◆おやくそく
タチの悪いTS風邪にかかって女体化し、さらに普通なら風邪の完治とともに元の身体に戻るはずなのに、日頃の不摂生がたたったのか、そのままの身体で固定されてしまった。
そのままショックで自室に3日間引きこもってたんだけど、業を煮やした双葉姉貴に無理やり部屋から引っ張り出され、風呂に叩き込まれたあと、学園の女子制服(姉貴のお下がり)に着替えさせられてしまった。
そりゃ、ね。
退学するつもりじゃないなら、いずれはこの服を着て学園に通わなければならないってことは。
でも、まだ、その覚悟が──ほんの半月ほど前までは普通の男子高校生だったんだもん!
「やかましい! だいたい葉介(ようすけ)の自業自得でしょうが。TS風邪なんて、早めに病院行って薬飲んでりゃ、3日もすれば治って男に戻れるのに、アンタが無精して病院行かないから」
「だ、だって、あの時は丁度ネトゲのイベントがあって……」
「そんなモンにうつつを抜かした結果、徹夜続きで風邪が悪化、女性化した状態がずるずる長引いて、挙句に身体が♀状態に順応しちゃったんでしょうが!」
う゛っ……事実なんで言い返せないぃ。
「だーい丈夫、アタシも協力するわ。弟時代は放任してたけど、妹となったからには、ビシバシ教育して、どこに出しても恥ずかしくない可愛いJKに仕立て上げて、あ・げ・る♪」
「え、えっと、お手柔らかにおねがいシマス」
──風呂の中でのそんな会話のあと、いつの間に測ったのか、今のボクの身体にピッタリの下着(ブラ&ショーツ&キャミ)を着せられ、そのうえで可愛いと近隣では評判の我が校の女子制服を着せられてしまった。
「ぅぅ……足元がスースーするよぅ」
男の頃は、クラスメイトの女の子たちのスカートがヒラヒラするのは目の保養的な意味でうれしかったけど、まさかそれを自分が着るハメになるなんて。
「ふ、双葉
「それくらい普通よフツー。アンタも花も恥じらう女子高生なんだから、とっとと慣れなさい!」
あっさりそう言い切った姉貴だったけど、その後はボクを座らせて、髪を丁寧に梳かしたり、軽くお化粧したりと、色々みだしなみを整えてくれた。
「ふむ。ま、ざっとこんなモンかしらね」
そう言って、姉貴の部屋の姿見の前に連れて来られたんだけど……。
「…………えっ!?」
鏡の中には、丁越学園高等部の女子制服を着た、ごく普通──よりちょっと(もしかしてだいぶ?)可愛い女の子がいた。
TS風邪の影響で急激に伸びた黒髪は、ごく自然な感じのウェーブをした髪型に整えられ、白のカチューシャで飾られている。
我が校の女子制服(春秋用)のトップは、白いブラウスの上から赤を基調にした前開きボレロを羽織り、ウエスト部分をフェイクレザーのコルセットで締め付けるんだけど……。
たった10日間でアンダー70のDカップにまで立派(?)に育った胸の部分がコルセットのおかげで強調されて、数値以上の巨乳に見える(おまけにたゆんたゆんと揺れる)。
ボトムは白いフリルで裾を飾られた膝上20センチの赤いミニフレアスカート。足に履いた白いニーソックスとの間に絶妙な絶対領域を作り出している。
顔は──うん、まぁ、中の上レベル。ひいき目に見て80点くらい? 姉貴みたいな「100点オーバーの美少女」には到底及ばないけど、オカマっぽいとかそういう不自然さは全然なくて、“普通に可愛い”女の子に見える。
「う…そ……これが、今のボク?」
「うーん、ボクっ子もいいけど、この際、一人称も“ワタシ”に変えちゃいなさいよ、葉介……ううん、若葉ちゃん♪」
双葉姉にそんなことを薦められ、改名した女性名で優しく呼びかけられると、それが当たり前のことのように思えてくる。
「──これが、ワタシ?」
ちょこんと小首をかしげながら鏡を見返すワタシ。
(ヤバい。なんかすっごくゾクゾクする。ワタシってば結構イケてない!?)
「(ふ、堕ちたな)そうよ、これが今の──そしてこれからの貴女なの。でも、今の状態は、女の子としてのギアをローからせいぜいセカンドに入れたくらい。もっともっと磨けば光るわよぉ」
背後からピッタリくっついた双葉姉に耳元でそう囁かれると、本当にそう思えてくるから不思議。
「──もっと可愛くなれる?」
「ええ、もっちろん。なんたって、アタシの妹なんだから♪ おねぇちゃんも喜んで協力してあげる」
「うん……お願いします、双葉おねぇちゃん」
─めでたしめでたし─
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#このあと女子力を熱心に磨いた葉介改め若葉ちゃんは、学園を卒業する頃には、某デ〇マスの鷺●さんみたいな「一見地味だけど前髪あげてお洒落するとすごくかわいい」感じの美人さんに成長します
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