第5話 卵とキッカ
「ふぅ…バタバタした日だったな、、」
ため息とともに外に目をやった。
ここに着いた時とは異なり、真っ赤になった太陽に照らされ雲海が赤い絨毯のような綺麗な景色が広がっていた。
「キレイだなぁ」
「・・・これからこの世界でやっていくしかない…か。。」
「…頑張れる…かな?」
・・・スタスタスタっ
…
「ただいまー」
「…おかえりー」
あれ、この声は…キッカちゃんかな?
中に入ると広いスペースにキッカがまったりしながらこっちを見て返答した。
「さっきはどうもです!」
「こちらからだよー」
「改めてこれからよろしくね!」
「私こそよろしくです!」
「…あれ、他の子は??」
「ターニャちゃんはまだ出歩いてて、ミネリアちゃんは部屋におるよー」
「そっか」
そう言いながらコトリもキッカが休んでいる横に座った。
「…」
「…どしたの?」
まだぎこちない空気の中、キッカの問いにコトリが口を開いた。
「…キッカちゃんはこの世界ってなんだと思う?」
「それにこの卵とかも…」
「うーん・・・」
神妙な顔つきになり、少し考えた後
「正直分からない。だから色々と混乱してるかな・・・」
「それに今は多分コトリちゃんと同じく、いきなり言われた事に従って動いている感じ」
「そっ・・・ですよね。。」
「うん」
「でも、そこまで深刻に考えてはいないかな!」
「渡された卵とかふろしきも、なんかプレゼント的な感じで受け取っているの!」
「なによりも別の惑星に来たみたいな景色や出来事がたくさんあるからさ!」
「それを楽しもうかなって思っているよん!!」
「えっ!!??」
「だからコトリちゃんもそんなに不安がらずに一緒に楽しもうよ!」
「あっ、、えぇ・・・」
「しかたない!私が一緒にいてあげるからさ!」
「あはは(笑)」
「うんうん!気楽に行こうよ!」
「はい!そうします!」
「あっそれと、これからは敬語もなしね!」
「そうします!あっ・・・そうする!」
「うん!OK!」
…
それからというもの、キッカと毎日の食事処に行く時や、図書室へ行く時、展望台に気分転換に行く時など何気ない会話をしながら一緒に行動するようになった。
そして今日も。
…
「おばちゃーん!今日もご飯もらいにきた〜」
「あら、キッカちゃんにコトリちゃん!」
「今日も仲良しだね〜」
「もう親友だからね〜!(笑)」
「まだ会って数日じゃない(笑)」
「あっそっか!(笑)・・・・・」
そんないつものやりとりを少し後ろから見ていたコトリがキッカの変化に気がついた。
(あれ、・・・キッカちゃん卵持っていない)
2日目まではふろしきをリュックのようにして背中に持ち歩いてた・・・はず?。
だけど、その卵がない。
そもそもふろしきですら持っていないように見える。
(先生達から大切にしてほしい、体と接触するように持ち歩いてほしいって言われていたはずだけど・・・)
「・・・」
「〜〜〜ほら、コトリ!」
「あっごめん!なに??」
「なにじゃなくて(笑)」
「コトリはなににするのって?」
「あっそだね(笑)」
「おばちゃん!私はいつもので〜」
「はいよ〜これね」
「ありがとうございます!」
「コトリどうしたんだー?なんかあった??」
「あっ・・・ううん、大丈夫!」
「ほ、ほらご飯もって展望台に行こう!」
「そだな!」
「じゃあ、おばちゃんまたくるね〜」
「は〜い、気をつけてね〜」
「じゃあ行こうか」
「うん!」
スタスタスタ.....
「・・・」
(たまたま今日持ってくるの忘れちゃったのかな。。?)
「あっあの!」
「・・・キッカちゃん卵は今日忘れちゃったの??」
「えっ・・・なんで急にそんなことを??」
「あっ、、いや先生達があれだけ言ってたものだから気になって・・・」
「・・・」
「ん〜忘れちゃっただけ!」
「あっだから取りに戻らなきゃだから、今日はご飯別々にしよう!」
タッタッ....
「あっキッカちゃん・・・」
いきなりそう言い残し家の方に向かってしまった。
「キッカちゃん・・・」
わかりやすく地雷を踏んでしまった感覚。
卵について聞いた時、いつもニコニコしていた表情が曇った。
「聞いてはいけないようなことだったのかな」
…
タッタッタッ....
コトリを置き去りにして家に戻り入った。
ガチャ.....
タッタッ....
「・・・?」
バタン!
「はぁはぁはぁ.....」
「はぁはぁ・・・」
スタスタスタ....
サラッ.....
広いスペースで読書をしていたミネリアには目もくれずに部屋に入ると、机の上に置いたままの卵に触れ見つめた。
「…」
「……私は、、、いいの・・・」
キッカが口にした「もういいの」これが意味することとは・・・
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お読みくださいましてありがとうございます!
いかがでしたでしょうか?
まだまだこれからも執筆していきますので、面白い!や気になった!などがありましたら、
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