周りにラーメン屋があるかどうかを詰問されましたの。

部屋の様子をスマホで撮影する。リビングに対面したキッチンに、ランドリールームとは別れた大理石の洗面所に、バスルームは調べた通り日本人好み。



バルコニーもお布団を何枚も広げられるくらいに広いスペースがあり、周りもマンションやビルだらけだが、眺めもまあまあ。



クローゼットは各部屋にあり、収納、家電を置くスペースも十分だ。



トイレも2つあり、ちゃんとした日本製の洗浄機能も付いている。



しばらくして、みのりんからも、よかろうのお返事も届きましたから、すぐさまここの部屋に決めたのだった。



それ以外にも、住民票関係とか税金関係とかこういう契約とかは唯一めんどくてやだなぁと考えていたのだが、シャーロットウイングスというメジャー球団が保証人になるわけですから、事はどんどんとすんなり進む。



後は部屋に合わせて、ドライビングサービス会社の方とも顔合わせ。


アメリカではやはり勝手が違いますから。車を運転する予定はないので、球場や車が必要な距離の普段のお出かけの行き来はプロのドライバーにお願いすることに決めた。



もちろん、料金はかなり掛かってしまうのだが、これも球団とも付き合いのある会社さん。規定内なら手当てが出るので問題なし。



後は家電やらなんやら。次に渡米した時に運び入れてもらえるタイミングで、近くの家電量販店に相談しに行った。




そういうお店も、もちろんアメリカンサイズであり、店員さんも日本人の相手は慣れているのか、おすすめの日本製家電を次々と見繕ってもらった。



テレビに冷蔵庫、洗濯機、オーブン、電子レンジ。空気清浄機に、ベッド、テーブル、ソファーなど。



トータルでものすごい金額になったが、これでとりあえず俺のやらなきゃいけないことは完了した。



俺はそんな達成感から、ちょっと街中を散歩したい雰囲気になったのだが2人に、何かあったは大変なのでホテルの部屋で大人しくしていて下さいと釘を刺されてしまった。



そんなわけで、ホットドッグとミートタコスとドーナツを食べてふて寝。



俺の決めたマンションから2ブロック程離れた別のマンションに住むことになった2人が夜に戻ってきて、翌日の昼にはまた1度スタジアムを見に行って、夕方の便で日本へと帰国したのだ。



そして到着するや否や、つるとんたんに行くというね。





その日の夜。


俺のメジャー挑戦結果のニュースと同じインパクトの速報が野球界を駆け巡った。





平柳、海外FA権を行使して、シャーロットウイングスと契約合意。


東京スカイスターズの平柳裕太(34)がメジャー挑戦。シャーロットウイングスとの契約を結んだことを正式発表した。年俸10億円の2年契約とされ、先日に移籍を発表した新井とは同じシャーロットタウンでチームメイトとなる。


「様々な選択肢があったが、自分が1番やりたいチームを選んだということ。年齢的にもメジャー移籍はラストチャンス。ウイングスは比較的若く才能のある選手か揃っていると聞く。自分の全てをぶつけてワールドシリーズを狙いたい」














そんなこんなであっという間に師走の時期となり、アメリカに渡る前に、やらなきゃいけない仕事が舞い込んできたのだ。




朝ドラの出演オファーである。



次に始まる朝ドラというのが、日本で1番有名な歌劇団に憧れる少女2人の話。


その主人公の近所にある郵便局で働いている仲良し局員という設定で、俺と平柳君にオファーが舞い込んだのだ。



たまにメジャーリーグの中継をやっている放送局さんですからね。


出演してくれたら、シャーロットの試合の、年間のトータルの放送する数や権利料がどうたらという話で。



平柳君は、日本でも3本の指に入る大きな芸能事務所さんに所属していますけど。


わたくしはイケメンなだけが売りのワンマン社長のちっぽけな芸能事務所ですから、ネコが横切っただけで吹き飛ぶような小ささですのでね。



札束で頬を叩かれたら従うしかないわけで。




都内の有名なスタジオまでやってきた次第である。


つまり再会である。



「よー、新井さん!お疲れっす、アメリカの準備は進んでいますか?いやー、まさかシャーロットでチームメイトになるなんて、これも運命ですよねぇ」



よく言うよ。という言葉しか見当たらない。



タクシーを降りると、ちょうど平柳君も車を停めてきたところだったらしく、スタジオ前で鉢合わせ。



挨拶をしながら、互いの右手をがっしりと握って背中を叩いた。もうアメリカかぶれ。



「結構いいマンション見つかったよ。思っていたよりも家賃が高くなかったし、最初は郊外の一軒家にしようと思ったんだけど、やっぱり防犯面がね………」



「確かにそうっすよねー。アスリートの家を狙う空き巣とかもあるみたいですし。やっぱり家族の安全が第1ですから……」



「俺のおケツにしか興味がなかった平柳君がちゃんと家族の事を考えることが出来るなんて。……成長しましたわね」



「何いってんすか。今でも新井さんのおケツを狙ってますよ!」



「ぎょえ~!!」





「あの、おふた方。よろしいでしょうか」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る