第3話 鼓笛隊の彼女たち
そこには、小学6年生の運動会での鼓笛隊の写真があり、なんと!同じ写真に、ミカちゃんと僕が写っていたのだ。
彼女は、ベルリラと呼ばれる鉄琴のような楽器で、僕は花形の小太鼓を演奏していた。
鼓笛隊はわずか20名ほどで、他の男子はリコーダー、女子はピアニカ隊であった。
演奏の中心となる鼓笛隊は、本番前の2週間、毎日放課後に鼓笛隊のみの練習会があった。だから、絶対に僕の視界の中に、彼女は居たはず。
恋は盲目、というのが正解なのか、僕は言い訳を考えていた。誰に対してなのか分からないが。
僕は、小学3年生で初めての失恋を体験した。
しかも、フラれた訳ではなく、引越しをしたと思い込んで、勝手に失恋していた。
そして、それからの4年間は、学年のマドンナ的存在のリカちゃんという子を好きになっていた。
でも、4年間同じクラスだったのに、一言くらいしか話したことはない。その彼女も、鼓笛隊の一員で、ベルリラを演奏していた。だから、きっと彼女にばかり目がいって、ミカちゃんに気づくことさえ出来なかった。視界に入っていたのにだ。
別人と脳が勝手に思い込んでいたに違いない。
きっと、そうだ。
僕は、虚しくなった。こんな言い訳を誰に話すのだろうか。話して、何になるのだろうか。
前を向こう!後ろは振り返ってもしょうがない!
そう思った途端、ミカちゃんへの恋心が4年ぶりに湧き上がってきた。初恋の人への2度目の恋。
今度はちゃんとアタックしていこう!
沈みゆく夕陽に向かって、そう誓った。
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