ネギダレはやはり、ハチミツは欠かせませんわよね!
試合後のヒーローインタビューでマテルは……。
「チームがずっといい状態で来ていたから、なんとか自分もいい仕事がしたいという気持ちだったね。コーチ達も自分の感覚でどんどんバッティングしていけと言ってもらえたし、どれか1つだけなんて選べないくらい4つともベストのホームランだったよ。
実は何日か前、アライサンに家族みんなで美味しいウナギをご馳走してもらったんだ。
その時に彼の娘さん達から、オリガミをプレゼントしてもらって、うちのジュニアが喜んでいたよ。帰り際に、オリガミセットを買ってちょうだいとねだられてしまったね」
と、上機嫌でオフトークを披露してくれた。
マテルはこの試合の4打席連発で、月間のホームラン数も16に伸びた。ビクトリーズの選手としては、2018年に、シェパードが記録した月間11本を大きく上回る球団記録。
リーグホームラン王争いでは、トップを行く日本代表の豊田、川山(共に埼玉)の35本、ワイズマン(横浜)、平柳の31本に次ぐ4位タイに浮上。
チームのシーズン本塁打記録は、2019年にアチェンホが記録した30本。これにあと1本に迫り、残り3試合での記録更新にも期待がかかる。
「パパ、すごいね!ビクトリーズ、どうしちゃったの!?」
仙台から冷凍牛タンを抱えながら帰ると、双子ちゃんと1匹の熱烈な歓迎。
特に、いつもゲームばっかりしてて素っ気ない感じのもみじちゃんがぴょんこぴょんこと飛びはねながら大興奮。
2週間前まではせっかく首位に上り詰めた時もあったのに、勝負どころで連敗して、一気に5位転落でお通夜状態でしたから。
それが残り10試合となったところで、突然の集団覚醒。上位陣をバッタバッタと切り捨てて、気付いたら3位以上確定の首位まで1ゲーム差ですから。
来年小学校に上がる年齢のお子様でも、ゲームなんてやってる場合じゃない。
ヤバい状況だってことに気付く。
そんなもみじの様子に感化されて、パッパの背番号4が入ったジュニアサイズのユニフォーム着たかえでも、メガホンを振り回して踊り狂っている。
「ねえ、おとう!ゆうしょう、いけるよね!?」
「あと3試合全部勝ったらいけるね」
「ぜんぶかてる!?」
「マテルがあと3本くらいホームラン打って、埼玉との2連戦の初戦で思田がナイスピッチングすればいけるよ」
そう答えているわたくしも、牛タンの箱を持つ手を震わせている。
そんな情けない姿をもみじに見られ、察せられてしまった。
そのもみじが俺の顔を見上げた。
「パパは自分に出来ることをやればいいんだよ。もう昔のビクトリーズじゃない。スターになれる若者がたくさんいるんだから。パパはその子達が1番輝けるようにフォローしてあげればいいんだよ」
もみじちゃま。あなた、一体いくつですの?
「時くん。牛タンお預かりするから、3人でお風呂入って来ちゃってー」
「やったー!おとう、早くいこー!」
「パパとお風呂ー!!ヒューヒュー!」
「皆様、お待たせ致しました。ビクトリーズスタジアムです。本日は3位の北関東ビクトリーズ対同率首位埼玉ブルーライトレオンズのゲーム、解説はお馴染み大原さんでございます」
「よろしくお願いします。いい天気になりましたね」
「1位と3位の対決、その2連戦の初戦ということになります。現状、ゲーム差が1でありまして、ビクトリーズがこの2連戦で埼玉の上にいくためには、2連勝しかありません。1勝1引き分けでは勝率は並びますが順位表ではビクトリーズが下になってしまいます」
「というわけなんでねえ。ビクトリーズが優勝するためには、もう3連勝しかない。つまりは10連勝を決めるしかないわけですけど、2週間前の状況を考えると、自分達の力で優勝を勝ち獲れるところにいるわけですから、もうやるしかありませんねえ」
「そうですね。そのビクトリーズは、思田。現在12勝。チームで最も勝ちを重ねている先発、その左腕が真新しいボールをもらって、マウンドに上がっていきました」
なんかもう今日は朝からそわそわでしたね。昨日の夜、冷蔵庫でじっくり解凍した美味しい牛タンにネギだれをたっぷり付けて食べた時まででしたよ、楽しかったのは。
試合のこと考えるのは、クラブハウスに行ってからにしようと頭では分かっているのだけれどもね。
なかなか寝付けず。
隣で寝ているみのりんや双子ちゃん。お犬やお猫様達にもバレてしまって、なんやかんやと励まされているうちに、1番最初に寝てしまっていたらしいですわね。
レフトにいるだけの奴ですら、そんな感じですから、マウンドに上がった4年目のピッチャーはもっと普通じゃない。
1番バッターに対して、ストライクが1球も入らずに、ストレートでストレートのフォアボール。
4球投げたところで、早くもギッシギシのビクトリーズファンからの頑張れ拍手をもらうことになった。
2番、源。そのバッターへの2球目に外目のところでようやくストレートが入り、1ー1からのスライダーを打たせた。
「1、2塁間!深い打球!!祭が足から滑り込んで上手く押えた!!2塁へ送球してアウト!1塁へは投げられません!!これはセカンド祭ナイスプレー!!思田を救います!!」
セカンドの見せ場、広くなってしまう1、2塁間に走り、送球を計算に入れた入り方をして、足から滑りつつ、反転しながら2塁へ。
安全に1塁へ投げるのではなく、2塁を間一髪でアウトにする攻めた守備。
それがすぐに身を結ぶ。
「打ちました!!ショート正面だ!!6、4………3と渡りましたダブルプレー!!思田、先頭バッターにフォアボールを許しましたが、結果3人で切り抜けています!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます