チームタコヤキの最弱は、わたくしです。

試合は6回裏、ビクトリーズの攻撃。




バッターは柴ちゃん。これ見よがしに叩きつけた打球が三遊間に転がり、内野安打。




そして宣言通りに、スタートを切った。




「柴崎スタート!!2塁送球!タッチはセーフです!!3球牽制があった後でしたが、盗塁を決めました、柴崎。今シーズン、20個目!!」



「いいスタート切りましたねえ。これはちょっとバッテリーとして上手くやられましたね。流石の足ですよ」



ベイエトワールズは、先週2軍から上がってきたばかりの若い控え捕手。



正捕手が退場、2番手が怪我で離脱中。どちらも強肩が売りの選手でしたから、柴ちゃんにとっては多少の牽制球など気にならないくらいの自信があった。



決して悪い送球ではなかったが楽々成功で得点圏。そして桃ちゃんの打球も叩きつけ系。また内野手のいないところに高く跳ね、1塁を駆け抜ける。



1、3塁となり、2球目で桃ちゃんも2塁へ盗塁を決めた。今シーズン8個目。2、3塁となってノッチ。



決死のFPSスクイズ敢行で1点をもぎ取った流れになった。




リードを広げ、連城君が7回もベイエトワールズ打線を退けて120球の熱投。



ビクトリーズはマテルのダメ押し2ランが飛び出し、この試合を完勝した。



しかし2戦目は退場となった高下が怒りの3安打3打点の大活躍で、2ー3とリードを許し、さらにノーアウト満塁という大ピンチを迎えてしまった。





「ビクトリーズ、ピッチャーの交代をお知らせします。薄井に代わりまして、酒屋。ピッチャーは、酒屋」



左が続くところで呼ばれたのは、酒屋さんの長男坊。ポニテちゃん引ったくられ未遂事件(前編)に登場し、原付バイクで逃げようとした犯人にボールを当てて捕まえたサウスポー。



レフトで見守る俺も、自然と力が入ってしまう。



「ビクトリーズは酒屋にスイッチしました。左のアンダースローという非常に珍しいピッチャー。プロ4年目。今シーズンはこれが15試合目のマウンドです。防御率は4点台ちょうど。ここまでは左のワンポイントという起用が多かった酒屋です」



「コントロールは非常にいいピッチャーですからね。ここはノーアウト満塁ですから、1点は仕方ないという考え方でいいですねえ。まずはアウト1つをバッテリーがどうやって取っていくかということでしょうね」



「なるほど。さあ、酒屋。サインに頷きまして、セットポジション。初球です。………打ち上げた!!これはファースト!マテルがファウルグラウンドで捕りました、1アウト。1球で1アウト。ここは内野フライを打ち上げさせました」



「外の高めの真っ直ぐでしたねえ。狙ったところではありませんでしたが、アンダースロー特有の軌道がバッターの感覚を上回りましたねえ」




「これは大きい。1アウト満塁となりまして、ベイエトワールズは代打のラビングが起用されます。この人も怪我での離脱から戻って参りました。今シーズンは、100試合の出場で、21本のホームランを放っています」



「どこかで1球はインコースなり高めなりで速いボールを見せていきたいところですから、それが何球目になるのか、そこでストライクが取れるのかがポイントですよ」



「なるほど。初球です。北野は内側に構えます。………膝元!シンカー、ボール球でした。ラビングは反応しかけたところで、バットを止めています」




いきなりインコースに構えたから、思いきって初球真っ直ぐかと思ったけど、引っかけさせようとしたシンカーだった。



そして2球目もまたノッチはインコースに構える。今度はそこに速いボール。ベルトのゾーンから胸元へ132キロ。浮き上がる軌道に、強振したラビングのバットは空を切った。



投げた瞬間は打ち頃のストレートに見えるんすよね。インコース寄りの。引っ張るにはこれ以上ないホームランボール。



それがやや内側にスライドしながら予想以上にボール伸び上がってくる。



ここで1つストライクを取ると、今度は低め。インハイの残像がしっかり残っている中でインローのチェンジアップ。



代打で出てきた助っ人は、前に体を突っ込ませるような形になりながらバットに当てた。




打球はほぼ真上に上がった。



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