その2 冷たくて気持ちよかろう(濡れ手ぬぐいで顔拭き)

//環境音A オン 森の中の神社。夏。蝉の声(アブラゼミ、ときどきツクツクホーシ)と葉ずれ、時折鳥の声(ヤマガラ、エナガなど)が聞こえる。


//SE 明菜が両手を縁側の上に下ろす。


●位置:前 近距離

「んん?(いぶかるように)」


「ああ、言い間違えたのではないぞ」


「〝鬼さま〟だ。さっきも歌っていたであろ。……(くすくす笑う)」


「そう、そうだな。よいよい。鬼は人に恐れられてこそだ」//楽しそうに。


由緒ゆいしょを話してやってもよいが……」


//SE 明菜の右手がひたいに触れる。


●位置:前 近距離→前 上 少しだけ離れる

「おぬし、まだ暑そうだの。どーれ……」


//SE 明菜が自分の右側に置いてある湯涌ゆおけに手を伸ばす。

//SE ちゃぷちゃぷと水の音。湯涌の底に氷が当たる音。


●位置:前 上 少しだけ離れた位置

「おうおう、まだ冷たいぞ。わざわざ氷を入れておいた甲斐かいがあったな」


「おっと、そのまま。そのまま……」


//SE 手ぬぐいを水にひたす。ちゃぷちゃぷ、からころと氷水の音。


「……(小さく息遣い)」


//SE ざばーっと手ぬぐいが水面から上がり、ぽたぽたと水滴が水面にこぼれる(水滴多め)。


「……(小さく息遣い)」


//SE ぎゅっと手ぬぐいを絞る音(水量多め)。

//SE ぽたぽたと水滴が水面にこぼれる(水滴多め)。


「……(小さく息遣い)」


//SE ぎゅっと手ぬぐいを絞る音(水量少なめ)。

//SE ぽたぽたと水滴が水面にこぼれる(水滴少なめ)。


「……っと」


//SE 手についた雫を湯涌の上で払う。ぴっぴっとわずかな水音。


●位置:前 上 少しだけ離れた位置→前 近距離

「待たせたな。さあて——」


//SE 手ぬぐいを両手に持った明菜が少しかがむ。


●位置:前 近距離→そのまま少しだけ接近。

「まずは……」


//SE:手ぬぐいを広げて顔の上に置く(SE無も検討)。


「……(息遣い)」


●位置:前 近距離

「どうだ、冷たくて気持ちよかろう?」


//セリフの間をたっぷりとる


「しかし、ただの立ちくらみでよかったの」


「もしあの時わしが居合わせなければ、暑気あたりになっていたかもしれんぞ」


//セリフの間をたっぷりとる


「このやしろは外とは時の流れが少々違うからな……(しみじみと)」


「それに、結界も張ってある」


「うちわ一つで暑さをしのげるのはそうしたわけでもあるが……」


//セリフの間をたっぷりとる


「ふう……」


「今年はひどく暑くないかの?」


「ここ数年、夏は暑くなるいっぽうだがいつにも増して、日射しが強い」


「雨も少ないしの……」


//セリフの間をたっぷりとる


●位置:前 近距離→少しだけ接近

「さて、そろそろ良いかの。……っと」


//SE:明菜が手ぬぐいを顔から取る(SE無も検討)。


●位置:前 近距離→前 上 少しだけ離れる

「……この姿勢は(苦笑して)なかなかやりずらいの」


「おっと、よいよい、そのままでよい。もてなすと言ったであろ」


//SE ちゃぷんと手ぬぐいが湯涌の氷水にひたる。

//SE ちゃぷちゃぷと水の音。湯涌の底に氷が当たる音(氷は前より少なく)。


「……うむ、氷もだいぶ溶けてしまったな」


//SE 湯涌から手ぬぐいを引き上げる。ざばーっと手ぬぐいが水面から上がり、ぽたぽたと水滴が水面にこぼれる(水滴多め)。


「……(小さく息遣い)」


//SE ぎゅっと手ぬぐいを絞る音(水量多め)。

//SE ぽたぽたと水滴が水面にこぼれる(水滴多め)。


「……(小さく息遣い)」


//SE ぎゅっと手ぬぐいを絞る音(水量少なめ)。

//SE ぽたぽたと水滴が水面にこぼれる(水滴少なめ)。


「……(小さく息遣い)」


//SE ぎゅっと手ぬぐいを絞る音(ほぼ濡れた布の音)。

//SE ぽたぽたと水滴が水面にこぼれる(水滴ほんの少し)。


「……よしっ」


//SE 手についた雫を湯涌の上で払う。ぴっぴっとわずかな水音。


●位置:前 上 少しだけ離れた位置→前 近距離

「……(「うーん」と「むーん」の間くらい)」


//SE 手ぬぐいを右手に持った明菜が少しかがむ。


●位置:前 近距離

「いつぶりになるかのう……」


//SE すっすっと手ぬぐいで顔を拭く(ひたい)。


「こんな風に、誰かの世話をするのは……(楽しそう)」


「お、ちょっと目を閉じてくれるか」


//SE すっすっと手ぬぐいで顔を拭く(まぶた)。


「うむ、そうそう」


//SE 手ぬぐいで顔を拭く(右の頬)。


「案ずるな。わしに任せよ」


//SE すっすっと手ぬぐいで顔を拭く(左の頬)。


「お、くすぐったいか? んん、それとも心地良いか?」


//SE すっすっと手ぬぐいで顔を拭く(鼻筋)。


「そうか(満足そう)。うむ、よいよい……」


//SE すっすっと手ぬぐいで顔を拭く(口元)。


「……こんなところかの」


//SE 明菜が体を起こす。

//SE 手ぬぐいが水につかる音(氷の音ほぼ無し)


●位置:前 上 少しだけ離れた位置→前 近距離

「……どうだ? だいぶさっぱりしたであろう」


//少しセリフの間を空ける。


●位置:前 近距離

「では、茶にするかの。おぬしも喉が渇いたで——ん?」


<明菜があなたの視線に気づいて自分の頭の上を見るようにする>


「ああ……(視線を察して納得する)」


//SE 明菜が自分の頭に手を当てる。


「これのことか? いまさらだな……ふふっ(おかしそうに)」


「そう。ここ、陽炎かげろうもり鬼流きりゅう神社は鬼さまのやしろ……」


「ここにまつられているのは神は神でも鬼神きしん、すなわち鬼なのだ」


「……より正しく言うなれば、鬼と人との間の子だがな」//つぶやくように。


「そうだ。この角はまごうかたのない本物。わしの自前だ。ここまで話せばわかるであろう」


「そう、こんな、巫女の格好かっこうをしているがの、わしがこの社の主なのだよ」


//少し間を置いて。


「ふへっへっ。ま(神妙な雰囲気を切り替えるように)、いまはともかく一服しようではないか」



//環境音A FO




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