激しく揺れる夜になったら素敵ですわね!
一気にキッチンとリビングが賑やかになった。
みのりんと柴嫁と宮森ちゃんによる激しいポジション争いが行われ、みのりんは揚げ物全般。柴嫁は、何種類かのパスタ。
宮森ちゃんはもちろんステーキを焼く分担に収まり、3人で仲良くキャッキャッキャッキャッ。
「こーくん、しゅんくん!早くやろー!」
「うん!」
「待って、コントローラー出す!」
子供達も早速、さっき俺がセッティングしたばかりのゲーム機を起動させる。
ゲーム好きのもみじが、柴ちゃんと桃ちゃんのとこの長男達を急かすようにしてテレビの前に座らせ、そこに日課の腹筋トレーニングを終えた、かえでもフシューフシューと息を荒くしながら加わる。
そして、各々マイプロコンに持ち替えて、いきなりの熱戦。
盛り上がり始める。
お父さん達は、そんな様子を眺めながら赤ちゃんの見守り役となり、軽く缶ビールを空けながら、優勝の喜びに、互いの労を労う。
「いやー、しかし。最後の10連勝は凄かったですねー。全員が仕事をしっかりこなしたと言いますか」
「そうだね。クライマックスを勝ち抜けば桃ちゃんも復帰出来るし、なんとかそこまではいきたいな」
「ブライアンが調子いいですからねー。復帰してもスタメンでいけるかどうか。どのくらいバット振れるかも分からないし……」
「おやおや、ずいぶん弱気だな。嫁さんが美味しいステーキを焼いてくれているというのに……」
「新井さん。適当になにを言って……」
「新井くーん。お寿司屋さんかも、もしくは、さやちゃん!」
「任せろ!!」
「お待たせしましたー!」
きゃらめるにおケツの匂いをクンクン嗅がれながらドアを開けると、いたのはさやちゃんと酒屋君。そして、お寿司屋さんのおばさまだった。
「新井さん!こんばんはです!」
「おう!酒屋君と一緒に来たのかね」
「いえ。たまたま目の前で……お疲れ様っす!」
「あら、そうかね。それじゃあ、さやちゃん。お寿司を受け取って頂いて……」
「はい!お任せ下さい!!」
どーんとデカイ盛り込み寿司。大トロに、イクラに、ウニと、豪華なネタがこれでもかと盛られたお寿司に、さやちゃんの胸が踊る。
おばさまに代金とお心付けを渡して、2人を招き入れた。
「あー、酒屋さんだー!この前はナイピ!あと、さやちゃん!」
ゲームのコントローラーを握りながら、かえではさすがの反応。リビングで寛ぐ柴ちゃんと桃ちゃんに挨拶し、キッチンで凌ぎを削る奥様方にもペコペコ。
「新井さんこれ、うちの店から持ってきたやつですけど。ビールとハイボール缶と日本酒や焼酎を少々……」
「サンキュー!そんじゃあ、酒屋君とさやちゃんはそっちのソファーに座ってくれ」
「はい!お寿司はここで大丈夫ですか?」
「おう!子供達ー!ご飯出来るよー!!」
「「わーい!!」」
2人が到着し、さらに家の中は賑やかに。
みのりんが仕上げたのは、生ハムとホタテが入ったサラダとカプレーゼ。
そして、揚げ物中心のオードブル。カツにエビフライに唐揚げに、クリームチーズと湯がいたほうれん草とコーンを練ってスティック状に揚げた美味いやつも。
柴ママの得意料理はパスタ。子供達が大好きな挽き肉たっぷりのミートソースに、パルミジャーノチーズをふんだんに使った濃厚なカルボナーラ。そして、爽やかな香りがたまらないハーブガーリックパスタ。
まるでお店で食べるようなおしゃれなお皿にきれいに盛り付けられている。
そして宮森ちゃんは、鉄スキレットで焼いたステーキ。100グラム3000円という日光牛の高級品。
桃ちゃんと付き合っていた頃から、時間を見つけてはデカイ車でキャンプに出かけ、その度にステーキ肉を焼く腕を磨いていたというわけですから。その成果が存分に発揮されているようだ。
横長のお皿にカットされて並べられたお肉は見事もの。大人のお皿は、わさび塩を添えたミディアムレアな焼き加減。お子様達にはしっかり中まで火を通し、甘めな味付けのステーキソースをあしらってある。
それに加えて、高級なお寿司もあるわけですから、我々は赤ちゃんを除いて、猛獣のように、ご馳走に舌鼓を打ったのだった。
「ほいじゃあ、もう遅いから一応気をつけてね、2人とも!」
「はい!ごちそうさまでした。お土産までもらってしまってすみません!!」
「おう!いいって、いいって!明日の朝ご飯にしても余っちゃうくらいだったからさ。酒屋君も子供と遊んでくれたりしてありがとな。ちゃんとさやかちゃんを送っていってあげること」
「はいっ!もちろんっす!今日は美味しい料理をありがとうございました!」
ビクトリーズの面々は明日まで完全オフ。明後日も午後から練習が軽くあるだけなので比較的ゆっくり出来る。
柴ちゃんや桃ちゃん達の家族は、2階にお泊まりするが、女子サッカー代表のトレーナーを務めているさやかちゃんは明日の昼、都内でミーティングがあるらしい。
となれば酒屋君とくっつけて、「さかやさやか」にするしかないというわけで、彼に送らせることにした算段である。どちらも駅前住みだし、ひったくり撃退イベントも昔あったわけだしね。
「酒屋君、さやちゃん。気をつけてね」
みのりんがかずちゃんを抱っこして外までやって来た。
ポニテちゃんが、かずちゃんのふっくらしたほっぺをつんつんする。
「……………」
「すまんね。生まれてまだ6ヶ月だから基本無なのよ」
「でも、可愛いですね!!目元はみのりさんですね!鼻や口元はどっちかと言うと、新井さん似で………」
少し黄色がかったお月様がよく見える秋の夜。
酒屋君とポニテちゃんが並んで歩きながら遠ざかっていく。
「来年のオフ辺りが楽しみですわね!」
「時くん、そんなことを考えていたの?」
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