昨年の成績)



1番 セカンド 平柳 右左 32歳


.358 31 79 18盗



2番 レフト 新井 右右 36歳


.403 0 41 0盗


3番 センター バーンズ 右右 24歳


.311 39 92 22盗


4番 ライト クリスタンテ 右右 25歳


.252 36 88 6盗


5番 DH ブラッドリー 右右26歳


.267 20 72 2盗


6番ファースト アンドリュース 左左 24歳


.224 15 39 4盗


7番 サード ヒックス 右両 23歳


.253 9 36 27盗


8番キャッチャー、ロングフォレスト右右28歳


281 8 51 5盗


9番 ショート ザム 右左 20歳


.252 2 32 30盗




ピッチャー ウェブ 右右 30歳


17勝10敗 3、46






「ようこそ、ベースボールパークへ!!ミルウォーキースタジアムです。我らがミルウォーキーは、昨シーズンプレーオフ進出まであと1勝というところまで迫りました。今年は新戦力目白押し!リーグ1位を目指すシーズンになりますね!」



「ええ!去年のショックで私の父が倒れなくて本当によかったですよ。開幕戦の相手はシャーロット。勢いのある手強いチームとの前評判ですが、去年は5つ勝ち越しています。スタンリーが先発ですし、問題ないでしょう」




「そのスタンリーがベンチから現れてマウンドに向かいます!!………すごい!高く登った火柱の演出。ヒーローの登場です」




昨日から平柳君とトレーナー達と、何十回も見たスタンリーというピッチャーの映像。190センチという体格から繰り出す威力十分のファストボールとスライダー。



それを狙っていき準備は出来ていた。試合前にボスから、君たち2人に開幕戦は任せたと気合いを入れてもらいましたんでね。上手くいったインセンティブ交渉の場へ一緒に来てくださいよとジョークを飛ばしたり。




ですが、平柳君が初球のスライダーをいきなり打っていったのにはびっくりしましたね。



ストレートを振りにいって、どのくらい合わせられるか見とこ。というくらいにぼーっとしてましたからねえ。




カンッ!!



「ライト線!!………入ってます。フェアです。ボールはフェンスまで到達しそう。ヒラヤナギは1塁を回っていって、2塁に到着しました。スタンディングダブル。ん~。初球を打たれてしまいました」



「スライダーです。裏をかきにいきましたが、バッターはこれを狙っていたのでしょうか。簡単なボールではありませんでしたが、迷いのないスイングです」



「ノーアウトセカンドになって、アライです。この人もニッポンからやってきた1人です。打率4割を3回記録しているベテランです」



「ニッポンで打率4割でも勝手が違いますからね。ストレートに強いタイプではありませんから、シンプルな配球でいいのでバッテリーは楽ですよ」




カキッ。



「詰まらせましたが………ファーストの上!………超えました!ライト線入っています。ヒラヤナギが3塁を回って返ってきました。アライのタイムリーヒットです。インコース。99マイルの直球でしたが………」



「打ち取りましたけどね。唯一このフィールドでヒットになってしまうところに飛んでしまいましたよ。テキサスですからね。気にしなくていいでしょう。ここから立て直せます」



痺れる左手。特にグリップエンドに近い小指に激痛が走ったが、それを忘れてしまうくらいにチームメイトが喜んでくれる。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る