◆ふたりはラブ☆イチャ
◇ふたりの門出
四月一日、エイプリールフールにかこつけて、幼馴染の江東蓮司(えとう・れんじ)が、俺をからおうとしてきた。
ま●スレとやら経由で手に入れた「性別詐称薬」なんて怪しげなアイテムを使って女に化け、「雪野レン」と名乗って俺に偽りの告白をしてきやがったのだ。
実は、何となくレンの正体に気づいてた(だって、こないだお嫁に行ったコイツのねーちゃんソックリだし)俺だが、素知らぬ顔でそのままOKして、有無を言わさずデートの約束までしてやったのだ。
で、問題のデート当日。スッぽかされるかと思ったんだが、変に律儀なコイツは、精一杯おめかしして待ち合わせ場所に現れた。
2つ上のねーちゃんが地元の市のイメージガールに選ばれたくらいの美人だけあって、コイツもオシャレしてると、すげぇ美人なのな。
しかも、元が俺の幼馴染だから、話が合う合う。
ついつい盛り上がって、そのまま夜まで一緒に過ごし、さらには俺の部屋で朝まで飲み明かす始末。
──ええ、まぁ、お察しの通り、ヤっちゃいましたとも。
まぁ、それだけなら苦笑いして済む話なんだが。
薬の有効時間である24時間が過ぎても、いっこうにレンから蓮司に戻らなかったんだな、コレが。
原因は──妊娠しているから。そう、一発(まぁ、正確には7回くらいヤった記憶があるけど)で、「大当たり」を引当てちまったんだ。
そこからは俺ん家と江東家の両家を巻き込んだ家族会議が行われて……。
六月頭の今日、こうして華燭の典を迎えることとあいなったワケだ。
「綺麗だぞ、蓮。惚れ直した」
「和人ぉ……えへへ♪(テレテレ)」
「何があっても、お前を離さない。きっと幸せにするから(キリッ)」
「あ、当り前だよ、バカ。ボクはキミのせいで男に戻れなくなったんだから。
一生大切にしてよね♪」
「ああ、勿論!」
──とは言え、俺だけの責任じゃないと思うぞ。あの夜、抜いて外に出そうとした俺の腰に両足を絡めて離さなかったのお前じゃん。
「え~、でも始める前に、ボク、「ちゃんと
ほほぅ、女としてのセックスの快感の虜になって、ゴムが切れたあとも「もっと、もっとォ! ゴムなしでいいから! レンの子宮、アナタの子種でいっぱいにしてェ♪」なんてせがんで来たのは誰だったかな?
「それで抜かずに3発連続でキメて、さらにお風呂の中でも2発、起きぬけに1発ヤっちゃうキミも、大概だと思うけど」
……よそう。まぁ、今となってはふたりが結ばれた、いい思い出(?)なんだし。
「う、うん、そうだね、ハハハ……」
ライスシャワーを浴びながら、そんなコトを言い争っている俺達に、式の参列者達は、「この新婚バカップルめ!」という生暖かい視線を送ってくる。
ふ、ふんっ、いーんだよ! バカップルと呼ばれようと、俺は三国一の嫁さんを手に入れたんだからな!!
「ちょ!? 恥ずかしい台詞禁……キャッ!」
俺は、我が愛しの新妻をお姫様抱っこの体勢で抱き上げると、挨拶もソコソコに新婚仕様のオープンカーに乗って、ハネムーンへと旅立つのだった!
「……って言っても、熱海で一泊二日だけどね。ボクら、まだ学生だし」
──最後にオトすなよッ!?
◇ふたりの愛・乱闘(あいらんど)
旦那様の名前は、北条和人(ほうじょう・かずと)。
奥様の名前は、江東あらため北条蓮(ほうじょう・れん)。
ふたりはごく普通に出会い、ごく普通にデートして、ごく普通に体を重ね、ごく普通(?)に出来ちゃった婚しました。
ただひとつ違っていたのは、奥様は──元・男だったのです!
