あねりんがこれ以上ない幸せそうな表情でしたわぁ。

ダダン、ダダン!!



室内戦では少々扱いにくいアサルトライフルを巧みに指切りして、反動を抑えながら敵を仕留めるあねりん。



壁に隠れる間際に当て、無理せず1度射撃を止めて、壁の向こうへ詰めてから、敵のカバーの有無をしっかり確認しつつ、きっちり確実に仕留める。



冷静な判断。



「こっち2枚いる!!片方、ブレイサー!!」



中央での撃破に成功した瞬間、マップ右翼に展開していたあかりんが交戦状態に。敵2人から挟み撃ちに会うも、素早く遮蔽物に隠れ、何とか難を逃れたようだ。



俺とノッチがそちらに向かう。



しかし、あかりんが口にしたブレイサーというキャラ。そいつは一撃必殺の近距離斬撃技を得意にしているので、無闇に近づくのは危険である。



その認識がダッシュで向かう俺の足と頭を冷静にさせた。



敵の気配を感じ曲がり角にエイムを置く。



ダッダッダッ!




シュバッ!!



ヒュン!!




アブねえ!!



そのブレイサーも俺の気配を感じていたのか、曲がり角でヤマを張るようにして、斬撃を繰り出してきた。



後ろに下がって何とか避けることに成功。突っ込んでいたお陀仏になっていた場面だった。


そして隙が出来た相手に、そのまま射撃する。



ダダダダッ!!



「ぐえぇっ!!」



相手ブレイサーはバタリと倒れ、ポイントゲット。そしてそのままノッチ側のカバーに向かい、彼の撃破をアシストした。



そんな感じで、慣れない新マップながらチームワークを発揮した我々チームタコヤキ試合を優位に進め、時間も残り僅か。




「ショー!!タクティカルポイントが貯まっていたら、左十字キーを長押しだ!ランチャーを出せ!!」



「はい、新井さん!出ました!」



「この通路に敵が来るぞ!見えたら一気にぶちかませ!」




ダッダッダッダッ!




パシュッ!パシュッ!パシュッ!!




ズガーン!ズガーン!ズガーン!!



「最後は勝星さんのグレネードランチャー炸裂!!敵撃破で、ポイントエンド!!チームタコヤキの勝利です!!」




「「よっしゃっあああっ!!!」」



あねりん、あかりんの華麗なプレイあり。俺やノッチのお笑いプレイあり。チームワークあり。最後はビギナーであるショー君のミラクルランチャーもあり。と、ゲームの楽しさを存分に発揮したいい形で、ゲームのお試し生配信は終了となった。



最後に、プロ野球マン3人とディレクター、プロデューサーで、サムネイル用の記念撮影をしてお開きとなった。










「いやー、楽しかったっすねー!!サイコやーでしたよ!」



ビルを出たところで、ノッチは大きな体を伸ばしながら、満面の笑み。



確かに自分の好きなことをやってお金が貰えるなんて、控えめに言ってサイコーだ。



俺も発売日が待ちきれない。



「あねりんとあかりんもお連れ様だったね。慣れない場所だったと思うけど、大丈夫だったかね」





話しかけた彼女達は、特別にもらったゲームシリーズのグッズを抱えてホクホク顔。恵比寿の夜空に写る真っ白な月を見上げて恍惚の表情だった。



「私はこの日のために、球団事務所に連続有給の許可をもらって来ましたから」



「私もゲームが発売されたら、1週間はお店を休業するつもりなんだ」



「おいおい」




そんな2人を少し正気に戻しつつ、夜8時を過ぎたところですから、お腹がかなりペコ。予定通り、焼き肉屋さんに移動して、美味しいお肉を頂いた。


そして、近くにはギャラントハイアットがありますから、そこに宿泊して、ぐっすり眠った後、朝もゆっくりと起床して、バイキングにうつつを抜かし、解散しようとする運びとなった。




「皆さん、お疲れ様でこざいました。わたくしはこれからベッケンバウアーがありますのでこれで……」



「俺もこのまま、千葉の実家に帰ろうと思います。ショー君は宇都宮に帰るのかい?」



「ええ。めっちゃ楽しかったっす。新井さん、北野さん。ありがとうございました」



「いやいや、こちらこそ、急遽出演してくれてありがとな。ということは、3人はこの後新幹線か。待ってな………」



俺はごそごそと懐をまさぐり、3人それぞれに新幹線代を渡した。






「えっ、いいんですか!?」



ショー君は目を丸くする。



「ああ、今回は交通費もちゃんともらってるからな。ショー君の分は、将来ビクトリーズに移籍するのを約束する前金ということで……」



「安いお金ですね。西日本リーグの最優秀防御率投手ですよ?」



あねりんがそう言って呆れた顔をした。



チームタコヤキ、新たなる挑戦もここまで。俺は颯爽とタクシーに乗り込んで、おじさん2人の待つ神保町へと向かっていったのであった。




カランコロンカラン。



「いらっしゃいませー!」




カレーと古書の街。その一角にあるレトロな雰囲気の喫茶店に足を踏み入れると、店員のお姉さんがやって来て、その向こうにある1番奥のテーブルにいたおじさん2人も、俺の入店に気づいて立ち上がった。



「待ち合わせしてまして。クリームソーダを1つ」



「かしこまりました!」



「新井さん。お疲れ様です。どうぞあちらの席に……」



程よく空調の効いた店内。どこかにレコードがあるのだろうか。ジャズっぽい和やかでムードのある曲が俺のイケメン具合をより一層引き立てている。




案内されたテーブル席。程なくして注文したクリームソーダがやって来て、店員のお姉さんがテーブルから離れていったのを確認して、俺は2人に書類を提出した。




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