基本は1つ5000円と聞いていますわ。
初回にスクイズしているわけですから、当然、よもや?まさか?と、なるわけですよ。
1、3塁になった瞬間にピッチングコーチが通訳と一緒にマウンドに上がって時間を取りながらいろいろと確認をし、1塁と3塁に1回ずつ牽制をして、ようやく初球。
その初球を………。
カアァンッ!!
「高め引っ張ったー!!レフトへ、飛距離は十分だー!!しかし切れていくー!ファウル!ファウルボールです!!」
大きい小さいはそれぞれですけど。
東北サイドさんは、全員のきんのたまが縮み上がるような一瞬。
祭ちゃんの打球は左に切れながら、3塁側のファウルスタンドのいっちゃん高いところに着弾した。
ストレートを完璧に芯に当てて引っ張っていきましたから。
2球目は外に逃げるチェンジアップが外れ、3球目は同じく外のこれまであまり投げていないスライダー系だった。
祭ちゃんがまたしてもそんなボールに飛び付いた。しかし、初回ほどではない。右バッターの外角低めに逃げるボールですから。
1塁側にちょっとプッシュするような形でボールを転がす。ファーストが前進して、グラブトスを試みようとしたが、その瞬間には並木君が回り込みながらのスライディングを決めようとしていた。
仙台に集まったビクトリーズファンの大拍手の中、ボールはゆっくりと1塁へ送られた。
「ビクトリーズ、2点目もまた3番祭のスクイズでした!」
「ん~。スクイズやって来ましたね。結果的に初回と同じ3球目だったんですが、あの大ファウルボールがありましたからね。どちらかと言えば、そちらにバッテリーの意識がいきましたかね」
「なるほど。2アウト、ランナー2塁でバッターは4番の芳川です」
祭ちゃんがバットを受け取りながら、ニコニコでベンチに戻っていっているようだ。
ホームインした並木君とベンチの真ん中で何か言葉を交わしながら飲み物を取りにいっている。
パァンッ!!
何かが破裂したようなそんな打球音だった。
さっき祭ちゃんがスクイズの前に放ったようなレフトへの大飛球。
今度はそれよりも少し右。ポールの右か左か。はたまた上か。走ることも戻ることもせず、俺はただ切れるなと左から右に向かって何回も腕を振った。
巻いた。
ポールを巻いた打球がレフトスタンドと3塁側のスタンドのスッポリ空いたエリアに打球が消えていったのだ。
「ホームラン!ホームランです!芳川の打球は、ポール際!!追加点となる2ランホームランになりました!アルバレス、マウンド上でガックリ。膝に手を着きます。東北レッドイーグルスにとっては、あまりにも痛いこの回3失点となってしまいました!」
怒涛の6連勝を目指して。アンデルセンを援護するには十分過ぎる得点となった。
4ー0となり、さらに必死になって打ちにくる、レッドイーグルス打線に対して、カットボールとシンカーを巧みに投げ分ける。
セカンド2つにセンターフライ。ここで1点でも返せればと、微かな希望があった攻撃を僅か8球。3分足らずで簡単に終わらせてしまった。
向こうは守備力無視の代打攻勢を仕掛けてきた次の7回もあっさり3者凡退で投げきり。
アンデルセンは、7回を83球。被安打3、無四球、5奪三振、無失点と、最終戦に十分余力を残すピッチングを披露し、次のピッチャーにマウンドを譲ったのだった。
4点リードだけど、ビクトリーズは最近、先発が頑張っているし、カード毎に1日移動日が入って、日程にも余裕がありますから今日は勝ちパターン。
8回はエンゲラがマウンドに上がり、2アウトからフォアボールを与え、左バッターを迎えたところで、左の玉地にスイッチし、確実に仕留める徹底ぶり。
9回はクローザーのキッシーがランナーを2人出しながらも、0に抑えて、なんとビクトリーズは借金4からの6連勝。貯金を2として、とりあえずは4位以上が確定した形となった。
そして翌日。残り4試合。東北さんとは今シーズンラストゲーム。
背番号18。
満を持して連城君がマウンドに上がったのだが…………。
カンッ!
「いい当たりだ!!これもヒットになります!2塁ランナーの茂手木が3塁を回ってくる!レフト新井がバックホームされますが、間に合いません、ホームイン!レッドイーグルス、もう1点追加しました!!2ー0!リードを広げます」
今日負けると、Aクラス入りの可能性が無くなる東北は昨日とはまた気持ちの入り方が違った。
立ち上がりに不安のある連城君ですから、慎重にいこうとしたところでファーストストライクから積極的に狙われて初回にいきなり2失点してしまった。
ビシュッ!
ズバァン!!
「最後はストレートでした!152キロ!アウトコース手が出ません!!1アウトです!」
向こうも先発はエースナンバー。10勝しながら10敗してしまっている悩めるエースが今日は初回からフルスロットル。
俺以外の1、3、4番から三振を奪い、好調マテルに対しても2球であっという間に追い込んだ後だった。
シュドッ!!
「高め、叩いたー!!レフト後方!!追っていませんー!!入りましたー!!マテルに1発!今シーズン、第26号!!なんと今月、13本目のホームランとなりました!」
真ん中高め。顔の高さに近いくらいだったんですが、振り抜いた打球は理想的な角度と打球スピードで上がっていき、レフトスタンドの中段に飛び込んでいった。
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