第5話「寝起き」

「おはようございます。師匠」

「どうしました?」

「えっ。何でお互い服を着ていないのかって?」

「そんな、わかっているくせに。私の口から言わせないでくださいよ」

「何があったかって?」

「昨日あんなに可愛がってくれたじゃないですか」

「師匠。……まさか」

「……もしかして、昨日の事覚えていないんですか?」

「……そんな。ひどいです。師匠」

「私の事ずっと愛してくれるって言ったのに」

「約束してくれたじゃないですか。責任は取るって。だから私は、抵抗しないで全部受け入れたんです。痛いのも我慢しました。師匠を信じて。師匠にこの身を委ねたのに」

「……師匠。本当に全く覚えていないんですか?」

「お酒のせいなんかにしないでください。慣れないお酒を進めた私も悪かったですけど、師匠は酔っていないです。普通にしていました」

「ぐすっ」

「本当にひどいです。何も覚えていないなんて。覚えていないふりをしてくれた方がまだいいです」

「師匠。どうしても思い出せないのですか?」

「わかりました。師匠。そんなに思い出せないと言うのなら、昨日の出来事を再現してあげます」

「まずはキスしてください。昨日師匠からしてくれたみたいに」

「さあ、どうぞ」

「何をためらうことがあるんですか。もう昨日散々したじゃないですか」

「師匠。この世の終わりみたいな顔をしないで、覚悟を決めてください」

「さあ!」

「……………」

「……………ふふ」

「嘘ですよ」

「はい。嘘です。昨日は私と師匠の間に何かあったわけではありません」

「昨日の師匠は二杯目を飲んだあたりでもうフラフラになっていましたよ。聞いてはいましたけどびっくりするくらいお酒弱かったです」

「酔っ払った師匠をベッドまで連れて行って、師匠がベッドに辿り着いたところで体勢を崩して二人でベッドの上に倒れ込みました」

「でもそれだけです。いつもみたいに胸を揉まれたりとかもしていないです」

「えっ。一度も揉んだ事がないって?そうでしたね」

「それで私は起きあがったのですが、あまりに師匠が目を覚まさなかったので、師匠の服を脱がせる事にしました」

「もちろん起きたらそこでやめるつもりだったんですよ。でも師匠があまりにも無抵抗で何だったら脱がそうとした時に脱がせやすい体勢になってくれたりしたのでもう脱がして欲しいのだと判断しました」

「そして最終的には師匠は裸になりました」

「この時期なのでシーツをかければ風邪は聞かないはずなのですが、師匠だけを裸にしていいのかとちょっと罪悪感に苛まれました。冷静になって考えるととんでもないことをしてしまったと思いまして」

「それなので私も裸になることにしたんです」

「そうすれば師匠だけが裸と言う事ではなくなるからそうすればいいと思ったんです。」

「えっ。意味がわからない。……実は私もです。師匠を運んでいる内にちょっとアルコールにやられたのかもしれないですね。お酒は二十歳になっても飲まない事にします」

「はい。それじゃあ服を着てください。裸のままは恥ずかしいですよね」

「あっ。私は大丈夫ですよ」

「それよりも、私は師匠が寝ている間にマジマジと見させてもらいました。なので見てしまったのでお詫びに師匠も私の事を好きなだけ見ていていいですよ。リクエストがあればポーズも取りますから」

「……えへへ。いざ見られるとなると恥ずかしいですね」

「はい。服を着ます。さすがにそろそろ寒くなってきました」

「ご飯作って来ますから。その間にシャワーでも浴び得ていてください」

「酔った次の日は味噌汁がいいと聞きますので、すぐに準備します」

「あっ。そうだ師匠。一つ聞きたかったのですけど」

「朝御飯を作る時、裸エプロンだと嬉しいですか?」


 師匠 27歳。

 弟子 18歳。

 二人のとある日常の一コマ

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