その3:ひと息つくがよい(冷たい麦茶と水ようかん)

※シーン情報補足:あなたは六畳間ほどの和室へ通され、勧められた座布団に座ってくつろいでいる。和室には物が少なく、中央に背の低い四角いテーブルがあるほかは正面の床の間に花瓶(リンドウが生けてある)があるくらい。出入り口は三ヶ所で、貴方から見て右手に廊下へ続くふすま、左手に縁側へ続く障子戸、背後に隣の部屋に続くふすまがある。


//環境音B オン 夏の午後。風鈴(鉄器)の音が断続的に聞こえる。だいぶ遠いが蝉の声、ときおり鳥の声が聞こえる。かすかにエアコンの音(要検討)。


//SE ふすま越しに足音が響く。

//SE ふすまが開けられる。


●位置:前 左寄り 遠距離

「楽にしていてよいのだぞ」//あなたの方は見ていない


<左手の上に乗せたお盆を気にしつつ、ふすまを閉める>


//SE 氷の入った麦茶のグラスが立てる音。足音。

//SE ふすまを引いて、閉じる。足音。

//SE 足音が近づいてくる。


<明菜があなたの方を見る>


●位置:前 遠距離→前 中距離(テーブルを挟んで向かい側、膝枕よりは離れているもののそこそこ近い間合い)

「言うまでもなかったか。よいよい、おぬしは客なのだからな」


//SE 明菜がお盆をテーブルに置いて、あなたの向かい側の座布団に座る。


「麦茶と」


//SE お盆からグラスを取ってあなたの前に置く。


「水ようかんだ」


//SE お盆からお皿を取ってあなたの前に置く。


「……」//軽く息をつく。


//SE 明菜が自分の分のグラスとお皿をお盆からテーブルに置く。


「茶菓子のたぐいはいまそれしかなくてな。甘い物が好かんのならわしがいただくから安心せよ。ふふっ(冗談めかして少し笑う)」


//SE グラスを持ち上げる。


「(麦茶を一口、二口と飲む。あんまり喉は鳴らさない)」


//SE グラスを傾ける音。


「ふう~~」//しみじみと息を吐く。


//SE グラスをテーブルに置く。


「ははっ(照れたように笑って)、落ち着くな。——んん?(聞き返すように)」


「ああ、冷蔵庫くらいあるぞ。外とのつながりを完全に絶っているわけではないのでな」


「だが、こんな風に誰かを招き入れることは……はて(考える)、いつぶりだったかのう」


「いまの社務所ができてから……は、誰かをここに招いたことは……ない、か……?」//考えながら話す。


「いやいや、さすがにそれは……」//苦笑交じりに。


「むーん……」//考え込む。


//少し間を置いて次のセリフ。


「おっ」


//SE 明菜がはっとしてあなたの方を見る。


「あっ……と、すまぬ。まあ、ともかくだ(少し誤魔化すように)。こうして人と落ち着いて話すのがひさしぶりでな。わしも少しばかり浮き足立っているのだよ」


「そうは見えぬか?」


//SE グラスを持ち上げる。


「(麦茶を静かに一口飲む)」


//SE グラスを傾ける音。


//SE グラスを置く。


「まあ、よい。さあて——」


//SE 明菜が黒文字くろもじ(竹で作った楊枝ようじ)を手に取って、水ようかんを切り分ける。

//SE 切り分けた水ようかんを口に運ぶ。


「はむ(水ようかんを美味しそう/嬉しそうに食べる)」


「(飲み込んで)わしは和菓子が好きでなー」


「夏の暑い日。涼しくした部屋で、誰に気兼きがねすることもなく、冷たい麦茶と冷たい甘味かんみを楽しむ……」


「ふへっへっ(楽しそう/嬉しそう)。いつもは一人だが誰かと楽しむのも悪くないの」


//SE 黒文字で水ようかんを刺し、口に運ぶ。


「はむっ(水ようかん二口目を味わう)」


「……(ひとしきり味わって飲み込む)。それに、おぬしにはなぜだか気を遣わずにいられるから楽だな」


「……ほめ言葉だぞ?」


「ふへっへっ。ああ、素直に受け取っておくがよい」



//環境音B FO




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