◆サキュバス印のえっちなタトゥーシール
「淫紋シール?」
「正式商品名は“サキュバス監修の女の子がエッチな体になっちゃうタトゥーシール”だがな」
「へ~、コレが。確かに、エロ漫画とかで見る“淫紋”っぽい模様はしとるなぁ。で、ソレがどうしたんや?」
「いや、なに、10枚セットで購入したら1枚オマケがついたうえ、思ったより安かったんで、お前にも2、3枚分けてやろうかと思ってね」
「おぉ~、さすが
「ドラ息子言うな、少なくともお前さんよりは大学でも真面目に講義出てるぞ!」
「へいへい、いつもノートお世話になっとります」
「ったく……。で、いるのか、いらんのか?
「もちろん、いる! ……って言いたいトコロやけど、巨乳な彼女持ちのオマエさんと違って、ワイ、恋人もセフレもおらんからなぁ」
「ふっふっふっ、そんな貴方に耳寄りなお知らせ! このシール、確かに女の子の下腹部に貼れば、商品名通り軽度の発情状態の付与に加えて、感度3000倍──は大げさでも普段の3倍くらい感じやすくなるらしいんだが……実は裏技があるんだ」
「裏技?」
「おぅよ。女じゃなく男が貼ると、なんと女になれるらしいんだ!
“女の子 の エッチな体になっちゃうタトゥーシール”ってコトだな」
「…………え? マジ?」
「マジまじ。裏技って言っても、販売元の企業サイトではちゃんと紹介されてる“公式裏技”ってヤツなんだろうな」
「そらスゴい! ……もしかして、もう試したんか?」
「おぅ、1回だけな──へっへっへっ、いやぁ~、「にょたいのしんぴってすごい!」って気になったぞ。アレだな、「念願のTS手段を手に入れたぞ~!」って叫びたくなった」
「>『たのむ、ゆずってくれ』ピッ
『殺してでもうばいとる』 」
「ま、『そう、かんけいないね』という選択肢はないよな。
心配しなくても、さっき言った通り、2枚無料で分けてやるから」
「へへーッ、ありがたやありがたや(ペコペコ)」
「拝むな拝むな──そうそう、ひとつ注意点がある。この淫紋シール、対象が男であれ女であれ、貼ったヤツが剥がさないと効果が解除されないらしいから、気を付けてな」
* * *
「ヤッホー! おひさぁ♪」
「え、アンタ誰だ……って、もしかして!?」
「ハッハッハッ、ご名答! 『わ た し だ』」
「『お前だったのか、全然気付かなかったぞ』──いや、マジで。化けたなぁ」
「て言うても、服装を中性寄りにして、100円ショップのプチプラで化粧らしきもんをしてみただけやけどな」
「いやいや、割とイケてる。「クラスで1、2を争う」ほどじゃないけど、上中下に分けたら上位グループにはギリ入れるレベル」
「おぅ、お世辞でもありがとさん。実は連休前、例のシールもろた日の晩に試してみて、この体(でのひとりえっち)にハマってしもてな。それ以来、連休中もずーっと女体化したまま過ごしてたんや」
「ハマり過ぎだろ。オナニー中毒になって、(精神的に)戻れなくなっても知らないぞ?」
「キヒヒヒッ、さすがに、そこまでやないって。ま、貴重な体験やったけど、そろそろ落ち着いてきたし、今晩あたり元に戻るわ」
* * *
「よ、調子はどうだ……ってか、まだ淫紋シールの効果、解除してなかったのか」
「うん、ボチボチや──って言いたいトコロやけど、ごめん、やらかした」
「え、やらかしたって何を!?」
「あ~、実はな──例のシール使って女体化したあと、毎晩元気に“自家発電”に励んでたんやけど、2、3日したら少し気になることができてな」
「──そこはかとなく、嫌な予感がするが、何だ、言ってみろ」
「女体化したあと、さらに淫紋シールをもう一枚貼ったらどうなるか──って、ふと思いついてな」
「うわぁ、それはマズいだろう」
「生粋の女性陣と同じかは知らんけど、重ね貼りした時の体の感度は、確かに3倍、下手したら5、6倍って感じやったわ」
「で、いざ剥がそうとしたら剥がれなくなった──ってオチか?」
「うんにゃ、それは大丈夫。ちゃんと剥がせたんやけど……」
「けど?」
「というか、風呂入ってたら、お湯でふやけたシールが勝手に“剥がれた”んや。ソレだとワイの手で“剥がした”ことにはならんみたいでなぁ」
「あー、なるほろ、理解。とりあえず、タトゥーシールの製造販売元に連絡して、戻り方がないか聞いてみたら?」
「それが──“重ね貼り”も“入浴しての自然剥離”も、説明書と公式HPの両方で「やっちゃいけないこと」として注意喚起してますよね、って怒られた」
「OH……」
「今のところ、少なくとも正規の手段では、男に戻るのは難しいみたいやねん。ハァ~~……orz」
「(俺が渡したブツが原因だけど、ある意味自業自得だし、俺の責任じゃないよなぁ)ま、まぁ、元気出せよ。今日の昼飯くらいはオゴってやるから」
* * *
その後、結局、関西弁男改め関西弁娘は元の性別には戻れず、そのまま女性として生きていくことになった。
一時は落ち込んでいたものの、元々がTSクラスタの住人だったこともあって、半月もしたらメンタルも回復、むしろ積極的に女性としての暮らしを謳歌するようになったようだ。
なお、彼改め彼女に事の元凶となったシールを渡した親友の青年Aは、その後も友達付き合いは続けていたが、数ヵ月後、一緒に飲んで酔っ払ったトコロで、「実は女性としての初体験に興味津々」だった関西弁娘にハメられ(というか、“ハメて”しまい)、それが恋人にバレて修羅場に陥ったという。
青年が最終的に恋人か元親友か、どちらを選んだかは──想像にお任せしよう。
-おしまい-
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