浮き足立ってるんじゃないわよ。

先行 東京スカイスターズ スタメン


1番6平柳.363 29 76


2番7佐藤.321 9 43


3番Dヘンダーソン .271 28 80


4番5吉原.305 26 101


5番9畑 240 18 51


6番3エンリケ 300 10 39


7番8速水 258 4 48


8番4 京川 235 5 30


9番2 大林 201 1 21



ピッチャー 黒西 14勝5敗 防御率2、66





後攻 北関東ビクトリーズ スタメン




1番6並木 .315 15 55


2番7新井 .403 0 33


3番4祭 .301 22 82


4番5芳川. 271 24 99


5番3マテル.288 30 91


6番D赤月 . 265 13 51


7番8柴崎.258 7 40


8番9山田 232 5 17


9番2北野 .198 2 28



ピッチャー


アンデルセン 8勝0敗 防御率1、26





「オレンジ色の夕日が日光山の向こうへと沈みゆく中、宇都宮市出身のアーティスト、安住ケイナさんによる始球式が終わりました。

たくさんの期待と拍手に包まれて、北関東ビクトリーズと東京スカイスターズの24回戦が始まるところであります。解説は大原さんであります」



「よろしくお願いします」




「今日は私も実況席に座っているだけで、緊張感が高まってしまうようなそんな気分になって参りました」



「いや、もう私もそうですよ。ずっと待ちわびた瞬間を自分達の手で掴み取れるところまで来ているわけですからね」





「先ほどから何度も、申しておりますが、今日の試合を制したチームが今年の東日本リーグのチャンピオンです。共に73勝68敗1引き分けで並んでいます。この首位で並んだ2チームが73勝ですから、東日本リーグが大混戦のままここまで来ました。実に3日前まで、4チームに優勝するチャンスがあったわけです」




「そうですねえ。なかなか私も長いことこの世界に携わっていますけど、これ程までにもつれるシーズンというのは経験にないですねえ」



「既に両チームのスタメンが発表されています。ビクトリーズの方、注目はどの辺りになるでしょうか」



「やはり先発アンデルセンの出来でしょうね。後半戦になるところで加入して、8勝0敗ですか。ビクトリーズはもうこの助っ人に全てを託す思いですよ。打つ方では1、2、3番。ここがどれだけ仕事をして、好調な4番、5番に回せるかですねえ」



「スカイスターズは、エースの黒西を先発に持ってきました。中4日。北海道フライヤーズとの試合に6回1失点で14勝目を挙げています」



「初めての中4日。しかも、110球投げていますからね。この辺りがどう影響してくるか。打線はやはり平柳でしょうね。こういう大一番のゲームには強い選手ですから、調子づかせないようにしたいですね」



「なるほど。さあ、ビクトリーズの選手達がグラウンドへと飛び出していきます」


今日は残念ながら登録を外れてしまった桃ちゃんのユニフォームをベンチに掛けて、彼のリストバンドを柴ちゃんと片っ方ずつ授かってそれを装着。



そしていつものように、グラブとおケツのポッケにこれでもかとサインしたボールを詰め込んでグラウンドに出ていく。



1つ2つ落として柴ちゃんに拾ってもらいながら、スタンドのお客様にサービスタイムだ。



出来るだけ小さくて出来るだけ可愛い女の子に狙いを定めて、ボールを投げ込む。



こういう時は家族がいるとかを考えないようにしてるから。優勝がかかった試合ともお構い無し。



エキサイティングシートの方にも行って……。



「はい、じゃあ1000円から!」



なとどオークション形式で始めて遊んでいた。



とっくにアンデルセンもマウンドに上がって投球練習を開始した頃にようやくサングラスを装着して柴ちゃんとキャッチボールを始める余裕がありましたから。




1番バッターである平柳君の打球がこっちに向かってグイーンと上がって来ても、全く慌てることはありませんでしたわね。




「高め打ちました!!高く上がりました、これは打ち取ったか。ショート並木、サード芳川が下がって………ん?どうした!?2人が打球を見失ったか!?


……落下点、新井が突っ込んできましたー!!スライディングキャッチで押さえています!!ナイスキャッチ!!んー、内野の2人は今のフライが見えなかったか、落下点とは全然違う場所で立ち尽くしています」






「薄暮になっていますからね、真上に上がった打球がちょっと見えにくいのかもしれませんよ」



「なるほど。日がもう少しで沈みきりそうなところでしたが、ちょっと一部が白く光るような空になっています。いやー、驚きました。レフトからサングラスを掛けた新井が一気に突っ込んでキャッチしましたので、しかもフェアグラウンド。落ちていればツーベースになったところでした」




おいおい、頼むぜと。俺はため息を吐きながら祭ちゃんにボールを返した。



並木君も芳川君も揃って、ちぃーす!助かりましたぁ。という感じで首を引っ込めるようにしながらトコトコと自分のポジションに戻っていく。





カンッ!!



「ショートの左!並木が回り込んで1塁へ送球!遠投になる!いい送球がいきました!2アウトです!」




ガキッ!



「3番ヘンダーソンは詰まった打球、サードの前!芳川がチャージしまして、ランニングスロー。……アウトです!アンデルセン、ナイスピッチング!スカイスターズの初回をワン、ツー、スリー!見事な立ち上がりです!」



素晴らしいね、アンデルセンさんは本当に。



ありがとうという言葉しか出てこないよ。







こっちが無敗助っ人なら、スカイスターズは今日勝てば最多勝に並ぶエース黒西。最速158キロのストレートを武器に切れ味抜群のスライダーとのコンビネーションで奪三振の山を築くスーパー右腕だ。


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