もうこうなったら何でもアリですわね!

「2アウト、1、2塁。バッターは4番の芳川です。打ちました!!三遊間、破っていきました!!新井はどうするか!?止まりました、止めました!!………満塁です!!満塁でマテルを迎えます」



4ー4、8回表、1アウト満塁。バッター3打席連続ホームラン中のマテル。



相手に逃げ場なし。



まだ8回ではあるが、この場面になって、レッドイーグルスは、今シーズンここまでリーグ2位の30S。まだ負けの付いていないクローザーをマウンドに挙げてきた。



フォークボールを得意とする日本人右腕。ピッチングコーチ、キャッチャーの日形と念入り打ち合わせをして投球練習を開始した。




「8回、マウンドにはクローザーの松口が上がりました。レッドイーグルスにとって、これ以上のピッチャーはいません。……初球。フォークボール!!……バットは止まりました、1ボールです。フォークボールから入って参りました」



俺は勝ち越しのランナーである。3塁ランナーとして、セットポジションに入ったピッチャーの動作に合わせて、いつでもホームを狙っているぜ!というプレッシャーを与えようとする。



初球はワンバウンドしたフォークボールにマテルがなんとかバットを止め、2球目はアウトロー。これは際どいコースになったが、長身のマテルに対して低いと判定され、2ボールとなった。



3球目、また真っ直ぐだったが、今度はアウトコースの高めに外れた。


ゾーン的に高いボールを狙っていたのか、またハーフスイングになりながら、マテルはバットから片手を離すようにして、ノースイングをアピールした。




「鋼平さん、3ボールになりました」



「ここは3ボールでも、外国人バッターは速いボールに合わせて振ってきてもおかしくない場面ですよ。きついですけど、とにかくもう自分を信じて、腕を振って低めですね」



「満塁、カウント3ボール。もう後がありません。ピッチャー松口。………変化球だ!……打ち返した!!センターだ!センター後方!!センター下がる、センター下がる!!


入りましたー!!マテル、バックスクリーンへ満塁ホームランになりました!!4打席、4打席連続ホームランです!!」



ビクトリーズファンの歓喜と希望というよりも、レッドイーグルスファンの悲哀と絶望。



真ん中低めのスライダーだと思うんだけど、マテルはそれを今までのホームランの中で1番のタイミングで合わせて、センターの選手がフェンスに到着するより早く、レッドイーグルスファンの悲鳴の中、バックスクリーンの中で打球が跳ねていった。



シーンと静まり返る中、4打席連続という記録を打ち立てたマテルの強烈過ぎる一撃が、去年3位からのリーグ制覇を狙ったチームのシーズンを終わらせることとなった。




マテル4打席連発弾で、ビクトリーズ7連勝で貯金4!!



同率首位の埼玉、東京に1ゲーム差の肉薄キター!!



北関東ビクトリーズは、今シーズン最後となるビジターの仙台2連戦に連勝した。



一昨日のゲームは、新戦力のアンデルセンが最速150キロのファストボールに、カットボールやシンカーを織り交ぜて6回を零封する安定感抜群のピッチングで無傷の7勝目を挙げた。



そして昨日はなんといっても主砲のマテル。



2点を先行された2回の第1打席。2ナッシングと追い込まれたところで、高めのストレートを強振。打球はレフトスタンド中段に届くホームランを放った。



リードを3点に広げられた4回には死球で出塁した新井を1塁に置いて、アウトコースの変化球を一閃。



打球は右中間スタンドに飛び込む、2打席連発となる27号2ランホームランを打ち込むと、続く第3打席でも、レフトポール際へ3連発となる28号ホームランを放った。



そして、極めつけは8回。1死から新井がヒットを放つと、祭は四球を選び、4番芳川は軽打でレフト前へ運び、満塁のチャンスを作る。


代わった松口の変化球を3ボールというカウントから迷いなく振り抜いた当たりは、4打席連続、勝利を呼び込む29号のグランドスラムとなった。








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