◆婚活の日

 ──199X年、地球は核の焔に包まれた!


 ……わけではなかったが、それに等しい惨禍が人類を襲ったというのは、あながち間違いでもない。


 ABC兵器に関する条約を無視して、某国の研究機関が極秘裏に開発していたウィルス兵器「TS-88」が、売国奴の手によって外部に持ち出され……。

 しかも買い取り側に運ばれる途中でケースが破損し、危険な「TS-88」が大気中にバラ撒かれてしまったのだ!!


 このTS-88に人が感染すると、女性には何ら影響がないが、第二次性徴を迎えた男性は97%の確率で衰弱死し、運よく生き残っても生殖機能を喪う。


 そしてそれ以前の年齢の男性は体内のY染色体が破壊されX染色体に置き換えられる。さらに、成長するにつれて精巣や陰茎などの男性器が卵巣と陰核に変化し、胎内に子宮や膣孔なども形成されていく。

 つまり、遺伝子的にも身体的にも完全に女性になってしまうのだ。


 この事実が判明し、各国に周知された頃には時すでに遅く、人類の生存圏の90%近くにTS-88が蔓延していた。

 未感染の健常な年少の男子は、赤道直下の常夏の国に僅かに残るのみ。これはTS-88が35度以上の気温に長時間さらされると死滅するという性質によるものだ。


 しかしながら、先進国と称される国のほとんどは温帯から寒帯に位置している。つまりそれらの国では、近い将来、若い世代がすべて女性となることが確定してしまったのだ。


 これによって、世界はその有り方を大きく変えることとなった。

 世界各国では、若年人口のおよそ5%程度の特に優秀な女性のみが選出され、赤道直下の国へ送り込まれる。現地で成人男性と婚姻・性交し、妊娠が確認されると帰国して、子を出産するのが慣習となる。


 ちなみに、母胎内で男児がTS-88に感染しても症状が現れず、キャリアーとなる。ただし、キャリアーの場合、逆に第二次性徴を迎える頃に発症し、Y染色体の消失と身体の女性化を経験することになるのだ。


 この妊娠・出産を行う資格を持つ女性は「クイーン」と呼ばれ、非常に高い社会的ステータスを持つ。既定の人数(日本なら10人)出産するか、一定の年齢(日本だと36歳)になると、赤道の国へ移住し、婚姻した男性とともに暮らすことも認められる。


 なお、出産したひとり目の子は自分の子として育てられるが、第二子以降は国がいったん引き取り、希望する成人女性のもとに養子に出されることになる。


 それでは、クイーン以外の95%の女性(生来の♀も元♂だった♀も)のライフスタイルはどうなのかと言えば……単刀直入に言えば、女性同士の同性婚が認められているのだ。


 特に高校(いうまでもなく女子校である)の卒業式前後は、今後の人生のパートナーを見つけようと彼女たちが一斉に婚活に走るため、卒業パーティーなどはほとんど婚活の場と化していると言っても過言ではないのだ。


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※掌編というより背景設定ですね。

 タイトルとかは「復活の日」のパロですが、具体的に物語(ドラマ)を作ると、某氏の「男友達」世界みたいな鬱ゲー路線になりそうなので、筆力不足と断念しました。

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