第20話 サリエルと雑談 ④

 僕の中の何かが崩壊したような気がした。


 だってねー。僕の中じゃひとつのスキルに対して効果は一つが常識なんだよ?どの作品でも流石にこれは無かったぞ!!


「(言いたいことはわかるよ。私だってこのことを知った時も同じ反応をしたもの。応用次第では複数の効果をもたらすとかならわかるけど、流石にこれは初耳ね。)」


 神様を除けばこの世界で最も長く生きているであろうサリエルさんですら聞いたことがないとはイレギュラーにも程があるだろ。


「(それも神力を介さずに邪人に効果を発揮するスキルなんて世界初じゃないかしら?)」


 ちゃっかり世界初をいただきましたー。ありがとうございます。


 じゃなくて神力?なにそれ?読んで字の如く神の力というかことなのかな?そういえば僕のステータスにもあったな。3しかなかったけど。


『(あのー。その神力って何ですか?)』

「(ん?あー神力ね。神力というのはね———。)」


 説明を聞いてみたのだがちょっと専門用語が多く、所々理解出来なかった。


 とりあえず僕が理解出来た限りをまとめるとこんな感じだ。



①神力とはその名の通り神の力であり、この力を利用することにより、神と同等の魔術を行使できること。


②属性は神属性であり邪属性と対になること。光属性と闇属性の関係と同じ。


③神力は神剣などの神器を扱う際に重要となる力であること。


④種族柄で神力を持っているのは天使族と悪魔族そして神竜族の三種族のみであること。


⑤その三種族以外の種族は主に【職業】を最上位の"神級"まで高めることで神力を得ることができること。


⑥そして《神の使徒》か《聖女》の【称号】を持つこと。ただし、この二つの【称号】は人族の男女にそれぞれ一つずつしか持つことを認められていない。



 うーん、神力の獲得条件が厳しいなんてレベルじゃないな。唯一、努力でなんとかなるのが【職業】だけど神級クラスまで上げるとか、どれだけの研鑽が必要になるのやら…。


 ただここでちょっと気になったことがある。


『(その…さっきチラッと出てきた神竜族って?)』

「(ん?新竜族ね。えーと、混沌の女神様の手によって創造された五体の竜の始祖で、それぞれ"炎"、"水"、"氷"、"地"、"風"を司っているわ。でも、神の手で創造されたと言っても私達とは決定的に違うところがあるのだけど、何だと思う?)」


 突然、問われた問いに僕は少しだけ考え込む。


 ……そういえば、残滓の説明の時にもなんで天使族と悪魔族と一緒に神竜族も入れなかったんだろ?ということは残滓に関係することなのか?それとも身体の構造が二種族とは異なる…とか?いや、もしかして———。


「(属性がそれぞれ決まってるから…ですか?)」

「(残念、それは関係ないんだなー。)」

『(ん、正解は?)』

「("神の残滓"を体内に宿す量が私たちと異なることよ。)」


 じゃあ、初めに考えた推測が正解だったのか。


『(どうして?)』

「(簡潔に言うなら創造主の階級の違いね。女神様やウィノア様は最高神なのに対し、混沌の女神様は上位神なのよ。)」


 あーうん、なんとなく予想は出来た。


 要は、格の違う神様が創造したことにより違いが出たと。


 神様の階級がどのぐらいの力量差を表しているのか知らないが、あの時、神竜族を入れなかったのは天使族と悪魔族に比べて保有量が遥かに少なかったからなのかな?んー流石にそれは考え過ぎかな。


「(あとはヘレンちゃんの想像力に任せるわ。この先の説明を口にすれば私が混沌の女神様に怒られちゃうからね。)」


 そう言ってかなり微妙な所で説明を切り上げる。


 その時、僕は最後の一言をなんとなく察した。神様のお膝元である天界でこの先の説明を発することがどういう意味かを…。



 ◇◇◇



『ふぅー。』


 長い説明がひと段落つき、僕は椅子から立ち上がり、身体を伸ばす。天使族の肉体と言えど、ずっと座り続けるのは疲れる。


「(あ、そうだ、ヘレンちゃん。今からお風呂入る?)」

『(え?…お風呂とかあるんですか?入浴は不要なんじゃ?)』


 えーと、確か…新陳なんちゃら…が不要だったんだっけ?


「(あるわよ。贅沢の一環という一面もあるけど、外部からの汚れもあるからね。それでどう?)」


 ここ二日間頭の中はまだ前世の習慣が残っているせいでちょっと物足りなかったから非常にありがたい。ここはお言葉に甘えさせてもらうとしよう。


『(じゃあ入らせていただきます。)』

「(フフッ、素直ね。大浴場はすぐそこだから私についてきて。)」


 サリエルさんは微笑を浮かべると椅子から立ち上がり、付いて来るように言う。


 その言葉に従い僕はサリエルさんの後を追いながら大浴場に向かうのだった。



 ◆◆◆


【ユニークスキル】《真眼》

①発言の真偽判別が可能。(要は嘘看破みたいなもん。)

②スキルを発動状態で《鑑定》を行えば邪人を鑑定出来る。(これが今回出てきた隠し機能。)



【注意】

この主人公は思春期が来る前に転生した設定ですので下心とかは一切ありませんのでご注意下さい。



※新陳なんちゃら...は「新陳代謝」のことです。これは中3で習う範囲ですが、主人公は中3(14歳)の夏に転生してるので、ギリギリ知らない設定です。



・()書きは《念話》や《思念伝達》での会話を表しています。サリエルが舌足らずで喋れない主人公に配慮しての行為です。

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