さすがは師匠にも負けていない彼の肩ですわね。
なるほど、ナリタブラリアンがいましたかと、しかもブルペンから出てきてライトの守備に就くとかちょっとおもろいですやん。
どうせなら、20メートルくらいの距離をリリーフカーに乗ってきて欲しかったですわ。
ともかく、桃ちゃんはよくあの打球を捕った。初回の柴ちゃんもフェンスにぶつかりながらよく捕ったけど。
それに比べてライナー性でしたから、もうダイレクトで捕りにいくには、フェンスをケアしながらというのは難しかったからね。
ランナーは2塁にいってしまったが、抜けていれば勝ち越されて3ベースヒットになっていたような打球でしたから。
「さあ、試合が再開されます。2塁にヒットの種崎がいまして、打順はトップに返って上矢部です。規定未達ではありますが、打率3割1分、得点圏でも3割6分8と結果を残しています。初球、ストレート!高め外れました。160キロです」
「3番豊田、4番川山というところに回すと非常に怖いですからねえ」
「ビクトリーズとして、ランナーを貯めて中軸というのは迎えたくないところです。2球目、外に構える。………打ちました!ファーストの横!!弾いてライト前に抜けます!!打球の方向が変わる!種崎は3塁を蹴る!!」
マテルの真横を破っていった打球が若干弱まるような格好でライト前へ。3塁コーチおじさんの腕がぐるんぐるんと回り、2塁ランナーが迷わずホームに向かう。
若干方向を変えた打球に合わせるようにして、ブライアンは前進し、右足を少し前にしてグラブにボールを収めると、素早い握り替えで、右腕を振り抜いた。
まさに糸を引くようなボールの軌道。真っ直ぐに放たれたボールがグイーンときれいに伸びるようにしながら、緑川君のミットに収まる。
ホームベースの少し前に立った彼が、タッチを掻い潜ろうとするランナーに腕を伸ばす。
絶対に返りたいランナーと絶対に生還を許してはいけないキャッチャー。互いがギリギリのタイミングで双方がエネルギーをぶつかり合わせた。
「アウト!!」
「「うわああぁぁー!!」」
完璧スローイング。完璧タッチで本塁封殺。ビクトリーズファンが涙を流しながら立ち上がる。
「ここは代わったばかりの、ライトの山田から素晴らしいダイレクト送球!!まさにレーザービーム!!本塁を狙った俊足の種崎を刺しました!!」
「これはまた、すごい送球しましたねえ!」
「ええ!リプレイが流れます。打球は1、2塁間。ファーストのマテルも懸命に飛び付いていきましたが、ミットの先を掠めていきました。そしてランナーが3塁を蹴って、ブライアンがバックホーム!!
この送球です!低くて速い!まさにレーザービーム!!キャッチャーの緑川も上手くランナーにミットを当てました」
2アウト。
バッターランナーは本塁がクロスプレーになっている間に、2塁へ進んだからまさかとは思っていたけれど、スライダーを上手く合わされた打球がまたライトに向かって飛んでいった。
「打ちました!バットの先ですが、セカンドの上!!祭が飛び付く!!届きません!ヒットになる、上矢部は3塁を回ってきた、回ってきた!ライトブライアンからまたバックホームだ!!今度はワンバウンドで返したー!!タッチする!……アウトになりましたー!!」
なんて本当に素晴らしい肩ですの。
またライトの選手がチームを救っていますわ!
もう勝ったみたいなお祭り騒ぎ。ベンチから選手達が次々に現れて、ブライアン君に賛辞を送る。
特に投げていたエンゲラは、まるで飲み込むようにしながら、長い両腕でブライアン君を大きな体を何回もハグしていた。
8回裏。3、4、5番が簡単に打ち取られて、キッシーがマウンドに上がった。
玉地、エンゲラと並んでこちらも防御率が1点台に突入する好調ぶり。
埼玉さんも中軸から始まる攻撃。4番にセンターへ痛烈なヒットを浴びたが、後続を内野フライと得意のフォークボールで連続三振。
キッシーも珍しく激しいガッツポーズを繰り出しながらベンチへと戻っていった。
「9回裏、ビクトリーズの攻撃は、6番指名打者、朝日奈」
つまりは舞台が整った。
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