そんな心配されるような守備ですの?

「スゴーい!!アメリカだー!U・S・A!U・S・A!」



成田空港から15時間半。



かずちゃんを含めて、たっぷり睡眠も取れましたから、気分は上々。空港のコンコースから開ける日本とは違う景色に、かえでのテンションもマックスに上がるのである。



「かえでー!迷子になるぞー!こっちおいでー!」



「おとう!他にもいっぱい飛行機いたー!スタジアムはー!!」



「スタジアムに行くのは明日だ。今日はおうちに行って、ちょっとお買い物して夜はピザだ」



「なにピザー!?」



「なにピザがいいかねー。アメリカのピザだからね。ビビんなよー」



「お肉いっぱい乗ってるピザがするー!」



「ヘイヘイ、お肉のピザね」



かえでそんな調子だが、みのりんともみじは初めてのアメリカにちょっと緊張気味の様子。



そんな2人をエスコートしながら、まずは入国審査である。



ファーストクラス利用者の専用ゲートに向かい、無機質で真っ白な部屋へ通される。



カウンターに手荷物を広げながら、シュバッとパスポートを取り出す。



するとテンプレに、ご予定は?と聞かれるので、シャーロットのベースボールタウンを救いに来たよと答えると、その場がフォー!と、盛り上がったのだった。



これにはかずちゃんもご機嫌だ。




そして、預けていた荷物をキャッチして、そのまま到着ロビーへに出たところで……。



「新井さーん!お疲れ様でーすっ!」



通訳の黒崎さんが出迎えてくれた。



お洒落なズボンにジャケットを羽織り、中折れハットを被って、ジーンズ生地のセカバンを背負っている。



「みのりん、かえで、もみじ。こちらは通訳兼データ解析マンの黒崎さんだ」



「どうも、奥様。かえでちゃん、もみじちゃん。かずひと君。はじめまして、黒崎曜一です」



「よろしくお願いします」



「「はじめましてー!!」」



「それでは、外に車来てますんで、そちらに参りましょう!」



黒崎さんに案内され、俺達は空港の中に立ち並ぶレストランやアパレルショップなどを眺めながらシャーロット空港第1ターミナルの外へ出た。



すると、手前の駐車スペースにいた真っ白なファミリーカーが目の前までやって来る。



「みんな。新井家のメインドライバーである、シャーロットドライビングパートナーのゴードンさんだよ」



「「よろしくお願いしまーす!!」」



3人がペコリとお辞儀をすると、ゴードンさんも覚えたての日本語と会釈でご挨拶。



ベビーカーを畳み、設置してもらったチャイルドシートにかずちゃんを移して早速空港を出発だ。





「すごーい!英語がいっぱいあるー!パパー、あの看板、何て書いてあるのー!?」



「あれは、キャンプ場か何かの看板だね。……ザム……ザムキャンプファーム。次1マイル先の道を左ですって書いてあるよ」



「新井さん!その牧場の末っ子さんがチームメイトのザム君ですよ」



「えっ!?……誰!?」



「おとう、知らないの!?ショートのザムさんだよ!去年、メジャー初昇格で2割8分を打ってブレイクした」



「あら、そう。かえでちゃん詳しいですわね!」



「おとう、チームメイトさんのことはちゃんと調べないとダメだよー。特にレフト守ったら、ショートとセンターの選手にはお世話になるんだからさー」



とまで言われてしまい、車内は大爆笑。どうしたの?とこちらを伺ったゴードンに黒崎さんが通訳したもんだから、2回も笑われてしまった。




車は空港から続く、広く長い道を走り、いくつかのバイパスを抜けてマンションまでやって来た。



「時くん。どうやらここだね」



送った画像に見覚えのある建物をみのりんが見上げる。



「おとう、ここが新しいおうち?」



「そうだよ。シャーロット・ペーテル・タウン。ここの最上階の左側のお部屋だ。今からマンションの入り方を教えるからちゃんと覚えておいてな」




「「はーい!!」」

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