夜の駐車場、みのりんの雄叫びがこだまする。

その帰り。



問題となったのは真っ黒なお猫様。試合中、面倒を見ていた球団スタッフも、新井さんがお連れになりますよね?



という雰囲気をひしひしと漂わせて来るもんですからね。スタジアムに乱入していたお猫様を俺がなんとかしなければならなくなったみたい。



試合が終わり、シャワーを浴びて、取材を受けて、マッサージも受けて、バスケットに入ったお猫様を車に乗っけて家に帰った。



「わ~!ネコちゃんだ!かわいい~!」



「にゃんこだ~!生きてる~!」



などと、双子ちゃんは大歓喜。



「ごめんね、みのりん。連れてきてしまいした」



「いきなり、あんなにあんな封に懐いていたからね。仕方ないね。私とラーメンみたいなもんだよ」



何の断りもなく連れてきたから、叱られるかもと思っていたが、あの様子を見ていたみのりんもだいたいを察していたようで。



一応、飼い主を探してみつつ、預かっておくか。という、きゃらめるパターンになり、小さなケージへお猫様には入ってもらって様子見という形になった。



「おとう!見て!おとうのホームランボール!!」



上がったテンションそのままに、かえでが取り出したのは、硬式の野球ボール。



オールスター仕様の刻印がされており、ピンクバットで叩いた後と、ポールに当たった時の擦れたような若干の傷がついていた。






「あれー!どうしてかえでちゃんがこのホームランボールを持ってるの!?」



「おとうが投げたやつ捕った」



かえではカバンから小さなグローブを出しながら目をさらにキラキラさせた。



「マジ?ホームインして俺がスタンドにぴょいっと投げたやつ?」



「そう?かえで、ちゃんと取れたよ?ねー、もみじちゃん」



「すごいミラクルだった」



なんという偶然。俺が打った打球がホームランになり、普通からスタンドに入るところをポールに当たり、それを友っちが俺に投げ返して、それをスタンドに投げ入れたところ、超満員の客席で、自分の娘がドンピシャのポジションにいて、それをキャッチした。



チケットは用意したが、そんな場所にいたなんて全然考えていなかった。



素晴らしい巡り合わせだ。



「パパー!もみじにはないのー?」



「あるよー。ホームランボールじゃないけど、ウイニングボールが………。はい、あげるね。サインしてあげよっか?」



「うん。してー」



「おとう、わたしも!わたしのボールも!」



「わかった、わかった。慌てんな」





「時くん。わたしには?今日、誕生日なんだけど?」



「もちろんありますわ!今日のオールスターゲームのスポンサーは、太陽食品さんでしたから、猛打賞として、高級ラーメンの食べ比べセットが段ボールに詰まって、来週にはクラブハウスに」




「しゃおらあっ!!よっしゃっしゃーい!これが私とラーメンの絆じゃい!」









お猫様が怯えて鳴いた。





ビクトリーズ、メジャーリーグ元グリーブランドのジェイク・アンデルセンを獲得!!



北関東ビクトリーズは昨日、球団公式アカウントなどを通じて新助っ人投手の獲得を発表した。



ジェイク・アンデルセン(31)は、グリーブランドに所属経験のある右腕。メジャーでは主に先発として通算70試合の登板し、10勝18敗、防御率4、96という数字を残している。今シーズンはメキシコリーグでリーグトップタイの7勝をマークしている。



ビクトリーズGMの大田原氏は、先発能力のあるタフな右ピッチャー。かねてより春に移籍したメキシコリーグでの試合を見ていた。



数年前に肘の手術をしているが、球速も出ていてメディカルチェックも問題なし。今週末には来日して、来月に2、3試合ファームで長いイニング投げさせたいとの意向。



順調に行けば、8月中旬に1軍に昇格すれば、レギュラーシーズンで7回程度の先発機会がある。



現在、首位の埼玉とは2、5ゲーム差の3位のビクトリーズ。悲願の逆転優勝へのピースになれるか、ベネズエラ出身の右腕に注目が集まる。







宇都宮と鳥取でのオールスターを終えてチームに戻って来ると、そんな話をされたからめっちゃびっくりしましたわ。




ビクトリーズお得意の若干のメジャー経験のあるマイナーリーガー補強である。





そんな補強傾向のあるビクトリーズであるが、わりかしの当たり助っ人を引いてくるという世間の評価もある。



初年度の補強は、イタリアンリーガーのシェパード。2年間で39本塁打を放った実績は、創成期のビクトリーズとしては頼れるものだった。



3年目のシーズンにやってきたのは、先発のホワイト、リリーバーのホールドマン。そして長距離砲のアチェンホ。



ホワイトはビクトリーズに3年間所属して32勝。肘の故障でアメリカに帰国し、そのまま引退してはしまったが、今もいる右の先発陣に与えた影響は大きい。



ホールドマンは2年間で41ホールド、防御率2、66。その活躍が認められてメジャー復帰。今も元気に投げている。



主に中軸を担ったアチェンホは、初年度にビクトリーズの球団記録となる31本塁打をマーク。年俸6億円で京都パープルスに移籍してしまったが。


俺が伝授した、アチアチ、アチェンホ~!のホームランパフォーマンスは西日本リーグのファンにもお馴染みだ。



そして去年からいるのが、1塁手のマテルとセットアッパーのエンゲラ。



マテルはその名前の通り、しっかりボールをマテル男でして、去年の打率は2割6分ながら、フォアボールの数は豊田さんに次いでリーグ2番目に多かった。そして今年はさらに調子を上げつつある。




エンゲラも160キロを越えるファストボールを武器に豪快なピッチングが持ち味。


当初の制球難疑惑も何のその。日本に来てからの防御率は1点台に突入し、8回の男として君臨している。





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