上陸してしまいましたわ!

2人のおじさんに提出したのは、メジャー球団、シャーロット・ウイングスと交わした契約内容である。


2年契約の合わせた年俸と、待遇。各種インセンティブ。出場試合数が100試合でこのくらい。ヒット100本でこのくらい。以後10試合、10本毎にいくら。タイトルを獲得したらいくらというのがびっしりと書き込まれているものである。



さらに、それぞれ2人には1枚ずつ別の書類。



雇用契約書である。



そう、この2人のおじさんとは、メジャー移籍に合わせて、俺に同行してくれる通訳さんとトレーナーさんである。





桜井トレーナー。2女1男の48歳。このおじさんは、俺がルーキーイヤーの若手中心の日本代表入りした時、腰を痛い痛いした時に面倒を見てくれたおじさんである。



野球選手以外にも、海外でも活躍するプロゴルファーだったり、オリンピックでメダルを獲得する柔道選手とも契約したことのあるなかなかムチムチな体格のおじさん。



夏になったら、ポロシャツをピッチピチにするくらいのいいガタイをしている。



その隣に座るのは、年齢は俺の1つ上である黒崎さん。これから俺のホームタウンになるシャーロットの街にある大学に留学経験のある。



その大学を卒業するまで、小さい頃からずっと硬式野球をやっていたとあって、参謀、データ解析、練習相手、そして街の案内人としての役割も期待している。





その2人にとっても大事な大事なお給金の話。月々の支給額に、年2回のボーナス、インセンティブ達成にも、項目によって一定のパーセンテージで俺からの振り込みがある。


アメリカは生活費も掛かりますから、毎月住宅手当て付き。一緒に行動している時の飲食代は全て俺持ち。


芸能事務所、アライサンズはなかなかのホワイト具合ですから、トータルで見ると相場の約1、5倍程の金額設定にしてある。



それがとりあえずの2年契約。思わず頬っぺたが盛り上がりそうになってしまうが、2人の顔があまり緩むことはない。



それ相応の働きを俺が要求しているというのを分かっているのだ。



弁護士さんと税理士さんにも協力して作成した契約書に2人は丁寧な字でサインをし、無事契約成立。俺たち3人は改めて固い握手を交わし、お店を変えて、ちょっと高級なお寿司を堪能しながら、親睦を深めた。



そして1発仕事をこなしたら、とりあえずの下見を兼ねて、3人でキャッキャッしながら飛行機に乗り込んでそのまま渡米。



成田空港から約15時間。



俺は、機内食をうおおおっ!とかきこんだ以外は2人がド心配する程、ほとんど寝ている間に、アメリカはノースカロライナ州、シャーロット空港に到着してしまったのだった。





ノースカロライナ。人口1040万人の北米大陸の南東部に位置する州である。大西洋と雄大な山脈の両方を景観として持ち、バイオテクノロジーや金融、美術、学問が特に有名。


州のスローガンは初めての飛行。かの有名なライト兄弟をリスペクトする、情熱と感性に溢れた場所なのだ。



そのノースカロライナ州で1番の都市は、シャーロット市。



ここには、俺がお世話になるシャーロットウイングスを初めとして、NBA、NFL、メジャーリーグサッカー、さらには有名なモータースポーツのイベントも度々開かれている、アメリカでも有数のスポーツの街でもあるのだ。



ですから、空港に着いて、指定された場所に向かったら、そこにはかなりの人だかり。球団のロゴが入った車がありましたから、誰か来るはずだぜと、居合わせた地元のファンが出待ちしているような状態になっていたのだ。



ですから、1番体格のいい桜井トレーナーを差し出してファンと交流させる。



そこにはファンは、オー!アライボーイ!ピンキーサムラーイ!といいながら、桜井トレーナーと写真撮影。



俺の認知度など、わりとこんなものである。



そして球団のスタッフが車から降りてきて、ファンの方々をどかしながら、我々3人を車に乗せ、勢いよく走り出したのだった。






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