その5 ゆるゆるとほぐしてゆくぞ(背中と腰もみ)

※シーン情報補足:その4の続き。六畳間の和室でテーブルを脇に寄せて、座布団二つ並べた即席の布団にあなたはうつ伏せで寝ている。



//環境音B オン 夏の午後。風鈴(鉄器)の音が断続的に聞こえる。だいぶ遠いが蝉の声、ときおり鳥の声が聞こえる。かすかにエアコンの音(要検討)。


<明菜はうつ伏せで寝ているあなたの左側で膝立ちになっている>


●位置:左 上 近距離

「うむ。腕は顔の前で組んでくれ」


「そう……よいよい」


「では——」


//SE 明菜はあなたのお尻をまたいで、両腿のわきに膝を着く


●位置:左 上 近距離→後 上 近距離

「上には乗らんようにするからな」


「忘れておった。そでをたすきでまとめて——っと」


//SE きゅっとたすきがけをして結ぶ。


「よし。まずは背中から行くぞ」


//SE 背中に両手を乗せる。


※シーン情報補足:以下背中もみ。基本肩もみと同じリズムで力を込めて(押して)、離して(緩めて)、を繰り返す。肩もみほど力まず、首もみと同じ程度の力の込め方。


「肩甲骨はわかるな。そこから内側へ——背骨との間へ——こう、親指でたどっていって……」


「肩甲骨と背骨の間らへんで……肩の筋肉の——真下……おぅ、ここだな」


「ううん、やはり背中も硬いのう……」


「わかるか? わしの親指が少し沈み込んでいっているであろ? ここで、まず——ひとつ……の、ここから下へ——ふたつ……の——みっつ……の」


「——よっつ……の——いつつ……の、っと。ふむ、こんな感じかの」


「よしっ。ではやっていくぞ」


「——ひとつ……の——ふたつ……の——みっつ……の——よっつ……の——いつつ……の、っと」


「今度は下から、ゆるゆるとほぐしてゆくぞ……」


「——ひとつ……の——ふたつ……の——みっつ……の——よっつ……の——いつつ……の、っと」


●位置:後 上 近距離→後 左 接近→後 右 耳元

「どうだ~。このあたりは、自分ではやりにくいからのう~」//少し間延びした声で


<背中をもむ手を一旦停める>


//SE 明菜が顔を近付けてくる。

//SE 体が密着して胸が当たっている。


●位置:後 右 耳元→後 接近→後 左 接近

「うむ。よいよい。そのまま力を抜いておれ……。動くでないぞ」


//SE 右に、左に少し顔を近付けて、再び体を起こす。


●位置:後 左 接近→後 上 近距離

「あと、二巡にじゅんやってやろう。上から……(ちょっともったい着ける)」


「——ひとつ……の——ふたつ……の——みっつ……の——よっつ……の——いつつ……の、っと」


「そしたら今度は下から……」


「——ひとつ……の——ふたつ……の——みっつ……の——よっつ……の——いつつ……の、っと……」


//SE 背中から指を離して体を起こす。


「……よーし、よしよし」


「背中はこんなものかの? ん、どうかしたか?(視線に気づいて首をかしげる)」


「……(あなたの視線をたどって胸元に行き着く)」


「あっ!(気づく) ああ、さっきか……別に大したことではなかろう。多少触れ合ったくらい」


「……大した持ち物でもないしな」//ぼそっと少しすねた感じで。


//少し間を置いて。


「……うん? そっ、そうか?」//驚きと照れが入り混じった感じ。


「ふ、ふへっへっ……慰めであっても、その、なんだか照れるな……」//照れてれ。


「わしの体は十六の頃から時を止めてしまったのでな……」//しみじみと。


「人の、大人の、女子おなごにはいくらか、いや、ほんの少しばかり……憧れがあるのだ」//少したどたどしい感じで。


//少し間を置いて。


「ん、それはさておき——だ」


//SE ポンとあなたの腰を叩く。


「次は腰だな」


//SE 明菜が膝立ちのまま少し後ろへ下がる。


●位置:後 上 近距離

「腰は……ちょっと脇腹に手が触れるぞ」


//SE 明菜があなたの腰に両手の親指を置く。


「両手の親指で背骨の左右……腰骨の上あたり……ここを、上下に押していくぞ」


「んっと(力を込めて)——せい……(緩める)」


「んっと(力を込めて)——せい……(緩める)」


「んっと(力を込めて)——せい……(緩める)」


「んっと(力を込めて)——せい……(緩める)」


「ここも、かなりこっているな……」


「ときどき、腰を左右に回したり、肩を前後に回すなどして……簡単な体操をするとよいぞ。ああ、首も右に、左に、と回して、な」


「少なくとも、なにもせぬよりはずっとよい」


「……(苦笑して)つい忘れがちになるがな」


「んっと(力を込めて)——せい……(緩める)」


「んっと(力を込めて)——せい……(緩める)」


「うむ~ん。これだと船頭せんどうのようで味気ないの……」


「この、リズムであるならば——っと……」//節を付けて。


「……ふん、ふん、ふーん♪」//鼻唄っぽくなってくる。


※シーン情報補足:以下、明菜が「鬼さま手まり歌(付録参照)」を口ずさみながらマッサージを続ける。


「……てん、てん、てんそらつき、かすめー」


「手まりは、手に手に、飛んでいく……」


「てん、てん、の影、浮舟うきふね引いてー」


「鬼さま、こちらにおいでなさいな~」


「ちょいと、こちらにおいでなさいな~」


「てん、てん、天の日、雲のかかりー」


「手まりを、手に手に、お渡しよ~」


「てん、てん、跳ねて、葉陰はかげを伝いー」


「鬼さん、こちらにおいでなさいな~」


「ちょいとこちらにおいでなさいな~」


「……(わずかな息遣い)」


//少し間を置く。


●位置:後 上 近距離→後 上 遠距離

「よし、よしよし。どうだ? 結構楽になったであろ?」


//SE 明菜が立ち上がって、たすきをほどく。


「はははっ(微笑ましそうに笑って)。構わぬ構わぬ、しばらくそうしておれ……」


「ふむん……」//少し考えて。


//SE 足音が遠ざかる。

//SE 部屋の隅から座布団を持ってくる音。


●位置:後 上 遠距離→左 上 遠距離

「よっと」


//SE 座布団を寝ているあなたの隣に置く(上半身)。


「もひとつ」


//SE 座布団を寝ているあなた隣に置く(下半身)。


「驚かせたか。まあ、大目に見ておけ」


//SE 二つの座布団を引っ張ってくっつける。


//SE 明菜が座布団に膝を着く。


//SE ゆっくりと並べた座布団の上に横になる。


●位置:左 上 遠距離→左 近距離

「ふう~。おおおう、なかなか心地良いな~」


「いや、おぬしを見ていたらな。わしも横になりたくなったのだ」


「よいであろ。こうやって二人してだらけるのも~」//少し甘えた感じの声。


「おぬしも仰向けになった方が楽だぞ」


●位置:左 近距離→右 近距離

「うむ。よいよい……」


「ん~ん~♪(気持ちよさそう)」


「ん?(あなたの視線に気づく) ああ、やはり角が気になるか」


「ふむん(相槌っぽく)」


SE:明菜がちょっと動いて、天井を見る。


●位置:右 近距離(マイクと同じ方向を向く)

「まあ、由緒ゆいしょというほどのものではないだが……」


「話してみるか」


●位置:右 近距離(マイクの方を向く)

「期待はするなよ」//笑いを交えて。



//環境音B オフ




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