実況！４割打者の新井さん８

登場！しれっとアウトになるマン！

「外れました、フォアボール！！ここは低めの変化球をよく見ました、芳川。ビクトリーズ、この回も前の回に続いて先頭バッターが出塁します！」

「先頭のフォアボールはちょっといただけないですね。いいところには投げ込んでいるんですが」

芳川君が歩き、５番マテルはライトフライで１アウトも６番の赤ちゃんも３ー１から変化球にバットを止めてフォアボールを獲得した。

１アウト１、２塁。バッターは桃ちゃん。先ほどはセンターへのクリーンヒット。今度はさらに鋭い打球をライト線に飛ばした。

「引っ張った！！ライト線！！フェア、フェアです！！２塁ランナーが返ってくる！１塁ランナーの赤月は………止まりました、止まりました！！１点です！桃白のタイムリーツーベース！！これで２点差！尚も１アウト２、３塁。全く分からなくなりました！」

そして柴ちゃん。

ビシュッ！！

ブンッ！！

バシィ！！

「くそおっ！！」

「空振り三振！！最後は高めのストレートにバットが出てしまいました！」

「変化球を続けた後に、ここはいいところに投げましたねえ！！」

どうして前に飛ばせねえんだと、柴ちゃんは自分を叱責するようにしてベンチに戻る。そしてそんな彼の背中を、俺はなだめるようにして優しく撫でた。

ドゴオッ！！

「デッドボール！！」

ア、アイボー！！

貴重なゲーム仲間であるノッチの体に、ピッチャーが投じた渾身のボールが直撃するも、あんまり痛くない場所だったみたいでほっと一安心。そのおかげで満塁となり………。

ボール！

ボール！

ストライク！

ボール！

ボール！！

最後はインコースのボールにハーフスイングになりながらも、並木君はなんとかフォアボールをもぎ取った。押し出し。これで１点差。

ピッチャー交代。

右のサイドハンドが出てきたのだが、その初球。

「あーっと！！ワンバウンド、キャッチャーが捕れませーん！！サードランナーが返ってきます！！同点！ビクトリーズ、ワイルドピッチという形で同点に追い付きました！！」

初球厳しく、厳しくね！という気持ちが出すぎたのか、コースを狙った変化球がワンバウンド。投球はあっという間にバックネットまで転がり、労せずして同点。そしてそのままボール先行となり、俺も半ば自動フォアボールになった。

そして満塁となって、３番祭。

カキッ！！

「いい当たり、３塁線！抜けましたっ！！」

真ん中低めを引っ張って、痛烈な打球。飛び付いたサードの左を破るヒット。サードコーチャーおじさんの腕がグルングルンと回る。

勝ち越しの２点が入ります！１塁ランナーの新井も、３塁を回った、回った！！中継からいいボールが返ってきました！これはタッチアウトになります！しかしこの回、さらに祭に勝ち越しのタイムリーが飛び出しまして、７ー５！繋がる打線、試合を一気にひっくり返しました！」

しかし、ビクトリーズがよかったのもこの試合だけだった。

２戦目、３戦目も、碧山君、千林君という先発２人が立て続けに打たれてしまった。

好調な横浜打線に先制され、追加点を挙げられ、ちょっと反撃した後に、とどめの一撃を食らわされて敗北。結果、最下位横浜とは３連戦で負け越してしまったのだ。

金曜日からは、場所を移して水道橋ドーム。ここでは、俺がまだ規定打席未達の中、打率３割５分越えと絶好調な平柳君が猛威を振るったのだ。

１番に入った平柳君は、うちの先発小野里君の初球を強振。いきなり右中間を真っ二つにするツーベースを放つと、２番の元日本代表、ベテランの佐藤さんがバントで送り、キューバ出身の助っ人がタイムリー。

３回もセンター前に打ち返し、すかさず盗塁。佐藤さんもしぶとく繋ぎ、４番吉原君の２点タイムリーに繋がった。６回は下位打線の作ったチャンスを３本目のヒットで返し、試合を決めるビッグイニングのきっかけを作った。

２戦目の思田君からは、３ー１からのアウトコースストレートを流し打ち。そのままレフトスタンドに飛び込む先頭打者ホームランを放った。

さらにそれだけでは終わらず、３打席目には、フルカウントからインコースの変化球を今度は右中間スタンドへ。思田君をＫＯさせる勝ち越しの３ランをかましたのだった。

その１発で、ビクトリーズは横浜戦から４連敗。今日負ければ下位の混戦に巻き込まれ、４位転落まである負けられない１戦になってしまった。

そんな中、ビクトリーズの先発マウンドに上がったのは………。

ビシュッ！！

ブンッ！

ズバァンッ！！

「空振り三振！！最近絶好調の平柳から、１５２キロのストレートで三振を奪いました！！」

ビシュッ！

ストンッ！

「佐藤も空振り三振だ！！最後は落ちるボールでした！！」

ズバアアァン！！

「インコースいっぱいストライクだ！！見逃し三振！！３番、ペレスが手が出ませんでした！！アンデルセンは初回、３者連続三振！！抜群の立ち上がりを見せています！！」

すごい。ストレートは速くても１５０キロ出るか、出ないかくらいだと言っていたのに、１５２キロとか出てるじゃん。

まるでクローザーのようなバッターをねじ伏せるピッチングで、昨日まで続いていた、今日もめっちゃ打たれるんじゃないかというビクトリーズファンの不安を消し飛ばすマウンド捌きだった。