マジすげーですわ!

この1点でとりあえず落ち着いてくれるかなと思っていたが………。




カシィ!!



「ライトだ!!打球は伸びている!!日形の打球!!どうだ!?………入りました、入りました!ホームランです!なんと、9番キャッチャーの日形にホームランか飛び出しました!第2号です!」



ノッチの構えはインコース低め。しかし、ボールはアウトコース高め。上手く打ち返された打球はライトスタンドの競り出したウイングシートへ。



ライトの桃ちゃんがフェンスによじ登り、腕を伸ばしたが惜しくも届かず。



かなり痛い2ランで1ー4とリードを広げられてしまった。




そして、珍しく怒った様子の阿久津監督。完全に般若の顔をしながら球審に交代を告げた。



3年ぶりの2桁勝利にリーチを掛けながら、思うようなピッチングが出来ず。2回途中、2アウトからホームランを打たれたところでマウンドを降りることになった。



「鋼平さん、ビクトリーズはこのタイミングで連城を諦めましたね」



「ええ。ビクトリーズも連勝しているとはいえ、1つも落とせないのはイーグルスと変わりませんからね。背負っている番号も含めて、今日の試合の先発を任された意味というのがあると思いますから。


初回に2失点して、ホームランで反撃してもらった直後に、9番バッターにホームランですから。もちろん、日形がいいバッティングしましたけど、監督からのメッセージというものあるでしょうね」




「なるほど。球団初の優勝を目指すビクトリーズ。阿久津監督の厳しい采配が見えるところとなりました。投球練習が終わりまして、マウンドには2番手の津久井です。初球、打ち上げました!セカンドの祭が落下点、フライを掴みまして、3アウトチェンジです」




2番手、昨日32歳になった津久井が初球のど真ん中を打ち損じてもらって3アウト。



悔しい。もちろん悔しいが。自分の後にマウンドに上がってすぐアウトを奪った津久井に、連城君は拍手をしながら出迎えてタッチを交わした。



そしてその津久井も、そういうこともあるさと、慰めるように彼のおケツをベンチに入っていきながら、ポンポンと優しく叩いた。




3回は共に0。回跨ぎとなった津久井が作った流れの中、4回表の攻撃はわたくしから。



1ボールからの2球目。変化球の抜け球が俺のおケツに直撃した。




「「あーっ!!?」」



両チームのファンから、同じような悲鳴にも聞こえる謎のあー。



俺がボールの当たった左おケツを撫でるようにしながら、細かく腿上げをするような格好で痛みを和らげようする姿に、スタンドからの拍手と笑い声が混じる。



「痛い。当たった方はもちろん痛いですが、当ててしまった方も痛いですね。新井と言えども先頭打者ですからね。出したくなかったですね」




少し時間が経つと、痛みも引いてきましたので、ちゃんとバックスクリーンに映してもらえるように冷却スプレーに、おケツを向ける。



しかし、映ったおケツが正面を向いていなかったので、カメラの位置を確認して、バックスクリーンを見ながら、ゆっくりおケツを正面まで持ってきて、これでオッケーとスプレーされながらカメラ目線で親指を立てると、1塁コーチおじさんに頭をはたかれた。



よしよし、また笑いになったぞと、手応えを掴みながら1塁に立つ。






カンッ!




「セカンド!ライナーだ!!捕って、1塁へ!!セーフ、セーフです。新井がなんとか頭から戻りました」




祭ちゃんは低めのストレートを完璧に捉えたがセカンド正面の痛烈なライナー。



危ないわよ。そんだけいい当たりされたら飛び出しちゃうっての。






ガキッ!!




「セカンドの右!小フライだ!追いつい……いやっ、落としっ!あっ!?戻りました!!1塁セーフです!!この辺りの距離感、反応、確かなものがあります、4割打者。結果セカンドフライで2アウトランナー1塁です」




あぶねーですわよ。



芳川君のバットが折れて、力のない打球がフラッと上がって1、2塁間の真ん中へ。セカンドの選手が腕をいっぱいに伸ばしながらキャッチしたかと思ったら、それがグラブの先からこぼれた。



と思ってスタートを切ったら、2段ジャンプの要領で、見事な運動能力を見せて、地面に落ちかけていた打球を掴み取った。



それを見た俺は2塁へ走り出した体を反転させるようにしてリターンさせ、また1塁ベースへと飛び込むのであった。



また胸に付いた土を払いながら、ふーっと息を吐きつつ立ち上がる。



3番、4番のおふたり。こっちはおケツボールで出塁しているんですから、あんまり無理をさせないで欲しいですわよ。






「2アウトランナー1塁で、バッターはマテル。今、ビクトリーズ。いや、東日本リーグのバッターで1番怖い存在かもしれません。少し大げさですが、芯で捉えればホームランになるような状態です」



「本当にそうですよね。ですから、バッテリーの攻め方としましては、ベルトより高いゾーンというのは絶対に禁物で、低めのボールになる変化球を打たせたりして、なんとか打球が上がらないようにしたいですよね」




「ええ。日形は外に構えます。スライダー!バットが出かかりましたが、止まりました。初球はボール外のスライダー。………もう1球外に構えます。


………真っ直ぐだ。………打った!!右中間だ!!打球は上がっている!!深めに守っていたセンター、ライトがさらに下がる!向こう向きだ!…………入りました!!


またまたマテルに、ホームランが飛び出しました!!2打席連続!!27号、2ランホームランで1点差です!!」






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