バーンズ、お前もか。

イメージはやはり1打席目と変わらず、100マイルのボールにタイミングを合わせながら、その他のボールもポイントまで呼び込んで対応する形。



1ボールからの2球目。外から曲げる速いスライダーを上手くミート出来た。しっかり左足を踏み込んで右におっつける。



スカンッ!!



弾き返した打球はハーフライナーでライト線へ。進路を斜めに取りながら突っ込んできたライトの前に落ちた。



グラブで押さえきれなかったボールが後方に弾む。2者が生還し、俺も打球の行方を見ながらゆっくりと2塁へ到達した。



そして1番に返って平柳君。これまではレビンスキーの前に2打席連続三振であったが、ここは真ん中高めのボールを叩いた。



飛び付くショートの右を破るタイムリー。



シャーロットが昨年の19勝、最多奪三振のタイトルホルダーから4得点を奪った。




「なんというジャパニーズコンビネーション。光り輝くライスとフレッシュで脂の乗った魚の切り身。まさに寿司のように見事なハーモニーでレビンスキーを粉砕です」



「開幕前ラスト登板。レビンスキーにとっては思わぬ誤算になりました。日本人2人に捉えられています。シャーロットの同地区ライバル、アトランタのファンはベテラン日本人の評価を変えなくてなりません。エースがこれだけ失点を重ねてしまったのですから」








「ただいまー!!」



「おかえ………おとう、何してるの!?もう、試合終わってるよ!?もみじちゃん、おとうが!」



「うん。今、動画で収めてる」



「そーじゃなくて!」



レビンスキーからホームランを含む2安打3打点。さらに、昨年防御率1点台のセットアッパーからもナイスな流し打ちで猛打賞とした俺。


バッティングの感覚を忘れないようと、車を降りてからエレベーターで上がり、玄関にたどり着くまでずっと。


球場からバットを構えたまま摺り足で帰ってきたという設定のボケに、新井家と平柳家は、大盛り上がり。



かえではピョンコピョンコと飛びはねながら走り回り、もみじは笑いをこらえながらタブレットで俺を撮影する。



それを見ていたかずちゃんも、ボールのおもちゃを俺に向かって投げる。それを打ち返すと、みのりんのおケツにクリーンヒットし、可愛い声が漏れたのだった。




「時くん。かえでともみじと3人でお風呂入ってきて」



「オッケー。かずちゃんは?」



「さっき入ったから大丈夫。今日はビーフシチューだからお楽しみに。あと、それと……」



「やっほー!ビーフシチュー!!いっぱい食うゾー!!イエーイ!!」



テンションがぶち上がった俺は双子ちゃんをラグビーボールのように両脇に抱え、風呂場へと直行した。






そして入浴を終え、パンイチでリビングに帰還すると、そこにはまさかの平柳夫妻の姿。



俺は悲鳴を上げながらまた風呂場へと戻っていったのだった。



「みのりん!お隣さんが来るなら言ってよ!」



「時くんが話聞いてなかったんじゃん!」



「2人もケンカするんすねえ」



「平柳君、そこはわたくしの席ですわ!」



「知ってますよ!」




「「ギャハハハハ!!」」



ギャハハじゃないんよ。



しかし、ビーフシチューはもちろんだが、水嵩アナの作ってきてくれたシーフードグラタンも絶品だった。



丸太のようにぶっといチョコレートのロールケーキもいただき、開幕への準備は万端。チームシャーロットは、プライベート空港から専用飛行機に乗り込んだ。機体の側面にデカデカとチームロゴが入ったすごい飛行機。



機内も席の間がゆったりとしていて、ちょっとしたカウンターとテーブルやリクライニングスペースもあり、まるでホテルのラウンジのよう。



これなら長距離移動も苦にならない。



2時間くらいかかるらしいけど、さーてどうしようかなと思っていると……。キャップにTシャツ姿。チームの看板選手、センターを守るバーンズが声をかけてきた。



「おい、トキ。君もゲームが好きなんだってな。今からみんなでやるから早く来てくれよ」




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