そーいや、グリグリ眼鏡さんも結婚していましたわ。

なんて足の上げ方1つで色々意見が交わせるのは、8年前からリーグのライバルとして、そして同じ代表選手として凌ぎを削ってきた間柄だからだと思える。



そんな彼と同じチームでプレーするのはどんな感覚なのだろうとワクワクする部分もあるし、32歳、36歳という年齢で海を渡って来ている以上、下手なことは出来ないぞという危機感もある。



そういう気持ちを払拭出来るという意味でも、やはり野球選手なのだから、とにかくバットを振っているのが1番なのかもしれない。





ガヤガヤ。




ガヤガヤ。




などとやっている間に、100人くらいが座れそうなバックネット裏の仮設スタンドやベンチ周りがなんだか賑やかになって来た。



どうやらメディアの方々が平柳君と俺の匂いを嗅ぎ付けてやってきたらしい。通訳さんが言うには、ノースカロライナスポーツというところの記者やシャーロットテレビジョンという地元の放送局。



他にも周辺の街からやって来ているメディアもいるという。






チェック柄のシャツにグリグリ眼鏡の女の子。



女の子?




とりあえず、そんな知った顔もいる。




ティーバッティングを終え、初日としてはまあまあ動けたなという印象のトレーニングは終了。休憩がてらに、ベンチの中へ記者達を招き入れる。



「ミスターアライ。シャーロットの印象は?」



「とてもいい街ですね。道が広くて美味しいハンバーガーとホットドッグのお店が多い。もちろんピザも食べましたよ?太らないように注意しないといけませんね」




「日本では、通算の打率も4割を越えているあなたですが、メジャーで同じ成績を残せる手応えは?」



「日本と同じようにいいピッチャーがたくさんいますからね。とりあえずはたくさん試合に出て、どんどん慣れていかないと。もちろん、守備も頑張りますよ」



「ウイッス!新井君、お疲れッス!」



「やー、やー。大本さん。おつー。君のところもまだ子供が小さいでしょうに。アメリカの取材だなんて、大丈夫かね」



「ええ。旦那の方がまとまった休みを取って実家に帰ってるッスよ。ですか私がガシガシ稼いでいかないとッスからねー。……例年より、動き出しが早いッスね。やはりメジャー仕様の調整方ッスか?」



「まあ、平柳君に無理やり連れて来られたようなもんなんだけどね。マイアミはトレーニングしやすい環境だから、やりやすいよ。みのりんも君が来るんじゃないかと言っていたんだ。いつまでアメリカに?」



「1週間ッスね。新井君のトレーニング見たり、シャーロットのスタジアムにも取材して……」




大本さんはそう言いながら、分厚い手帳でスケジュールを確認した。



彼女はビクトリーズ番ではあるが、半ば俺の記事を専門に書いていたような記者。今ではみのりんとギャルみんの漫画を産み出すきっかけとなった人物でもある。



「金曜日の昼までここでトレーニングして、土日はシャーロットの自宅でゆっくりする形だから、君も一緒に来るといいよ。もしかしたら、平柳ファミリーとも一緒のご飯になるかもだけど」



「了解ッス!ゴチになるッス!いい記事書いて来るつもりなんでお楽しみッス!」



「おー、その自信が怖い。怖い」












日本人スターダブル獲得も地元メディアは案外冷ややか?4割打者は成功出来ないと言い切る、シャーロットスポーツに殴り込み!



私、週間プロ野球東日本リーグの大本めぐみが辛口評論で名のあるシャーロットスポーツの編集部とのコンタクトに成功した。



対応してくれたのは、シャーロットウイングスを特集する雑誌編集長でもあるゴードン氏だ。



「シャーロットウイングスは、他の球団に比べて歴史は浅いのは確かだが、まだ地区優勝の経験はないんだ。ポストシーズンにも、何度も進出しているけど、経験と地力の差を見せつけられるばっかりだね」



「しかし去年のシャーロットウイングスは、バーンズ、クリスタンテ両選手の大活躍などで、最後まで白熱したシーズンになりましたね」

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