第7話 いざ、サリエルの場へ!!

 僕はついさっき転生したばかりなのになんで知ってるの?あらかじめ両親が報告し……いや、声には出してなかったけど、反応を見るにそれは無いと見て取れる。


 だとすると一体何だ?もしかして、僕の転生に関わっているのか?


 僕が脳内で状況を考察している頃、両親とカルミナさんは何やら無言で見つめ合っている。


 何してるんだろう?


 疑問に思いながら様子を伺っていると突然、カルミナさんの口が開く。


「リディ、レイ、悪いけど少しだけヘレンを借りるわ。」

「「えっ!?」」


 一瞬、カルミナさんが何を言ったのか理解出来なかった。それは姉ニ人も同じのようだ。


「ち、ちょっと!!どう言うこと?」

「お母様、何を話してたの?」


 えーと。二人とも嬉しいけど、過剰に反応しすぎじゃない?特にリディアとか、やけに強く当たってるし…。


 もしかしてこの二人って重度の"妹好き"なんじゃ?


 そんな姉二人の不満の声に応えたのは、さっきから無言を貫いていた父だった。


「リディ、レイ、すまんが説明はあとからする。今は許してくれ。」

「何それ、おかしくない?」

「なんで今じゃないの?」


 姉二人は毒を吐くように文句を父にぶつけている。今の父はまるで妻の尻に敷かれるようなダメ男のように見える。どうやら見た目に反して案外押され弱かったようだ。そんな父の劣勢を見兼ねたのか、母が手短に説明する。


 だがそれでも姉二人は納得してない様子。その表情を見た二人は苦笑いを浮かべながら姉二人のクレームを対処している。


 なんと言うか…僕を生み出して、かなり消耗してるのになんか可哀想に見えてきた。それに対して…。


 僕はチラッと右斜め後ろを確認する。そこにはこの状況を他人事のように見ているカルミナさんがいた。


 まあ他人事なのは間違いないけど、このよくわからん状況を治めるにはカルミナさんしかいない。


 そう判断した僕はなんとかするよう視線を送る。


「…はぁー。」


 彼女がその意図を正確に読み取ったかは不明だが「仕方ないですね」と言わんばかりの足取りで仲介する…と思いきや、何故か僕の隣に来る。


「これ以上、サリエル様を待たせる訳にはいかないので、もう連れていきますね。」


 その場違いな発言に全員の視線が一気にカルミナさんに向く。両親とレイラーの三人は驚きの表情だったが、リディアだけは眉間にシワを寄せて、怒りの表情を示しており、更にはとても少女のものとは思えないような威圧を放っていた。


 カルミナさんの隣にいる僕はその威圧をもろに受けてしまい、恐怖で身体が震えてしまう。


 しかし、当のカルミナさんはそんな威圧などもろともせず、リディアが口を開く前に素早く僕の肩に手を置くと地面に魔術式のようなものが現れる。


「あ、ちょっとま———。」


 リディアが何かを言いかけたが、その時には既に周囲の風景が変わっていた。


『……。』


 今、目の前で起きたことが信じらず、呆然としているとカルミナさんの声が掛かる。


「それではここにお掛け下さい。」


 よくわからないが、とりあえず指定された席に腰掛ける。するとカルミナさんは颯爽とどこかへ消えてしまった。


 一人部屋に残された僕は先程の現象を冷静に脳内で処理していると、突然扉が開いた。


 なんの前触れも無く扉が開き、思わずビクッと身体が反応してしまう。せめてノックぐらいはして欲しかったと愚痴りつつも扉に目を向けると入って来たのは見た目からして十八歳ぐらいの青髪の美少女だった。


 頭の天辺には大きな白水色のリボンが結ばれており、その姿はまるで貴族令嬢を模した人形のようだ。扉から向かいの席に普通に歩くだけなのに、一切の音がない上、一つ一つの動作がとても上品に見える。


 そして、向かいの席に腰掛けて少し見つめると突然頭の中に少女の声が響く。


「(初めまして、私は始原の天使サリエル。よろしくね、転生者さん?)」



 ◆◆◆


主人公(ヘレン)は思春期が来る前に転生したことにより、"妹好き"のカタカナ版の言葉を知りません。(そもそも、うちの作品そんな言葉は使わん。)



姉2人→リディアとレイラー

2人→セザールとイヴァンです。



「リディとレイ」はサリエル派の天使として長い間(数千年)共に過ごしてきて、定着した呼び名(愛称)です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る