第1話
僕らは山に向かっていた。これは、僕の提案による行動だ。皆で一緒に思い出をつくろうって話からこうなった。
カズは、お互いのお小遣いでゲームを買って交換しようだとか言ってたけど、女子じゃあるまいし、それこそ違うだろって思った。
やすぴーやたけろうを誘って四人で海へ行こうって案もあった。今までたけろうと遊ぶ時は大抵、たけろうのお兄さんもいたから今回は僕らだけで、って思ったんだけど都合がつかなかったみたいだ。でも海へ行ってたとしても、ただ泳ぐだけのつもりだったのなら、僕らは市民プールには時々行っていたし、あまり心に残らなかったかも。
やすぴーも今は大変らしくて、でも卒業までにはきっと時間をつくるから、皆で何かしようと言ってくれた。
じゃあその時まで思い出づくりはおあずけだ、って言うとカズは駄々をこね出した。
とりあえず僕ら二人だけでも、何かやっておきたいって。時々、カズは変わってる。
どうせなら、思い切り記憶に残るようなことをしようと決めていた。今、僕らが行こうとしている山は「原生自然環境保護地帯」っていって、国がそこの生態系を守るために、人の立ち入りを一切禁じてるとのことだ。
そこまで徹底してるってことは、誰も見たことのないレアな昆虫や動物が数多くいてもおかしくない。
一目、そんな生き物たちを一緒に見に行きたいって言ったら、カズは凄く喜んでた。カズ、虫は苦手だって言ってた気がするけど。
でも勝手に山に入ったらやばくないか、って心配されたけど、多分大丈夫だ。
虫取りとか森林破壊をしに来ているわけじゃないし、それにもしバレても、僕らはまだ子供だ。知りませんでしたごめんなさいで許してくれると思う。
そう言ったらカズはひきつった顔で、お前、時々悪いやつだよなって。カズにだけは言われたくない。
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