しかも、しょうゆか味噌かとんこつかで選べるという。
そのお金を握り締めて、12月24日。神社へとお参りに向かう。
世間はクリスマスと洒落込んで、1年で1番日本の神様への信仰心が薄れている1日ですから。
そこを狙って、新井家は車で乗り付けて参拝するのである。
俺が赤ちゃんを抱っこし、みのりんが双子ちゃんの腕を引いて、それぞれ車の中で渡した1万円札を賽銭箱に投入する。
最近は、渡したおもちゃを嬉しそうに振り回すようになったかずちゃんがなかなか1万円札を賽銭箱に入れてくれないというハプニングがありながらも。
あと1週間もしたら、神様も忙しくなるでしょうから、これで何か美味しいものを食べて下さいと2拍1礼をして神社を後にするのである。
すると、疑問を持ったかえでちゃんが……。
「おとう、どうしてお正月じゃなくて、クリスマスに来たのー?」
「もしかえでが神様だったら、初詣のごった返したところのしょーもない語呂合わせで穴の空いた小銭を入れて、自分の勝手な願いを押し付ける人。
クリスマスという閑散とした時期にやってきて、一家でワンちゃんとネコちゃんの分を合わせて7万円お賽銭して労いに来てくれた人。限られた神パワーをどっちの人に使いたくなる?」
そう言うと、かえでは改めて俺のズボンをしっかりと掴むのだった。
「なるほどー!おとう、考えてるね」
「何かを成功させようとしたら、人がやっているところとはちょっと違うところから努力して変化をつけるのがコツなのさ。
そう言った意味では、3歳になる前からおとうとキャッチボールをして、最近はティーバッティングもやるようになったからね。
その調子でアメリカでも頑張ってな。向こうには、シャーロットウイングスが運営する、ベースボールアカデミーがあるんだから。アメリカのライバルが君を待っている」
「うん。わかったー。日本の野球というやつを見せつけてくるね!」
そう言ったかえでの目はキラキラと輝いていた。
しかし、それはどちらかというと、おとうの仕事でして………。
そんな会話をしていたからだろうか。参拝が終わり、予約していたケーキとチキンを受け取り、家に帰って寛ぎながら、あとは特上寿司待ちだなとなったところで……。
「パパー!」
「なにー?」
ソファーに座ってきゃらめるをなでなでしながらテレビを見ていると、そのきゃらめるをどかして俺の膝の上に乗っかるもみじがおねだりモード。
「パパー、これ見て。このゲーム欲しい!」
タブレット端末には、サクセスプログラミングというものが表示されていた。
「なにこれ。プログラミングするゲームなん?」
「そう。自分で動きとか設定とかを組み合わせて、色々表示させてみるの」
そのゲームの紹介PVには、手作り感のあるキャラクターがドラゴンに向かって剣を振っていたり、横スクロールで楽しむアクションゲームや街づくりのシミュレーションやサウンドノベル形式なんかもある。
なるほど。つまりはプログラミングを通じて、ゲームを作る過程を楽しめるゲームか。
前に3人で風呂に入った時、かえでが野球選手を目指すなら、もみじはゲームが好きだから、ゲームクリエイターを目指してみたらと言ったのをわりと本気にしているみたいだ。
まあ、確かにちょっと面白そうだし、勉強にもなるだろうと、あんまり夜遅くまでやってることのないようにと約束して、その7000円のPCゲームをダウンロード購入するのであった。
ピンポーン!!
そして、お寿司が届いたっ!!
なんて楽しんでいる間にどんどんと時間が過ぎていきまして。双子ちゃんが通っていた幼稚園では他のお友達よりも一足早く卒業式&お別れ会をしてもらって。
年が明ける頃には、お世話になった方々に挨拶に行き、きゃらめるはうちの実家に。
オールスターで出会ったクロネコさんの方はみのりんの実家で預かってもらうことになった。
とりあえず1年は家を空けるので、週1でリネン屋さんにお掃除入ってもらって、警備システムを契約して。合鍵を互いの両親に持っといてもらって、市役所行って。
帰り際、職員の皆様に拍手で送り出してもらったところで、車の書類がまだであったことを思い出して出ていったら、変な空気になったので、お詫びに踊ったりして。
そんなことをしている間にもう1月7日ですから。
纏めた荷物を抱えて、家族全員でアメリカ行きの飛行機乗り込んだのだ。
すると、おっぱいをもらっていたかずちゃんが、みのりんやおとーなどと、日本を離れた途端に、急な覚醒を決めて喋り始めたり。
日付変更線を過ぎた瞬間には、ハイハイを通り越して、いきなり立ち上がって歩き始めたからびっくりしながら大笑いしたり。
球団のご厚意でファーストクラスなるものに乗せてもらいましたから、赤ちゃんなんてアイドルのような存在でして。
とても飛行機の中にいるとは思えない快適な空間。
でっかいモニターで最新ゲームが出来るし、映画も見れるし、アニメも見れるし。
食事の時間になり、ビーフともフィッシュとも聞かれずに、豪華な食事が出てきたと思ったら、みのりんの目の前にだけすっとラーメンが出てきたりして。
調べとんねん。飛行機さんサイドが。
メジャーリーガーになる新井が来るぞと、ラーメン好きのあの奥様も来るぞと、ラーメンとアイスクリームは絶対に用意しとけよと、なってるんですよ。
しかもそのラーメンを俺のところじゃなくて、みのりんのところに1番で持ってくるんですから、やっとりますわ。
これだからファーストクラスは怖い。こちらの想像を数段上回ってくる。そんな恐怖に怯えながら俺たち4人は一心不乱にラーメンを啜るのであった。
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