第3話「海」
複数のカメラのシャッターの音
「はい」低い声
複数のカメラのシャッターの音
「いえ、棋士に夏休みなんてありません。勉強するのみです」低い声
複数のカメラのシャッターの音
「夏にさらなる研究を重ねて秋からの対局を万全の状態で臨みたいと思います。低い声」
複数のカメラのシャッターの音
「はい。頑張ります。ありがとうございました」低い声
*
「ししょー。海ですよ。海」
「えっ。棋士に夏休みがないなんて嘘に決まっているじゃないですか」
「はい。メリハリが大事なのです。勉強する時にしっかりと勉強して休む時はしっかりと休む。そして遊ぶ時はしっかりと遊ぶんです」
「そうですよ。師匠もしっかりと遊びましょう」
「でも名人って凄いですよね。こんなプライベートビーチ保有しているなんて。しかもそれを貸してくれるんですからいろんな意味で器が大きい人ですよね」
「プライベートビーチじゃなければこんな水着きれませんでしたし。後で改めてお礼を言わないといけないですね」
「どうですか。師匠。似合いますか?」
「あれ、師匠?」
「師匠!なんで私の方を見てくれないんですか?」
「えっ。なんでそんな水着を着てるのかって?変な水着ではないですよ。れっきとしたビキニって名前があります」
「なんでビキニを選んだかって?」
「……私がこれを着たいからです」
「……すみません。白状します。これを来て師匠に似合っているよって言って欲しかったんです。友人から水着の面積が少なければ少ないほど男の人は喜ぶって聞いて、師匠に喜んでもらいたいし褒めてもらいたかったんです」
「でも師匠がそんなにこっちを見てくれないとは思わなかったです」
「えっ。この格好は下着姿に見えるからですか?」
「そんな理由で見てくれなかったのですか?」
「だって、私の下着姿くらい何度も見ているじゃないですか。今更何を言っているんですか」
「最近は見てないって。最後に見たのそんな昔でもないような気がしますが」
「だからちゃんと見てください。私だってプライベートビーチだからいいですけど他に男の人がいたら着れなかったんです。これを着る機会は中々ないんですから今しっかり見てください。そして似合っているよって褒めてください」
「変な心配しすぎです。師匠は大丈夫です。逆に見たかったのなら言ってくれれば水着姿でも下着姿でも満足するまでお見せしますよ」
「えへへ。からかいすぎちゃいました」
「でも好きなだけ見ていいですよって言うのは嘘じゃないですよ」
「いいから見てください。ここでちゃんと見てもらわないと家に戻ってから水着姿でいます。普段の生活も家事する時も研究の時もずっとです」
「やっと見てくれましたね。さあ、感想をどうぞ」
「!?」
「ごめんなさい。あんなに言ってくださいって言ったのに」
「いざ言われると、やっぱり照れてしまいますね」
「ありがとうございます。師匠。頑張って着たかいがありました」
「あの、師匠。失礼を承知でお願いなんですけど」
「もう一度。似合っているって言ってもらってもいいでしょうか」
師匠 27歳。
弟子 18歳。
二人のとある日常の一コマ
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