第23話 《座標移動》を使ってみた ①
"魔剣士"を選択してから三日ほどが経過した。使ってみた感想だけど、この職業めっちゃ良いね。
多分、職業特典の効果だと思うんだけど、なんかいつもより魔力が練りやすい上に身体が軽くなったような気がする。
そのためか、回避時にもかなり余裕が生まれ初めた。とは言っても、すぐにギアを上げられてボコボコにされたんだけどね。…そして、その度に頬を染めた姉二人の腕の中で目を覚ますまでがお決まりになっていた。
そんな感じで、さらに時が進むこと一ヶ月。
ついに、ついに到達したのだ。《演算》がレベル7に!!長かった…本当に長かった。これでやっと《座標移動》の行使の最低条件を満たせた。
ちなみにまだ《回復魔術》がレベル4だけど、これはあくまで一人で旅する際の保険のようなもの。
なので使いこなせるようになるまでは、サリエルさんの看視の下で安全を考慮して行使する必要がある。
そうしてやって来たのは、いつもの結界が張られた広場。そこにサリエルさんが虚空から焼却処分される予定だったのだろう大量の紙を取り出すと、今度は《大地魔術》で
あれ?ちょっと遠過ぎない?
距離が遠ければ遠い程、より高度な演算を要求される。しかも、まだスキルの全容がわかっていないのに大丈夫なのだろうか?
少々嫌な予感を覚えながらも、少々紙に何が書いてあるのか気になったので読んでみる。
『……。』
書いてあるものをザックリ読んでみたが、全体の九割ほどが文字化けしていて、よくわからなかった。《言語識字》があるはずなのにだ。…この文字はスキルの適応外…なのか?
ギリギリ文字化けしてない文字と配置から推測して辛うじて理解できたのは、これが地上の管理に関する資料であることだけ。
世界の情報なんて最重要機密もんだろうしね。多分、秘密保持の魔術でも掛けられているのだろう。
僕が黙々と資料に目を通してる間に、
「それじゃあ、手始めにこの紙であの土人形を切ってみて頂戴。」
はい、嫌な予感的中しましたー。うん、ある程度は予想してたよ?でもね、見た感じ
手始めでやる距離では無いと思うのだが。それに紙で人形まとを切るってこと?どうやって?
『紙なんかで切れるの?』
「ウィノア様の推測が正しければ、紙で切ることが出来るわよ。通常の転移と違って《座標移動》は物質の中でも無理矢理割り込ませられる。その性質を利用すれば分断出来るってことよ。」
そんなことも出来るのか!?ん…待てよ?《座標移動》って使用者自身の転移も可能だったよね?これ地面や壁、物質の中とかに移動してしまったらどうなるのだろうか?
『ちょっと気になったのですが、これボク自身が物質の中に転移しちゃったらどうなるのでしょうか?』
「んーそれは考えない方が無難かな。まあ【状態】に"部位欠損"が表示される場合があるとだけ言っておくわ。」
怖っ!!ということはあの手紙の「軽く身体の一部がサヨナラする」という一文はこのことだったのか!!抑えられた表現なのになんだか鳥肌が立ってきたんだけど。そして、それを踏まえての《治癒魔術》と…。
なんでこんな凶悪なスキルを僕に預けたんだよぉぉ!!!
内心で叫ぶも、やらないと始まらないので、とりあえず言われるがままに紙を一枚手に取って集中する。そして、スキルを発動しようとしたのだが…。
『ゔぅぅァァーーッ!!!』
「だ、大丈夫!?」
サリエルさんの発する安否確認の声に答えようにも、頭が…脳がはち切れそうな頭痛に見舞われていてそれどころではない。
今までの《演算》のレベリング時も大概だったが、これは痛みの次元が違う。
本当、こういう時に限って、どうして《痛覚鈍化》が効かないんだよな。外傷以外やスキルの代償にも作用する鈍化系スキルとかがあれば良いのにな…。
◇◇◇
ふぅー、やっと
多分、五分ぐらい悶え苦しんでたと思う。たかが五分程度の頭痛と思った奴、後で冥界に御招待な?
「大丈夫?無理はしなくても良いんだよ?」
『い、いえ、大丈夫です。これぐらい耐えられなきゃ恥ずかしいですからね。』
「そう?でもあんまり無理はしないでね。」
『わかってます。』
すぅーはぁーよし!!!
大きく深呼吸して再度挑戦する。
『ゔぅぉぉぉ!!!』
再び耐え難い頭痛に見舞われるが、全力で堪えて集中する。狙いは百メートル先の
『……。』
そして、手から紙の感触が消えたことだけは理解出来たが、それがボクの意識の限界だった。
◆◆◆
※主人公が喋る時の1人称は「ボク」、それ以外は「僕」の認識でお願いします。
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