底辺採集職の俺、ダンジョンブレイク工業はじめました! ~残念ながら本ダンジョンはすでに攻略済みです。勇者様、今さら来られても遅いのでどうかお引き取りを!~
第74話 我ら、正義の企業なり!(ギトス視点)
第74話 我ら、正義の企業なり!(ギトス視点)
何かがおかしい!
アーヴェスト達の装備がまるごと一瞬で消え去るなどとは!?
まさかそれをやったのはあのダンジョンブレイカーだというのか!?
「やはりだ。お前達は所詮この程度でしかない」
「ええそうねダンジョンブレイカー。彼等は勇者などと宣っているけれど、ただ力があるだけの横暴者でしかないのよ」
「フンッ、その程度の力で威張るなどとは片腹痛いわ」
「ならば粛清いたしましょう。我等が主の御心のままに」
くっ、好き勝手言ってくれる……!
だが今の僕達にはもう成す術がない。
力を与えてくれる装備もなく、奴らに抵抗する技量もない。
それだけ奴らは強いんだ。
あの余裕はまるで魔物と対峙する師匠のお姿のようだよ……!
「調子に乗って! その名は僕らが付けた名のはずだ!」
「そうよ? だから使う事にしたの。あなた達が勝手に広めてくれたから宣伝も不要だし、その方が名付け親になったあなた達にとって屈辱的でしょう?」
「ぐっ!?」
「だからダンジョンブレイカーもこう言っているわ。〝安心しろ、お前達が名付けた事も大々的に喧伝してやる〟とね」
なっ!? なんて事を……!
それじゃあまるで僕らワイスレットの勇者達が看過しているみたいじゃないか!
そんな事をすればこの街のギルドが大変な目に遭うぞ!?
奴は本当にギルドを敵に回すつもりなのか……!?
「だから安心するがよい。貴様らは生かして帰してやろう。我等の宣伝のためにな」
「そう、そして我が主の名を声高々と世界へ広めるのです。ついにダンジョンブレイカーが世界を救うために立ち上がったのだ、と」
「世界を救うためだとぉ……!?」
なに世迷い事を言っているこいつらは!?
僕らが奴らを宣伝だと!? ふざけるなっ!
どうして僕らがそんな事を――
「お前達は伝えねばならない」
「――ッ!?」
「我等という存在が現れた事を。そして如何な存在かを」
「な、なぜそんな……」
「そうしなければ、お前達勇者とギルドはこのまま何する事も敵わず完全消滅するからだ」
「「「ッ!!?」」」
ば、バカな!?
勇者が、ギルドが消滅だと!?
そんな事あり得るはずがない!
ギルドは世界最強の団体だ。
たとえワイスレットを潰そうが、ここはしょせん全体の1%にも満たない小地。
そこをどうしようと我々の優位は揺るがない!
なのになぜこいつらは自信満々にこう言える!?
「ふふっ、彼等はやっぱり勘違いしているわね」
「うむ、そのようだ。ならば知らしめる必要があろうのぉ?」
「ですわね。これはもはやこのワイスレットに留まらぬ話だという事を」
なん、だと……!?
「しからば刮目せよぉ! 我等が力に戦慄せよぉ!」
「ダンジョンブレイカーの下へと集いし者が、我等だけではないと知るがいい!」
「あなた方の行いの愚かさを噛み締めて!」
まさか、奴らは一筋縄ではない!?
ならこいつらは一体……!?
「そして知るが良い。我等が成す偉業を前には自分達がいかに無力であるかと」
僕達は一体、何を
「「「それを成すのが我ら正義の企業!!! ダンジョンブレイク工業!!!!!」」」
ダ、ダンジョンブレイク工業!?
企業、だとぉ……!?
なんなんだ企業とは!?
ギルドの悪事を裁く!?
こいつら何を言って――
「私の名はブレイクナイト! ダンジョンブレイカーを守る一の剣!」
「ワシの名はブレイクザムライ! 世にはびこる邪を断つ剛剣士なり」
「我が名はブレイクソーサラー。主の御心に従いし魔の眷属」
「「「そして我等、親衛役員! すべてはダンジョンブレイカーと、ギルドや勇者に苦しめられし人々のために!」」」
あ、ありえない……。
奴らは本気でギルドや勇者とやり合う気なのか?
世界と戦い、滅ぼす気だとでもいうのか!?
すべての頂点に立つべき僕らを消し去って……!?
「……これはまだお前達への宣戦布告にすぎない。ゆえに何一つ漏らさず伝えるがいい。お前達の存在価値がまだ残っているその内にな」
「なに……!?」
「いずれダンジョンはすべて我等ダンジョンブレイク工業が攻略・破壊する。お前達勇者は無価値と化すのだ」
「なっ……」
すべてのダンジョンを、だと!?
そんな事をすれば僕達勇者はどうなる!?
「力で抑え付ける事も諦めるがいい。すぐに誰しもがお前達と同等以上の力を得られるようになる」
「そ、そんなバカな事があってたまるか!」
「フッ、ならばそう粋がっていればよい。この話が現実になった時に後悔するのは貴様らなのらから」
ウッ、なんだ、奴め武器を振り上げて!?
……足元に振り下ろしたが、何も起きない?
「それではごきげんよう、愚かな勇者様がた。我々はここらでおいとまさせて頂きますので」
「なにッ!? ま、待てぇ!」
「なれば追いかけてみるがよい。ふははは!」
しかも奴ら、いきなり足元に消えた!?
まるで魔王の死骸の中に飛び込むようだったが!?
そこで僕は咄嗟に魔王の死骸を駆け昇って追いかけてみる。
だが跡にはもう誰も残っていなかった。
あるのは魔王の死骸にパックリと開けられた穴と吹き出す青い血。
その血を吸う床は何事もなかったかのように残っている。
跡形もなく消えてしまった。
奴らめ、一体どこに行ってしまったのだ……ぐッ!
おのれダンジョンブレイカァァァ!
おのれダンジョンブレイク工業ォォォ!
いつか絶対にお前達を討ち滅ぼしてやるから覚悟しておけよぉ……!
そう強がるままに地団駄を踏んだ途端、魔王の死骸の肉片が砕け飛ぶ。
……どうやら力が一瞬戻ったようだ。
理由はよくわからないが、戻る兆候が出始めたのかもしれないな。
だったらなおさら奴らを自由になどさせておくものか!
「僕はお前達を絶対に逃がさんぞ、ダンジョンブレイカーどもおおおおおお!!!!!」
今回は僕らの負けだが次はそうはいかない。
次会った時こそ、お前達の最後だと思えええッ!!!
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