気持ち的に、歳は今でも27ではあるんですけどね。

お野菜もまあ、ざっとみた感じは日本にあるものもだいたい揃っていますからねという感じ。



しかし、日本みたいにじゃがいもや玉ねぎが3つ4つ袋に入っていくらということではなく、基本全部バラ売り。



しかも、1ついくらではなく、ld 2、99$などと書かれているのだ。



「パパー、それは1ポンドで2ドル99セントって意味なんだよー」



と、もみじちゃんに教えられてしまったのだ。



「マジかよ。もみちゃん、何で分かるん?」



「これくらい常識だよ。アメリカ来るなら勉強しておかないと」



などと、言われてしまったのだ。



確かに彼女の言う通り、重さで値段が決まるということを理解して置かないと、お会計の時に大変なことになってしまいそうだ。



値札だけ見て、メロンとかスイカを安い!と思って買ったが最後という事故が起きかねない。



それにリンゴ1つ取ってみても、1ポンド2ドルと、1ポンド4ドル50セントという倍以上値段が違うものがある。



何故だ。何が違うんだと、4割打者特有の観察眼を発揮した結果、Organicという単語を見つけることに成功した。



やはりオーガニック食品は高いのだ。素晴らしい選球眼。




これはもう、アメリカでの活躍は約束されたものとして良いのではないだろうか。




翌日、今度は家族全員でシャーロットスタジアムに向かい、改めて見学させてもらった。



ボールとグローブとバットを持って、今にも全速力で駆け出そうとするかえでの首根っこを掴みながら、みんなで車に乗って出掛けたのだ。



ですから、スタジアムに着いて、グラウンドに入ったら、かえでの目はギンギンギラギラ。



いきなり全力のキャッチボールをしようとするから、まずはウォーミングアップが大切なんだとランニングとストレッチをやらせた。



そしてベンチの前でキャッチボール。



試合がない日となれば、おうちのトレーニングルームや近くの原っぱでやりますし。



俺がいない時も、保育園から帰ってきたらまずネットスローをし、風呂上がりには腹筋と背筋と、ゴムバンドをを使ってのインナーマッスルの強化をやる子でしたから、塁間くらいの距離感ならば、普通にボールが届く運動能力を手に入れていた。



俺とかみのりんとかもみじちゃんは、もはや当たり前のことだから気にしてなかったけど、それを見た桜井トレーナーや黒崎通訳、シャーロットの球団スタッフはめちゃくちゃびっくりした様子。



桜井トレーナーは、かえでがキャッチボールするの真横で膝を着いてマジマジと見つめ、黒崎さんは、俺達の許可を得ると、タブレットを構えて動画を撮影し始めた。




かえでちゃんのお顔が入らないように、彼女の真後ろや背中側から端末を向けて撮影する。



おい!アライの子供がすごいキャッチボールしてるらしいぞと、仕事を放り出してやって来た職員軍団がベンチからグラウンドを見つめる。



1塁ベースの横なら、かえでの投げたボールがホームベースの横で待つ俺のピンクグラブまで届くと、アメリカンな野次馬から歓声が上がる。



それに気を良くしたのか、かえでそれまでもビュンとしたいいボールを放ったり、俺が投げたボールを背面キャッチしてケタケタ笑っていたり。



負けられぬとやった俺の背面キャッチは見事に失敗したりなんかして。



サービスで、左中間の飛行機を動かしてもらったり、バックスクリーンに、Araifamily、Welcome!と文字を出してもらっている中で記念撮影をしたり。


そして夜は平柳君が取っておいてくれたレストランに集合して、平柳君側のトレーナーさんにもご挨拶して、またしてもデケーステーキを思う存分食らってやったのさ。



後は子供達の学校のこと。



言うてわたくしは37歳になるシーズンですし、2年契約ということもありますから。


新たな契約を結び直すなどかな長くはアメリカにいることはないだろうと、そんな考えではある。






そんな考えの俺がメジャーに来た1番の理由は、ビクトリーズにお金を残せるからである。


俺はビクトリーズに借りがあった。


5億円程の。


俺が秘密組織によってコールドスリープされていた5年間。ビクトリーズから毎年その時の年俸であった1億円がみのりんに支払われていたのである。


前例がないですからね。


現役のプロ野球選手が長い期間意識を失ってしまうなんて。一応は契約しているけど、プレーはしていないし。


本人の意思で契約出来なくなるわけですから、ビクトリーズのお偉いさん達は非常に悩んだみたいですけど……。


その時、みのりんのお腹に2つの命があって、婚姻届を提出したばかりだったというのが大きかったみたいです。

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