どうも、インセクター新井です。ムッシッシッシッ。

特にバッターボックス付近が凄い。



これからピッチャーが投げてくるボールを見極めなければいけないというのに、目の前をぶんすかぶんすか飛ばれてしまっては気が散ってしまう。



1回表、並木君が先頭バッターで入った時点で、初球をファウルした段階から、顔に寄ってくるお虫を手で払い退けるような仕草をみんな目にしていた。



表裏の攻撃の度に、誰かしら1人はちょっと打席を外して虫を追い払ったり、バットを振り回して寄って来ないようにしたりと、そんな状況が続いていたのだ。



だからバッターに集中力がなくなってしまうのか、両チームともなかなかヒットが出ず、試合は4回表に来ていた。



今からバットを構えようとしていた並木君がまるでビーンボールを投げられたかのように、虫を避けたりしている間にボテボテのセカンドゴロで1アウトになっていた。



そして打席には俺。前の打席では大丈夫だったのだが。




ぶーん………ぶーん………。



この打席ではお虫様が俺の顔目掛けてやってきたので………。















ぱくん!







そのお虫様を食べてやったのだ。




食べれるか、食べれないかで分けたら当然食べれるわけですからね。あんまり食べようとしないだけで。



3塁側のカメラをちゃんと意識しながらモグモグ。


ごっくんとした後に、俺はウインクしながらぐっと親指を立てたのだ。




あっ、結構いけるやん!




6年前のプレミアム12の大会で、初めて台湾にいった際。最後の夜に、賑わっている屋台街に繰り出した時のように。



よう分からんお魚のフライがあってね。アジフライのような形をしていて、1枚60円ぐらいで売っていたやつを食べた時のようなリアクションでしたね。



おっ、普通に美味いやん!中にとろけたチーズも入っているし!



そんなことを思い出しながら、足元をならす隠れ首位打者であった。






「1アウトランナーなしで、新井がバッターボックスですが………今、虫を食べましたね」



「4割打者ともなると、虫も食べるんですね。びっくりしますよ」



「虫を食べたのを見て、スタンドのお客様達がざわめくというのも、初めて見ましたが……その新井が打ちました!!きれいな流し打ち!ライトの右に落ちます!!


両チーム通じて初めてのヒットが出ました!新井の右打ちです!新井はこれが今シーズン100本目のヒットになります!」



「狙い済ましたようなバッティングでしたね。レオンズも、右打ち警戒のシフトを敷いていましたが、関係なく鋭い打球で破っていきましたからね。本当に見事ですよ」




まるで打球に羽が生えたようにきれいに飛んでいきましたわね。



インセクトパワーってやつですわ。




まあ、点にはなりませんでしたが。





「試合は0ー0のまま、グラウンド整備が入りまして、6回表ビクトリーズの攻撃から始まります。バッターは9番の北野から。今日は連城が先発ということで、マスクを被っている形ですが、打率は1割7分6厘。現状15打席でヒットが打てていない北野です」



「打率が2割に乗っていた時期もあったんですが、ちょっとまたトンネルに入ってしまいましたね。もう少し短く持った方がいいよいな気がしますけど」



「ええ。キャッチャーのポジションを争う緑川は、打率2割5分でホームランも現時点で5本放っていますし、盗塁も8つ決めているという選手です。


阿久津監督としても、2人を併用する形を開幕から続けてはいますが、北野として守備の部分だけではなくて、バットでもアピールしていきたいというところでしょうか。


……初球です。バットが折れました!打球は1塁ベンチ前に落ちましてファウルボールです」




ノッチのバットがバキッといった瞬間、彼が予備としてベンチに置いてあるバットを持ってグラウンドに出た。



ノッチは大きなバットの破片を拾いながらネクストの輪っかまでやって来た。



「新井さん、ありがとうございます」



「いや、なあに。それより、今日の試合前くらいに、俺たちがやってるFPSの新作の発売日が決まったらしいね」



「俺も確認しました。12月の末っすよね!」



「そーそー、結構スピード感あるみたいだから、君の得意なバランスになるかもね。後、バットを少し短く持ってみたら?……ほんじゃ!」



「え?あ、はい」





「新井から受け取ったバットを持って、北野はバッターボックスに戻ります。……北関東ビクトリーズ、ゲーム部の2人という関係性であります」



「ゲーム部?そういうのがあるんですか?」



「そうみたいですよ。新井と北野は度々エンジョイステーションのオンラインゲームで戦場を駆け回っている仲でして。北野がユアチューブなどで、2人がお喋りしながらの生配信をやっていまして、なかなか人気があるみたいですねえ」



「なるほど。私は全然ゲームとかは、現役時代からもやりませんでしたが、今はそういうやり方もあるんですね」



カンッ!!



「その北野が打っていきました!ナイスバッティングです!レフト前、低い打球が抜けていきました!!ノーアウトのランナーが出ます!」




ナイス、ナイス。変えたバットでインコースに上手く反応してクリーンヒットを放ったノッチ。



並木君のセーフティ気味なバントで2塁へ進んでわたくしの出番となった。




カンッ!!



「1、2塁間!セカンドの横だ!!飛び付く!!抜けました!!2塁ランナーの北野は、3塁を………回ったところでストップ!!1、3塁!新井は今日2本目のヒット!またしてもライトに持っていきましたっ!!」




「虫、補食パワーすごいですね!見事な狙い打ちです!」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る