やはり野球も、審判との戦いである。

という余計な考えが若干バットの出を悪くしてしまい、その後追い込まれていたわりには甘いところにきた2球の速いボールを捉えきれずにファウルボール。



落ちるボールを1つ見極め、またストレートをファウル。今度は外に逃げるスライダーにバットを止めて、またストレート引っ張ってファウルにした。これは、まあまあいい当たり。



2ボール2ストライク。ちょっとずつ合わせてこられて最後はストレートを引っ張られてバッテリーはちょっと困った。



困った時はアウトローという言葉がありますからね。ある程度は予測がついたが、球種はこの試合でまだ使っていなかったカーブだった。



ピッチャーの手から離れたボールが一瞬浮き上がったところからクンと来る。



しかし、溜まったね。球界1のカーブと眼鏡っ娘が大好きマンですから、カーブと眼鏡っ娘はいつ来てもいいように準備しているからね。



みんなだってどんな寝起きでも、アチアチのステーキを400グラムくらいなら、ペロリと食べられるでしょ?



それと一緒。



カーブはどんな時に来ても体が反応する。準備が整う。



「打ちました。右方向です!あらかじめ前進していたライトが突っ込んできますが、捕れません、捕れません!!ボールを弾いていますが、新井は回ったところで1塁に戻ります!!記録はヒット。チーム初ヒットです」





「新井はやはりいいヒットを打ちますね。ストレートと比べると、かなり球速差があるカーブでしたけど、それを右方向に運んだということに意味がありますよ」



「なるほど。外の緩いボールを引っ張るのではなく、右方向に持っていったということですね」



「新井のいいところというのはタイミングの取り方なんですよ。今のも足を上げたところと地面に着いたところの2ヶ所でタメを作れているんですよね。


ですから、緩いボールを投げられてもタイミングを外されるケースが少ないですよね。彼だけ2つの見極めるポイントがあるわけですから、他の選手の倍タイミングの幅があるようなイメージですよ」



「なるほど。新井がこの打席でいよいよ規定打席に到達する1打にもなりました。バッターボックスは祭です。こちらも、打撃は好調。打率3割0分6厘、18本塁打。打点も90を数えています」



今日の球審はストライクゾーンが広いなあとか逆に渋いなあという時って、この試合はずっとそれなりにゾーンが安定していればいいんだけど、急に状況で変わったりするから、それはそれでやっかいなんですわよね。



ランナーがいる時といない時。特に得点圏にいった瞬間に、急にストライクゾーンが変わることがある。




今はランナー1塁だが、その兆候。2ボール1ストライクからの4球目。右バッターの祭ちゃんのアウトローに、ストレートがビシッ!


意気揚々と捕球したキャッチャーが右手にボールを持ち替えた瞬間に、ストライクコールがなかったから、そのまま固まってしまった。



いいコースだから、バットが出て来なかった様子の祭ちゃんも……あ、今のボールなんだ。と、ちょっと儲けたような顔をした。



2ボール2ストライクになるか、3ボールになるかは、全然違いますからね。



5球目の変化球が低めに決まってフルカウントにはなったが、お祭マンにあんまり焦りはなかった。次の真っ直ぐが高めに浮いたのをしっかりと見てフォアボールを選んだ。



4番の芳川君は高めのボールをむりぐり打ち返していったが、若干詰まり気味。打球は右中間の微妙なところに上がったが、センターの捕球体勢がこれまた微妙でしたので、俺は2塁からタッチアップ。



いいボールが返ってくればアウトになったかもしれないタイミングだったが、送球がベースから1メートル逸れた。その間に、祭ちゃんも2塁へと進んだ。



突然とも言える球審のゾーン可変に伴う、若干の計算違いによる不利益案件がまたも発生したのだった。





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