地底と海底に新天地を

爆裂五郎

プロローグ

 あの頃は、良かったよなあ。

がっこー帰りの公園でさ、水飲み場で服脱いで体洗って、ダンボールでつぎはぎなボロい秘密基地にみんな集まって、こっそり持ってきたゲームで通信対戦したり、給食の残りを食べたりさ。もう俺たちって、そんなの考えられないじゃん。

みんな来年高校受験だろ?うちの親うるさくってさ。セイドー行けってよ。そうそう、去年できた私立の。

どうもコネがあるみたいでさ。寮暮らしになるけど学費全額免除で、エスカレーター式だから大学受験もしなくていいって。

でも入試の結果があんまり酷いと弾かれるらしくてさ。コネなら試験も免除にしろよって思うんだけど。そろそろ勉強しなくちゃなあ。


なあ、俺たちって来年でもうバラバラ?そりゃ連絡ぐらいするけどさ。たしか、やすぴーって就職すんだろ?

あいつも大変だよな、お父さん死んじまって。叔父さんの工場で働くかもって。

よく生活指導のゴリ瓦と面談してるみたいだけど、色々気にかけてもらってるみたいだぜ。

あのゴリラも中学のときに両親が事故死してたらしくてさ、驚いたよ。きっと自分と重なってほっとけないんだろうな。

不謹慎だけど、ゴリ瓦のこと見直したよ。・・・ちゃんと鬼瓦先生って呼ぶべきかな。

肩書きが中卒だと今後厳しいから、通信制の高校通いながら働くか、鬼瓦先生の紹介で介護行ってそっちで経験積むかとか。叔父さんとこもずっと働くには、かなり経営が厳しいらしいからって。

それでか、将来はケアマネ?を目指したいとか言ってたよ。十年以上働いて、難しいテスト受けてやっと取れる資格らしい。

あいつ、凄いよな。俺たちの中で一番バカだったのにさ。すげー色々考えてんだなって。


なんかさ、もしかして既に、もうバラバラ?みんな、どこか遠いひとみたいに見えちまうよ。

俺は親の言いつけで別に行きたくもない高校に進学するけどさ、お前は医者になるって言ってたろ?

確かにお前頭いいけどさ、そんな甘くないって絶対。

だから俺と同じとこ行っていっしょの寮で暮らそうぜー。ひとりじゃ寂しくってさ。いやマジで。

実際問題、このままみんな離ればなれって嫌だろ?同窓会やればいいって、いやそれはなんか違うだろ。

もっとこう、俺たちにとって心に残る何かをしない?大人になっても忘れない、そんな何かをさ。


ガラじゃないなって?うるせえよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る