夜空の星たち
海湖水
星々の名前
「おはようございます」
「おはよう。それじゃあ、また明日も頼むよ」
星は夜空から帰ろうとしていた。
横には先輩の月がいる。先輩の月は、夜空の中でも特に役職が上だ。だが、それを鼻にかけることもなく、月は他の星に平等に接する。
「星が入空したのはつい最近だよね。どう?今のところはうまくいってる?」
「まあ、他の星さんに比べたら……。特に名前のある方々は大変ですよね」
「まあね……。たまに『あの星は燃えてるんじゃないの?』みたいな人いるけどさぁ……。宇宙空間で燃えるわけないじゃん。というか、私たちって太陽さんの光で光ってるわけだし」
月の発言に、星はうなずいた。一定の人間は私たちが自ら光っていると思っているが、そんなことはない。太陽さんが私たちを照らしてくれているのだ。そう考えると、太陽さんの仕事量は一般の星の比ではない。
「太陽さんは私たちの仕事終わりから本番ですからね……。しかも、勤務時間外でも星を照らしたりとか、することがいっぱいありますし」
「ほんとうに、頭が上がらないよね。私も仕事を始めるのは早い方だけど、太陽さんほど仕事はしてないしね」
「そういえば、月さんは太陽さんとも仕事をすることがありますよね。太陽さんってどんな方なんですか?」
「えっとね、なんか変な明るさがあるね。ああいう明るさがないと、あんなに長時間働けないんだろうな、ってかんじ」
それを聞いて、星はイメージどうりだと思った。太陽さんは明るいイメージが大きかったからだ。星は太陽さんとかかわりがあるわけではないものの、噂には流れてくる。
「それじゃあ、また明日」
「今日は一日ありがとうございました!!」
そういうと、星は月と別れた。
月は本当にいい先輩だ。もとが大きい星というわけでもないことも影響しているのだろうか、後輩の星たちのことを気にかけてくれたりしてくれて、星たちにも慕われている。
今、月と一緒に働けていることが星はとてもうれしかった。
「おはようございまーす」
「あっ、おはよう。今日もよろしくね~」
「よろしくお願いします!!」
今日も夜が始まった。各所では様々な星が夜空に上る準備をしており、太陽さんに照らされてキラキラと光り輝いていた。
星は、他の星と比べて少し暗いので、特に目立つようなものではない。
だが、星は今の配役を気に入っていた。一人で輝くような存在ではなく、いろいろな星と共に美しい輝きを生み出す。それが星の性分にあっていたからだ。
「星ちゃ~ん!!大変大変!!」
「あれ?どうしたんですか?」
いつも隣で光っている先輩が、大きな声を上げて駆け寄ってくる。星だけではなく、周りにいたいくつかの星もその方向に目を向けた。
「星ちゃんに名前が付いたのよ!!」
「えっ、本当ですか⁉」
「本当に⁉星、よかったね!!」
「あっ、月さん。お疲れ様です!!」
「まあ、別にお疲れするほどのことはしてないんだけどね」
星の心は飛び跳ねるようだった。星たちにとって、名前が付けられることは憧れの一つだ。名前が付けられてから星は一人前。それが星たちの中での考えだった。
幼いころからずっと想像していた自分の名前。
どんなものになってもそれをきっと愛していける。
星は先輩の方を見ると口を開いた。
「どんな名前ですか?」
夜空の星たち 海湖水 @1161222
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