第?話

 なんだか勢いで出て行ってしまいましたけど、軽率だったような気もしますね。

でも、あの分からず屋がいけないんです。あれだけ私が言っているのに、どうして否定ばかりするのでしょうか。

大体、アプローチをかけてきたのはそちらでしょう?私は応えてあげたのに、あの態度はありえないですね。

それにあのセリフ、本当に私を想っているのとは、どうも違うように感じられました。

他の者への影響がどうとか、世界がどうとか。そんなの、どうだっていいでしょう?

本当に私を想っているのなら、周りがどんな環境であろうと関係ないはず。

なのに、あの口ぶりでは私以外の方が大切だと考えているようにしか思えません。

というより下手すると、私があまりに危険な存在だから、自らを犠牲にして私をどこかに閉じ込めようとしている節すらありますね。

あ、私達だけの他に何もない静かな場所って、そういうことでしたか。

なるほど、それなら合点がいきます。アプローチをかけてきたのも、それが目的ですね。

許せません。私は受け入れてあげようと思っていたのに、そんな私の気持ちを弄ぶなんて。

私はずっと前から貴方を想っていたのに。それを、裏切るなんて。

もう耐えられません。本当に、世界を滅ぼしてやりましょうか。

貴方が守ろうとしたもの全てが無くなってしまえば、貴方は私だけを想わざるを得なくなる。

あ、この作戦は悪くないですね。流石は私です。

善は急げです。早速実行しましょう。


でも、もし、全部私の勘違いだとしたら?

貴方が本当に、私を一番に想っているのだとしたら?

貴方は優しいですから、きっと世界のことも想っているのでしょう。

私を一番に想っているとしても、他を切り捨てるようなことは、貴方には出来ないのでしょう。

私としては、他なんて存在しなくても構いませんけど、貴方はそうではないのでしょう。

正直、貴方の考え方は理解出来ませんが、私はそれを尊重しようと思います。

世界を滅ぼしてしまえば、もう取り返しがつきませんから。

それが原因で、貴方が良くない方に変わってしまうのは、私は見たくありません。


でも実際の貴方が、どう思っているのか私には分かりません。

いずれにせよ、貴方はきっと私がいなくなって、今頃慌てふためきながら私を探していることでしょう。

だから、私は待ち続けることにします。私を見つけてくれるまで。私を探し出すのは、きっと大変でしょう。

でも、私はここにいます。貴方が私を見つけてくれた時、私はもう一度だけ貴方の言葉を聞きましょう。

その時に、私達は共にいるべきか、判断を下しましょう。


あ、でも、もし本当にいつまで経っても迎えにこなかったら、どうしましょうか?私、馬鹿みたいですね。

うーん、その時は・・・

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