第?話

 自分が、間違っていたのだろうか。

あれは、自分の元から去ってしまった。

自分は少しでも早く、少しでも長く、あれと共にありたかっただけなのに。

自分の説得の仕方に問題があったのだろうか。

自分達だけの世界で、共に過ごしたいというのが、嫌だったのだろうか。

自分達だけの世界で、ずっと過ごしたいというのが、束縛しているようで気に入らなかったのだろうか。


それとも自分は、最初から、からかわれていただけなのだろうか。あれなら、そうだとしても不思議は無い。

それでも自分の、あれへの想いは、何にも劣っていない。これは確実なのだ。

だがあれは、もう帰っては来ない。それでも、期待してしまう。ひょっこりと自分の傍に現れてくれると。


 ありもしないことを考えるより、もっと建設的な行動を取るべきなのだろう。

自分は、争いを好まない。何かが争う姿を、見たくない。何かが失われるのを、見たくない。

今まで自分が、何かを見るという行動を取っていたのは、あれがいたからだ。

だが、あれはもういない。ならば、もう何かを見る必要は無い。

自分は、自分だけの世界で、何も見ずに済むように過ごそう。

その世界をつくるには、準備が必要だ。


まずは、世界をつくるための材料が必要だ。これを運び出そう。

それから、材料を整理して組み立てよう。

さらに、この世界を守ってくれる者達を用意しよう。

これで、この世界は安泰だ。




でも、なんだかさびしい。

自分と同じ立場で、共にいてくれる存在がほしい。

この世界をつくって、ようやく理解できた。やはり自分には、あれが必要だ。


それに気付き行動に移すには、少し遅すぎたのかもしれない。

それでも、これからは前を見据えることにしよう。あれを、見つめるために。

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