というワケで、新婚旅行から帰って来て新居(つっても、俺の実家の離れだけど)に引っ越した俺達だが、生憎ふたりともまだ大学生やってるから、それ程日々の暮らしそのものに大きな変化があったワケでもない。
もともと結婚前──ってか、蓮が「蓮司」だった頃から下宿館やってるウチで暮らしてたから、「ひとつ屋根の下で同じ釜の飯を食う」って部分は、今更だし。
また、さすがにふた月足らずでは、俺のお袋と蓮の母親共同プロジェクト「蓮ちゃんを立派なお嫁さんにしちゃうぞ!」計画も完全とは言い難かったらしい。
礼儀作法とか立居振舞とか化粧とかの成人女性として知るべき一般教養の習得にもひと月費やしたから、三大家事のうち、掃除と洗濯はともかく、料理についてはお袋いわく「見習レベル」らしい。
で、現在も蓮はお袋に習って料理を修業中。朝晩の飯はこれまで通り、実家で食べてたんだな──昨日までは。
幸いにして、ようやってお袋から料理も仮免もらったとのことで、今朝の朝食から離れで蓮がひとりで作った手料理を戴くことになったんだ。
「どう……かなぁ?」
「うん、美味い! ありがとうな、蓮」
口に物入れたままキスするのもナンなので、左手を伸ばして卓袱台越しに嫁さんの頭を撫でる。
「エヘヘヘ~、かーずと、だいすき」
素直に俺にされるがままになって、目を細める蓮。
くそぅ、一時限目が出席重視の新山教授の講義でなければ、このまま押し倒して、本人も美味しく戴いちゃうものを……ヲノレ!!
「あ、褒めてくれるのは嬉しいけど、そろそろ時間がヤバいよ、和人」
いささかお門違いな教授への怨念に燃えていた俺だが、蓮に促されて、慌てて残りの料理も頬張る。
「御馳走様。マジで美味しかったぞ、蓮」
「はい、お粗末様。あ、お皿とかそのままでいいよ。ボクは今日は二時限目からだから、ちょっと家の中のことしてから、学校に行くつもりだし」
「そうか? うーん、お前と一緒に行けないのは、ちと残念だが……しょうがないか。すまんな、蓮もまだ大学あるのに、家事任せちまって」
「ううん、ぜんぜん平気だよ。もともと、こうなった以上は、ホントは学校は辞めようかと思ってたくらいだし」
専業主婦が学士号持っててもねぇ、と笑う蓮。
俺達の結婚が決まった時、大学卒業したら俺が就職して嫁さん、つまり蓮を養うということは、北条&江東両家の親も交えた話し合いで決まったことだ。
まぁ、蓮が「外で働くより、家で家事してる方がいい」と言うなら、俺としては異論はなかったしな。もっとも、専業主婦と言っても、実際はお袋がやってる下宿関連の仕事をゆくゆくは手伝うことになるんだろうけど。
「いやいや、別に学歴だけが学校のすべてじゃないだろ。それに、お前がいてくれる方が、俺だって大学生活に張り合いがあるしな」
無論それだけじゃないが、コレもまた確かに本音だ。
俺と蓮は学科は違うが同じ経済学部で、同じ講義を受ける機会も多いし、ブッちゃけ気真面目な蓮のノートに期待している部分も少なからずある。
「うん、そう言ってくれるなら、ボクも頑張るよ。あ、そろそろ時間、ホントにヤバいよ?」
おっと、本当だな。
パパッと身支度を整えて、ノートとテキスト類の入ったカバンを持ち、玄関を出る……前にUターン。
「何? 忘れ物?」
「ああ。大事なこと忘れてたぜ」
キョトンとした顔の蓮の肩に両手を置くと、ぐいっと引き寄せて、そのまま唇を奪う。
「──行ってきますのキスを忘れてた」
「……ばか♪」
ちくそー、頬を染めた様子がほんとにメンコイなぁ。こんな可愛い新妻を残して大学(せんち)へ赴かねばならんとは……。
ハッ! そうか、コレが「○○が可愛い過ぎて生きてるのがツラい」という感覚か!?
「馬鹿なこと言ってないで、早く行きなさい! ……その、帰って来たら、さーびす、してあげるから」
!!
「行ってきまーす! さぁ、今日も学業に励みまくるぞー!」
まぁ、無論、そんなことを言う俺の表情はだらしなく緩んでいるわけですがね、ええ。
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ばかっぷるがかきたかった。
いまははんせいしている。
さとうはいたら、よんだほうのまけ。
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