ただの素晴らし助っ人でしたわ。
初回は3者三振だったが、2回からはコーナーでボールを動かして凡打を築く得意の省エネピッチング。
2回、3回を10球ずつで終わらせ、いいリズムをチームにもたらした。
ビクトリーズの得点は4回。
わたくし、お祭りちゃんと、無様に連続三振を喫した直後。4番芳川君。
「打った!!左中間、大きな当たりになっている!センター本上、レフト佐藤が下がる!!入るか!?……フェンス!フェンスダイレクトです!!打った芳川はゆっくり2塁に到達しました、ツーベース!2アウトから4番芳川の長打です」
高めのストレートを叩いて左中間。あと少し。フェンスオーバーまであと2メートルでというところまで飛ばした惜し過ぎる当たり。
その直後、5番のマテルが放った会心の打球がそんなモヤモヤを一瞬で忘れさせた。
カッキイィィ!!
「打った!いい当たり、これも左中間だ!!大きな打球になっている!!レフトセンターは追っていません!!入りましたっ!!マテル、5番マテルに、先制の11号2ランホームランです!!」
打った体勢からバットの先を地面に下ろすようにして、打球を見上げながらゆっくりと1塁に歩き出す。かっちょいい確信歩きを決めたマテルがベンチのメンバーに迎えられ、最後はキャッチボールをしていたアルデンセンの元へ。
閉じたグラブを向けたアルデンセンが……。
「ナイス、パーフェクトスイング!」
と言って、マテルが………。
「なんちゃらほんにゃら」
と言っていた。
もうただただ、わたくしの英語力がないのでほとんど聞き取れなかっただけでございますわ。
しかし、アンデルセンが白い歯を光らせながらニヤッとしていたから余計に、何を言っていたのか気になってしまった。
仕方ないので通訳さんに聞いてみる。
「ああ。今のはね、今日の調子なら2点もいらないよな?1点返してくるぜ。って言ってたんだよ」
なるほど!だいぶ調子に乗ってますわね!!
そんなマテルのバットが生み出した2点というのが、スカイスターズ打線に重たくのし掛かったようだ。
一昨日、昨日と打線が活気づいていたのは、1番の平柳君が出て、佐藤さんが繋ぎ、3番のキューバマンと小さき4番、吉原君が返すという理想的な流れが出来ていたから。
しかし今日は、その平柳君、佐藤さんという1、2番をしっかり抑えている。コースにツーシームとカットボールを投げ分け、時たまチェンジアップやカーブでアクセントをつける。
下位打線にヒットを許す場面はあったが、それは初球、2球目くらいに緩い変化球でカウントを取りにいったところを上手く打たれただけであるため、ダメージは少ない。
ちゃっかり牽制アウトにしたりという場面もあったし。
結果、7回を投げて85球。被安打4、無四死球、5奪三振、無失点。
ほぼ完璧なピッチングでスコアボードに0を並べた。
ベンチに戻ったアンデルセンに、ピッチングコーチが労うよう声を掛け、交代を伝えながらグータッチ。その後、阿久津監督もわざわざ直接話をしに行った。
恐らくは、まだ球数も少ないし、完封ペースではあるが、来週、再来週も連戦が続くきますからね。
またこういうクオリティのピッチングを続けて欲しいという首脳陣の考えを阿久津監督自ら伝えにいったというそんなところでしょうかね。
シーズン途中の加入でも、完封や完投がいくつあるかでインセンティブがあるかもしれませんけれども、アンデルセン自身は………。
オーケー、オーケー。ボスの言いたいこと分かるよと、納得している顔つきをしながら、利き手ではない方でグータッチ。
荷物を一通りまとめて、通訳と一緒にベンチ裏へと下がっていった。
終盤、桃ちゃんのタイムリー内野安打でさらに1点を加えたビクトリーズは、8回をエンゲラ、9回キッシーという磐石の継投で試合を締め連敗ストップ。なんとか、首位を追いかけられる順位をキープする形で、8月の戦いに向かうことが出来た。
その日の夜、駅から帰ろうとしていたら、広報のかすみちゃんが俺のところへやって来て……。
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